たまたま見たテレビの番組で日傘の特集をしていました。日傘は片手を塞ぐので興味なかったですが、あまりの進化に1本ぐらい持っていてもいいかもと思いました。
たまたまネット検索をしていたら現代俳句協会のお知らせに「第25回現代俳句協会年度作品賞は村田珠子「霧の海」に決定しました 」
珠子さん、おめでとうございます!
兼題:日
西日射すオレンジ色の生と死と 楊子
◎(あちゃこ)さりげなく日常の真実を描写。オレンジ色が効いています。
(選外)(道人)生も死もオレンジ色に収斂されてゆくとは、何と鮮やかな生死であろうか。好きな句材だがもう一語具象が欲しかった。
風に日傘とられ老舗の和菓子店 宙虫
「さようなら」夏の日記の最後には カンナ
○(餡子)そんな時代がありましたねえ。
○(幹夫)夏の終わりは恋の終わり。
九九にミス西間日増しに住みにくく 吾郎
○(餡子)無季ですが、西日の当たる部屋での勉強はさもありなんですね。
〇(珠子)大人だって時に、4×7?…こそっと7×4と検算してみたり。梅雨の明けた西日の部屋ではなおさらです。
〇(めたもん)西日でしょうか、酷くて集中できなくなり、九九さえミスしてしまうような西の間です。回文の意味のつながりが面白い。
◯ (アゼリア) 本当に今後の暑さが思いやられます。
〇(まきえっと)懐かしい。必死に覚えた日が蘇ってきました。
妻失す三食不如意暑き日ゞ 瞳人
〇(春生)男は情けないところがありますね。ますます暑いです。
〇(カンナ)リアリティを感じます。
烈日の人間ドッグ血の若し 藤三彩
〇(春生)この分だと問題のところはないようですね。
向日葵の午後国境に通り雨 幹夫
◯(吾郎)静かな雨が降りますことを
○(卯平)例えばアメリカとメキシコの国境か。国境は明確に線など引いてはいないだろう。だとすると「国境の通り雨」の方が鑑賞する側の想像を豊かにしないか
◎(仙翁)向日葵の午後、がいいですね。
◎ (アゼリア)雨降って地固まるーというわけにはいかないのでしょうか?
木洩れ日を流す清流青き山 仙翁
〇(珠子)ああ行ってみたい。「木洩れ日を流す清流」は魅力的ですが、下五が少し安易?
◯ (アゼリア) 清々しい、涼やかな句と思いました。
日の丸や汗と涙の金メダル 泉
〇(アネモネ)パリ五輪は何個いくでしょうか?期待しています!
選外(幹夫)いよいよパリ五輪には大いに期待!さて、日本の金メダル第1号は誰だろうか?
干天の慈雨の匂いや天赦日 あちゃこ
○(泉)「天赦日」(てんしゃにち)は初めて知りました。勉強になります。
日域は祖国に在らぬ白夜かな 卯平
千葉からの帰りはいつも西日の中 アダー女
○(泉)単純明快で良い俳句だと思います。
日めくりはあの日のままに薄暑光 餡子
〇(楊子)あの日としたことでそれぞれのあの日が思い起こされます。
○(卯平)薄暑光から揚句、一月一日の能登地震を思い出す。日めくりはまだ始まったばかり。三百六十五枚残った景が薄暑光で明確になった。「あの日のままや薄謝光」では古めかしいと詠み手は判断したのか。しかし上五「日めくりは」が効いている。だとすると中七で強いキレを入れてもけして古くないのではないか。「日めくりの」だと単なる説明だろう。
〇(仙翁)あの日は、何の日でしょうね。
◯(道人)ロマンを誘う言葉の組合せが佳い。「日めくり」「あの日」「薄暑光」
児を抱(いだ)く爪の根白し日向水 めたもん
〇(アネモネ)「日向水」に癒やし感があります。
○(宙虫)明るい光のなかの小さな景。少し緊張気味なんだろう。
白南風の日誌に綴る今日は晴れ まきえっと
○(あちゃこ)季語は動くかもしれません。さりげなさがいいですね。天気でなく、下五に描写するとしたら、何があるかと想像しています。
