先日、スマートフォンのカメラで映した画像を翻訳したり検索したりできる機能があることを教わりました。
これで花の名前は任せてください。これを機にいい俳句が詠めそうです。
自分の顔を自撮りして検索したら「美人さん」「イケメン」なんてなったら笑えますね。
兼題:転
新しい自転車に乗り新入生 泉
◎(幹夫)希望ふくらむ入学間近の高校1年生として読みました。5段変速ピカピカの自転車が見えて来そうです。
〇 (多実生) いいですね新しい自転車、満身に希望も溢れています。
遍路杖無くて転ぶも老の坂 幹夫
自転車の校名めくれ卒業す 楊子
◎(餡子) 中学生でしょうか。3年間、雨の日も風の日も頑張って自転車通学。高校は電車通学でしょうか?定期券を初めて使った喜びは忘れられません。
〇(珠子)中七がリアルで、あるあるの景です。卒業式後クラス全員が集まることは一度もありませんでした。卒業とはそういうことだと今更ながら思います。
○(宙虫)高校三年間、ひょっとしてそれ以後も?自転車なりの歴史あり。
△(卯平)景としては伝わる。では句としてはどうか。「校名」と「卒業す」は同調的では。また「めくれ」「○○す」に句全体の流れに緩みがないか。例えば下五「卒業歌」すると校名が卒業歌の中で溶け合って、卒業していく詠み手の心情に寄り添う事ができるのではと鑑賞した。しかし、それでも同調的匂いは消えないだろう。
台車転がる音が柳絮を縫ってゆく 宙虫
◯ (アゼリア) 柳絮を縫ってゆくの措辞が新鮮です。
(選外)(道人)中七下五がとても魅力的なので、上五がもったいない。題詠を度外視してもいいのでは。
蹴躓き転び顎打つ春愁ひ 瞳人
龍天に登るカイロス初号転生す 藤三彩
〇(あき子)転生という救いが美しい。
諸子には転生せんて歯に衣 吾郎
石段に転がる空き缶春の雨 仙翁
○(宙虫)何の変哲もない景だけど。何か言いたそうな空き缶が見える。
蒲公英や転職癖が板につき カンナ
○(泉)ユーモラスな俳句だと思います。
○(幹夫)絮毛を飛ばして風まかせの地に生きる。取り合わせが適っています。
〇 (多実生) 板につきの表現に、その方の能力が垣間見えます。
◯(道人)蒲公英の明るさがいい。
自転車で花見の梯子する句作 多実生
暗転の後のステージ春二番 あき子
〇(楊子)次の場面はなんだろうと想像します。ひゅるっと生暖かい風がふいたのでしょうか。
○(藤三彩)舞台のドラマが暗転する、あっと驚く犯人が・・・
○(吾郎)テント小屋芝居、外には吹きすさぶ風、これ以上ない緊張感の第二幕。黒か紅か。
こぷこぷと泡転がれば山笑う めたもん
〇(珠子)泡がこぷこぷこぷこぷと転がって(流れて)いく景がみえてきます。宮沢賢治の「やまなし」では、「クラムボン」が「かぶかぷ」笑うのですが、久しぶりにそれを思い出しました。「山笑う」がぴったり。
てにをはを転がす舌や春うらら あちゃこ
〇(瞳人)転がして、ひとかわ、むけましたでしょうか
〇(珠子)俳句は助詞ひとつで大きく変わります。締切の直前「舌頭に千転」は難しいですが、ブツブツと何度か声に出してということですね。あまり深刻には考えていなさそうで、それもいい。
◎(宙虫)リズムがいい。あれこれてにをはを試してみたくなるうららだ。
◯(道人)芭蕉の千転舌頭を思い出しました。
○(卯平)俳人ならでの景。俳句作家であれば舌頭に千転するよりさっと作句。春うららが「転がす」を支えている。
◯ (アゼリア)春うららとはいきませんが共感の句です。
〇(まきえっと)リズムがいいですね。転がして名句をめざそう。
お転婆が急に無口となる朧 餡子
〇(瞳人)おぼろなる、心のうちは、はて?
◎(泉)意味深な俳句だと思います。
○(あちゃこ)少女が大人になっていくのですね。別れと旅立ちの季節。
寝転んで捲るカタログあたたかし 珠子
○(アネモネ)何のカタログだろう!あたたかし感が伝わって来ます。
○(餡子)一番リラックスしているときの情景。
〇(めたもん)上五・中七から時間を持て余している様子が伝わります。下五「季語」がその措辞をゆったり受け止めています。
〇(あき子)何ごとも起こらないけど、あたたかな時間。
〇(まきえっと)あ~、こんなにのんびりできるなんて。
あたたかしイチローに似る転校生 アゼリア
◎(珠子)最初はとっつきにくいキャラかもしれませんが、そのうち人気者になることでしょう!
