お久しぶりの松浪先生のお言葉です。前回を忘れてしまった!と言う方は、カテゴリー「松浪先生のお言葉」をどうぞ。
松浪先生が倒れ、母と源造に助けを求め、取り乱すおりん。
母にしっかりしな!と叱られる。
(医者)「心身のはなはだしき疲労による
発熱と昏睡、まずは絶対安静、頭部を冷やし
体躯を温め、時至りて目覚めればただちに白湯を与え
水分を補い、のちに消化の良く滋養にとんだ
食べ物を少しずつ与えること。おわかりかな?」
(源造) あのー 熱はいつ頃下がりやすか?
(医者) 今申し上げたとうり、極度の疲労による
心身衰弱からの発熱であるからして
疲労回復のあかつきには、ただちに解熱とあいなるわけだが
診察の結果、心の臓もいささか弱っているようで
もしこれが、パタリと止まる事でもあれば
これは一大事。
(おりん)やんだ!そんなのやんだ!(絶叫する)
(源造) 大丈夫だ、そんな事にはなりはしないから。
(おりん)神様、先生をお救い下さい。どうぞお側に召したりしませんように!
先生をお取り上げになっては嫌です!
他には何もお願いしません。どうか神様
先生をお助け下さい。お願いします!お願いします!
母が代わりに先生を看るから、といってもその声を聴かないおりん。
真夜中、先生を寝ずに看病するおりん。
(り)先生!先生!先生、目を覚ましたんですか!!
先生、目を覚まして!目を覚まさないと死んでしまう!
と、半狂乱で先生を揺り動かすおりんを、母の八重が頬を打つ。
(母)これくらいのことで、それほどのぼせ上って
なじょする!母ちゃん、お前をそげな みっともない女に
育てた覚えはないぞ。しっかりしないか!
そんなに心配しなくても、先生は良くなっから・・
神様がちゃんと守って下さるから。大丈夫だ、おりん。
静かに頷くおりん。
朝になる
(り)なして?なして私、ここさいてはいけないの?
先生がハッキリ目が覚めるまで、私ここにいる!
(母)私が看るから、お前は心配しないで学校さ帰りな。
学校へ帰って、舎監の先生に話しな。そしたら看病の人を
寄こしてくれるから。
(り)なして私が、ここさ いてはいけないの?
(母)いさしてやりたいけどなえ、こういう事には
節度ってもんがあるんだ。お前がこれ以上
ここさいては、その節度が切れちまう。
学校で勉強するのがお前の務めだ。
早く帰りな、
でも・・
帰りな!
夕方、目を覚ましている先生
学校の授業が身に入らないおりん
おりんは、節子に置手紙をする。
「母に逢いに行ってきます、明日の朝帰りますから
心配しないでください、おりん。」
長いので続きます。
母の八重の言う「節度」は、まだ少女のおりんには理解が出来ない、世間の事でしょうか。まだ若い娘が、若い男の、しかも自分の教師をその自宅で看病するという事は、世間体に外聞に関わるのです。
先生が死んでしまう!と半狂乱になって 取り乱すおりんを、ピシャリと諭す母の八重は大人です。