撤退のデパート跡地夏日かな あき子
○(藤三彩)現物を見てモノを買わないIT、通販の消費性向に激変した時代だな
○(卯平)段々そうなりつつある。デパートにしろスーパーにしろ跡地はそれなりに人の気持ちを揺るがす。下五「大西日」であれば特選候補。
暮れてなお紅を残せる百日紅 道人
◎(幹夫)「100日間ピンクの花を咲かせる」のが名の由来、実際には一度咲いた先から再度芽が出てきて花をつけるため咲き続けているように見える百日紅だ。百日紅の特性が素朴に詠まれて共感です。
夏の日に帽子が少しずれて居る ちせい
○(アダー女)帽子って日よけには良いけど意外と蒸れて熱い時がある。少し阿弥陀にかぶって空気の入れ換えしているのだろうか。
〇(仙翁)帽子がずれているのがいいですね。
○(宙虫)なんでもない景色が自然に詠まれているのがいい。
雲海にころげ出でたる朝日かな 春生
○(あちゃこ)似たような景を見た記憶が蘇ります。中七が上手い。
〇(めたもん)中七「ころげ出でたる」の表現が新鮮。朝日の元気、エネルギーが伝わります。
◯ (アゼリア)景の大きな、どこかユーモラスな句と思いました。
土用丑の日大鍋に湯が滾る 珠子
〇(アネモネ)面白い取り合わせだと思いました。
〇(あき子)調理場で、大鍋を前に奮闘してる料理人を想像しました。
ミニスーパーの遅き昼食日々草 アゼリア
○(泉)ミニスーパーは、いつも多忙ですね。
○(アダー女)この句を見てすぐ思い描いたのが中井貴一の「サラメシ」!小さな町の小さなスーパーマーケット。お昼時はお弁当買いに来る客もそれなりに多く忙しい時間帯だろう。その波が過ぎてやれやれ、店員さんたちの(一人かも知れない)遅い昼食。日々草という地味な花がなんかピッタリ!
テーマ:あつい
おいしいね聴けぬ夫の炎暑かな 瞳人
バイク便暑き公園の泥土かな ちせい
ファミレスの椅子で炎暑を詠んでいる 楊子
〇(瞳人)辛くちカレーがおともです
○(泉)何となくユーモラスな俳句だと思います。
○(アダー女)外は猛暑、逃げ込んだファミレスの椅子は心地よい涼しさ。その心地よい冷気の中で、炎暑の句をひねっている作者。早く詠まないと炎暑を忘れるほどの冷気に包まれることになったりする。
大辞林3000ページ曝書する 餡子
◎(珠子)角川の俳句大歳時記「夏」は900ページくらいですから、紙の質を考慮しても、大辞林の厚さはこの二倍以上はあるのでしょうか。大曝書ですね。「する」は気になりましたが。
◯(道人)徹底して大袈裟なところがいい。
液状化そのまま残る町褥暑 道人
◎(春生)能登半島地震はまだ復興には程遠いですね。見るだけでも痛々しい現状です。。
〇(アネモネ)「町溽暑う」に切実感があります。
○(宙虫)能登地震に限らず、熊本の地震でもいまだに液状化のあとが残っているところがある。溽暑がさらに液状化に拍車をかける。
炎天の戦地も見ているパリ五輪 泉
〇(あき子)戦地を意識しながら、平和の祭典が進行するこの世界。
○(幹夫)戦地ウクライナもガザ地区もフランスに近い。環境の格差は大きい。
○(アダー女)前回の東京五輪はコロナを畏れながらのものだった。そして今回のパリ五輪は世界のあちこちがきな臭い戦争の最中。世界中が穏やかに五輪を楽しめる時はいつ来るのだろうか?
遠距離の恋愛成就緋のダリア あき子
◎(アネモネ)恋愛成就おめでとうございます!
干からびて戦車ハッチに大蜥蜴 幹夫
〇(カンナ)「干からびて」に炎天の情景が広がります。
◎(あき子)戦争は人や街や自然を破壊して、多くの生きものを巻き込んでゆく。
空焚きの夏の真昼の中華鍋 卯平
○(餡子)これは熱い!暑い!あっつーい!!
