重力ピエロ

2009年06月24日 | 読書
結構ぶあつい文庫本で、途中でくじけそうになったが、
復活して、終わり近くなって、う~ぅんなるほど!て感じになって、
結構面白かったかな、でも前評判ほどでもないか、
むしろ前に読んだグラスホッパーと「死神の・・・」のほうが、
一気に読めて楽しかった!!という自分結論に達した。

兄の泉水(いずみ)が語り手で、弟は春。
少し変わった名前の父親の違う兄弟ふたり。
並みの違い方ではなく、その違い方が特異なために、
二人は重い人生を歩み続けるが、
あくまでタッチは明るい、でも理屈っぽいというか、
遺伝学の専門的な話が謎解きにもやたら出てくるので、
やや閉口する、というより、現実離れした物語に思えてくる。

結局、正義感の異常に強い春は、犯罪者を成敗する。
反省のチャンスを与えたのだが、全く気配も無く、
やむを得ず確信を持って、成敗することになる。

兄は、すんなりでは無いが、昔から弟思いの兄そのままで、
弟の思いを思いやり、悪くないよと弟を擁護し続けてゆく。
自首すると言う弟をしなくていいよと説得する。
読者も大丈夫だしなくていいよという気持ちに、
させられてゆく。

泉水の父が、春の父とは対照的に偉い人だったのだ。
母は超美人で、春は母譲りの容貌を持ち、
行き交う女の子が皆振り返るほどのイケメン。
でも苦悩の日々を送り続ける春は女の子に興味は無い。

郷田順子という女の子の存在も面白い。
ストーカーまがいに春につきまとい、
整形美人となり、名前も改めて、春の前に現われるのだが、
鋭い感覚を持つ春は一目で見破ってしまう。
それでも整形美人ストーカーは、ひたすらに春を恋い慕う。

弟にとっては兄はお守り替りの存在。
兄がいれば勇気凛々、思い切ったこともあっさり出来る。
「僕とお兄ちゃんは最強なんだ。」と春は兄に言う。

父も兄に言う。
「春は俺の子だよ。俺の次男で、おまえの弟だ。
 俺達は最強の家族なんだ」
でもその父は癌で死んでゆく。
手術を試みるが、すでに転移が激しく、そのまま閉じられる。
美人でたくましい母も、早くに死んでいる。
一般的にはとても不幸な家族だが、
絆は強く結ばれている。だから、実は幸福な家族。
幸福な家族でありたいものだ、と思わされる一冊。
そのうちまた読み返そうかな。
そのときはもっと面白いと思えるかもしれない。

コメントを投稿