死神の精度

2009年05月10日 | 読書
「伊坂幸太郎が面白いと」聞いており、
今年の新人と話したときにもその名前があがったので、
駅の本屋でお迎え待ちの短い時間に、
次に読む本がほしかったので、衝動的に購入。

死神が主人公の短編が6本おさめられていた。
先ず、各編の題名がシリーズ化されていて面白い。
・死神の精度・・・42ページ
・死神と藤田・・・44ページ
・吹雪に死神・・・58ページ
・恋愛で死神・・・56ページ
・旅路を死神・・・78ページ
・死神対老女・・・58ページ

何という偶然か、解説を書いていたのが沼野光義!
「照柿」で初対面。どんな人が知らなかったが、
今回は「照柿」で知ったばかり。
ロシア文学者と注があることで、なるほどと思った。

【ふだん推理小説をあまり読まない私が、---決して嫌いなわけではないのだが、職業柄、「純文学」と呼ばれるジャンルのものをたくさん読まなければならないので、なかなか手が回らないのだ・・・、伊坂幸太郎という際立った才能を「発見」したのは、たまたま「魔王」を読んだ時のことだった。・<中略>・・いささか間の抜けた遅ればせながらの発見だったには違いない。】

そうか、高村薫評にもドストエフスキー云々とあった。
ロシア文学に通じる作品に関しては
この人に白羽の矢が立つのか。
ところで、幸太郎のどこがロシア文学に通じるのか、
それとも単に沼野にとって暇つぶしなのか・・・
などと思ってみた。

が、沼野の幸太郎評は、高いものがある。
【「魔王」を読んで直感的に思ったのは、この若い未知の才能には、ミステリーやエンターテインメントといったジャンルを超えて大きく展開する可能性が秘められているということだった。・・・<以下長いので省略。村上春樹以降とか、春樹チルドレンとか、その中でも幸太郎は秀でたものがあるので注目してゆきたい、といったことが書かれている>・・・】

ロシア文学との比較では、
「異化効果」という事を書いている。
トルストイが「馬の視点」から書いた
小説「ホルストメール」と同じような効果が、
死神の視点から書いたこのシリーズにもあるという。
~人間というものはなんてばかげたことをする生き物か
という驚きが読者に突きつけられる~という意味で、
共通しているらしい。

死神の特性の設定が面白い。
1、CDショップに入り浸り。
2、苗字が町や市の名前である。
3、受け答えが微妙にずれている。
4、素手で他人に触ろうとしない。

ところで、自分としては、6編の中で、
「死神の精度」と「旅路を死神」が特に面白かった。

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