◯(吾郎)もの尽くし、くれぐれも火にはご用心
〇(あき子)想像しただけで凄い熱量です。
三十二度無風午後二時マスクして カンナ
○(餡子)こういうことあります。息が苦しくなります。熱中症直前。
暑き日に熱き茶啜り独り言つ 仙翁
〇(瞳人)熱さで暑きを制す
〇(春生)これが健康の秘訣かもしれません。
〇(めたもん)暑い時には熱い飲み物の方がよいと、聞いたことがありますが。何を言ちているのでしょう。
生き字引の声が被さる蛙の夜 宙虫
◯(吾郎)そうかなぁとも思うが──わからないけど面白い
全裸問え粗忽夏こそエトランゼ 吾郎
◎(カンナ)漢字とカタカナで構成された回文が斬新な感じがします。
○(藤三彩)エトランゼは異邦人。よく思いついた回文だ
〇(仙翁)色っぽくていいですね。
○(宙虫)外国の方々があふれる。暑い日本で・・・・。エトランゼ、懐かしい響き。
◯(道人)モラルとは?エトランゼになり切って、夏は全裸が一番。回文句ならではの解放感がいい。
炎昼やポストの底にヤミ潜む めたもん
赤本の棚を占領梅雨明ける まきえっと
○(餡子)大学受験生にとってはお馴染みの過去問集。私の頃は未だありませんでした。(どんだけ昔!!!)本屋にはずらっと赤本棚がありますね。受験生の皆さん、頑張って下さい。
○(卯平)赤本は懐かしい。各大学の過去問題集だった。私の本棚からはもうすっかり消えてはいるが、詠み手は今もって大切にしているのか。それとも浪人生だろうか。梅雨が明けたらいよいよだと言う気持ちが伝わらないでもない。僭越ながら「赤本の本棚占むる梅雨の明け」でも句意は通じるか。「占領」がここでは生きているかどうか。浮いているのではと思うが、如何であろうか。
(選外)(アダー女)大学入試問題集の赤い表紙本が本棚にずらり。今作者の家に受験生がいるのか、ご自分の昔の赤本が捨てられずにあるのか?梅雨明ける時期、もういらないのか未だ使う浪人生がいるのか、いかようにも想像できる。
配達夫の喉鳴らし飲む梅ジュース アダー女
〇(瞳人)うまい、うまい
〇(カンナ)情景が浮かびます。
沸かさずも体温ほどに夜半の夏 藤三彩
○(泉)本当に夜も暑いですね。
片陰の路地を折れれば日の刃 珠子
〇(楊子)この感覚わかります。曲ったところは陰が無い。
◎(吾郎)暑っ!!!! 一刀両断的日差し、お見事
○(幹夫)猛暑を「日の刃」とは上手い。
○(あちゃこ)実感です。まさに日の刃。対比が効いています。
◎(アダー女)片陰の路地を曲がった瞬間、刀のように鋭い太陽の眩しさにスパッと切られたような衝撃が!「日の刀」の措辞が絶妙でドキッとする鋭さが上手い。
〇(あき子)片陰から出た先の危険な暑さは、まさに「日の刃」。
〇(めたもん)下五「日の刃」が片陰を折れた後の日差しの鋭さを端的に伝えます。
〇(まきえっと)「来たな」っていう感じですね。
防弾チョッキ纏い巡回玉の汗 アゼリア
◎(泉)トランプ前大統領は奇跡的に助かりましたが、警護の人々は大変です。
野良猫も逃げ出す古都の溽暑なる 春生
○(藤三彩)祇園祭はオーバーツーリズムと溽暑。暫らくは京都を避けよう
○(幹夫)盆地故元来京都の夏は暑い。
枷弛む大暑の風や海薄暮 あちゃこ
雑詠
窮屈な五線譜草の笛を吹く まきえっと
◎(楊子)草笛の音を五線譜に書くのはむずかしいでしょう。書けない部分が草笛たる音ですね。
○(あちゃこ)確かに窮屈な五線譜。草笛が広々とそれを超えていくよう。視点が素晴らしい。
くちびるの薄き女汗ばむ襟足 仙翁
サングラスバックギアーを整へて 卯平
遠のきし夏の日の綱敷の音 吾郎
遠青嶺駅舎の隅の小さきカフェ 餡子
◯ (アゼリア) 呑み鉄の立ち寄りそうな雰囲気のあるカフェを想像しました。
月月火水木金金夏期講習 幹夫
○(卯平)類似感はある。しかし、今の受験生、「月月火水木金金」が解るだろうか。時代錯誤と言われそうだ。
〇(めたもん)リズミカル、機械的な並びが懐かしい曜日の表現。味気無く気合が先行しがちな夏期講習に合っていると思います。
午前三時唄ゝ流る裕次郎忌 瞳人
△(卯平)詠み手は先日のラジオ深夜便聴いていたな。私は途中で眠ったが。
雑草に非ず十薬ひとつかみ 楊子
〇(春生)どくだみは薬草ですから、大事に。
◯(吾郎)この勢いは素敵、それでも抜けないけどね十薬
○(幹夫)花は白く美しい。異臭があるが、薬用の十薬。
山開濁世を禊ぐ雨となり 春生
〇(珠子)山開きは一か月後。禊しきれないからと豪雨になりませんように。
子燕巣立つ昔ながらの荒物屋 アゼリア
〇(楊子)荒物屋という死語的なお店が効いています。ずっと昔から燕がきていたのでしょう。
〇(春生)雰囲気のある句です。
◎(餡子)「♫酒屋の軒の燕の子・・・♫」という歌がありました。 5羽の燕の子が巣立って来年も来るでしょうか?というとても感動的な歌です。これは荒物屋。きっと作者も同じ気持ちでしょう。
〇(仙翁)荒物屋がいいですね。
〇(まきえっと)荒物屋を見かけることはないのですが、情景は目に浮かびます。
質問に返す質問かたつむり あき子
〇(楊子)ちいさな子供との会話が想像できます。かたつむりの季語が動かないですね。
〇(カンナ)取り合わせが面白いと思います。
〇(アネモネ)ありありの方法論ですよね笑
◎(めたもん)上五・中七の「質問に返す質問」と下五「かたつむり」の距離感が絶妙。かたつむりって粘り強くしぶとそうですものね。
○(宙虫)かたつむりの進む時間があれば、さらに質問は質問で返され、エンドレスな・・・憂鬱かも
◎(まきえっと)季語の選定がいいですね。優しいやり取りをしているんだろうな。
新盆やそうだあの人忘れかけ 藤三彩
◎(瞳人)何人もの知友を思い、なぜ、そう急ぐ…
◎(卯平)こう言われたい。忘れてもらうくらいで丁度よい。私も「あの人」の一人になりたい。実際は詠み手はけして忘れていないのだろう。亡くした人を乗り越えて前向きに生きようとしている姿に強く共感。
青簾果実を踏まぬ様に居る ちせい
積乱雲釣竿無心釣るばかり 珠子
村の音痩せゆく雨の合歓の花 宙虫
〇(珠子)人口が減り田畑が荒れる村、音も少なくなり心もとなくなってゆくのでしょう。
○(藤三彩)村の過疎化が寂しそう
○(あちゃこ)過疎に向かう村。時期的にもひっそりとしているのでしょう。合歓の花が優しい。
◎(道人)静かな過疎の村の真昼間の風情が「痩せゆく雨の」でよく伝わって来る。季語もぴったり。
〇(まきえっと)過疎化が進んだ村ですが、合歓の花が救っている感じがします。
氷水言いたいことを言えなくて カンナ
〇(瞳人)ナニが欲しいのでしょう、そこがなぞ
〇(楊子)冷たいね、とか。崩れそう、とか。関係のないことばかりしゃべって、肝心のことが話せない。わかるなあ。
○(アダー女)氷水をごくごく飲んでいたらモグッと大きな氷の塊が口にはいってしまい、口がきけないとか・・・いややはり、恋人に愛を告白するつもりが喉ばかり渇いて氷水ばかり口にしてしまう情景でしょうねえ。
〇(仙翁)言いたいことでも、言わなくていいですよ。
風薫る五輪のパリやテロ警備 泉
変身の叶わぬ脱皮カタツムリ あちゃこ
〇(カンナ)確かに。
〇(珠子)キミは何に変身したかったの?こっそり聞いてみたい。
◎(宙虫)脱皮をしても結局見た目は変わらない。変身は誰もが夢見る時がある。
〇(まきえっと)どんなふうに変身をしたかったんだろう。
片蔭は檜葉の生垣昭和町 めたもん
◯ (アゼリア) こういう昭和の残っている町並みにほっとしています。
藪蚊打つ音まで真似る幼な児は 道人
〇(瞳人)なんでも真似るのが子ども、それにしても
◯(吾郎)他に何を真似て、どんな子に成長するのか楽しみ
褥暑の中ワンピース買い清々し アダー女
◎(藤三彩)暑いと言っても格安のチラシをみるとつい買ってしまう。ご同感。
〇(あき子)ワンピースを買って、その日一日は清々しく過ごせそう。
☆☆次回をお楽しみ。
広島は梅雨が明けて、猛暑になりました。それでも、一ヶ月も過ぎれば、秋の気配になるでしょう。人間は歳を重ねるほどに、時間の流れが早くなる?