初蝶やかの世の人に誘われて 卯平
◎ (多実生) 初蝶は春を実感させる瞬間で、また様々な思いを馳せる瞬間でも有ります。
〇(あき子)初蝶によって「かの世の人」との交流が自然に感じられました。
啓蟄の反りて転がるはさみ虫 アネモネ
〇(あき子)はさみ虫にははさみ虫の世界があって、そこに人間は存在していない、なんて思いました。
〇(めたもん)中七「反りて転がる」という「はさみ虫」の捉え方が独特で面白味があります。
両手にも余る転居や街朧 道人
○(餡子) 知人に転居13回という方が居ました。此の作者も、転勤などの多いお仕事なのでしょう。かく言う私は8回。
郵便の転送先は花の里 まきえっと
○(泉)キレイな俳句だと思います。
〇(楊子)いろんなことを想像しました。自然の花の咲くふる里でしょうか。
○(あちゃこ)下五は季語として弱い感じはしますが、展開がいいですね。
△(卯平)花の里ではなく例えば「郵便の転送先や飛花落花」であれば選を考えた。但し「転送先」が詠み手の住所なのか、そうではないのかは曖昧ではある。
テーマ:舞う
春の夢藤娘舞う歌右衛門 多実生
竜天に明日のプレゼン初舞台 あき子
落花しきりバレたけど辞職はしない カンナ
○(泉)厚顔無恥な政治家たちも、選挙で堂々と当選しました。
風光る踊り子像のトーシューズ 道人
〇(楊子) 噴水や公園によくあるバレリーナの像ですね。季語が明るい未来を予想させます。
〇(珠子)絵画ではドガ。像では思いつきませんが、きらきら輝く春風に、青銅のト-シューズはサテンのトーシューズに見えたのかもしれません。
◎(仙翁)何処の踊り子増でしょうか。光る風とトーシューズ、きれいですね。
○(吾郎)鋭角に刺さる感触、風光るの取り合わせもよろしいようで。
◯ (アゼリア) 景がよく見えます。
春嵐馬券舞い飛ぶレース場 餡子
〇 (多実生) 馬券ですから競馬場、五十年以上も前にこんな光景を目にしました。今でも手入れの行き届いた、競走馬の美しさは脳裏に刻まれています。
舞い戻るメールは英語春の昼 楊子
○(藤三彩)昔ペンパルというのがあったが今は詐欺メールが怖い
○(卯平)ここではエアメールだろう。そうでなければ「舞ひ(い)戻る」は生きてこないであろう。しかし、誹諧味から言えば英語ではなく、例えばアラビア文字とかなどの方がよりインパクトは強いだろう。英語では平凡かも知れない。「春の昼」か「蝶の昼」か。後者であれば特選候補。
薄靄に初蝶の影石地蔵 仙翁
○(宙虫)靄と影はつきすぎの感はあるが、地蔵と蝶の影の取り合わせに魅かれる。
馬睨むかの目梅の香村に舞う 吾郎
◯(道人)流鏑馬のような行事だろうか。梅匂う山里の風情がよく伝わってくる。回文句特有の弾むようなリズムがいい。
春雪舞ふ上京の子に護符むすび アゼリア
〇(カンナ)親心が感じられます。下五の連用止めが上手いと思います。
転職を告ぐる父ゐる春の昼 卯平
〇(楊子)学生だけではなく、お父さんにもいろいろある春ですね。みんながあまり詠まないところを詠まれました。
潮の香もはひふへ舞ひて和布汁 めたもん
○(あちゃこ)リズムの良さにまず一票。三陸の新ワカメ買いました。
戦場に舞ふ春雪の赤と白 幹夫
◎(あちゃこ)下五をどうイメージするか迷いました。生々しい戦地の色ともとれますが、旗の色として読ませていただきました。色々と想像を掻き立てる句です。
◯ (アゼリア) 赤は血飛沫でしょうか?
初蝶の庚申堂に来て返す アネモネ
◎(吾郎)訪ね来た誰かの化身か、見慣れぬ風景への戸惑いに初蝶の翔ぶ様が目に浮かぶ。
春場所や小兵ひらりと押し出しぬ 藤三彩
○(泉)大相撲の醍醐味ですね。
○(幹夫)テーマ「舞う」には中句「ひらりと」に加えて、「舞」の字の如くそれは小兵の舞の海!当代では、宇良関か!
鍵盤に乱舞する音春の宵 あちゃこ
花咲くやバレエと日舞が共演し 泉
まだ母の居そうな畑紋白蝶 珠子
〇(瞳人)一緒に鍬を使った日々…が
○(アネモネ)ちょっと切ないですね。
○(幹夫)春の陽気に誘われて一斉に畑に飛び出して舞う紋白蝶が可憐です。農作業をする生前のお母さんが偲ばれます。
○(餡子)いつも朝早くから畑に出て野菜の世話などしていらしたのでしょう。紋白蝶とも、何かお喋りしていたかも知れませんね 。帰郷する度に、畑で屈んでいるお母さまの姿が目に浮かぶのですね。
〇 (多実生) 畑に来る紋白蝶を見れば、母への思いも募りそうです。
◎(カンナ)書いていない分、背景を想像させられます。取合せも上手いと思います。
◎(道人)この畑は母の記憶そのもの。紋白蝶の白がいい。
◎(卯平)亡くなった母への思い。具体的な蝶の名前で亡くなった母がどのような方であったが伝わる。例えば「蝶の昼」としてしまうとその母の姿がぼやけてしまうだろう。その意味で特選とさせていただく。
◎(めたもん)「母」を亡母と読みました。亡母が紋白蝶になって畑を見に来たのでしょうか。共感します。
〇(まきえっと)一日中、畑で過ごしていたのでしょうね。お母さまは居なくなりましたが、紋白蝶は飛んできて何かを語りかけてくれます。
縄跳びの縄かき混ぜる春の空 まきえっと
〇(仙翁)縄が、空をかき混ぜる、面白い視点ですね。
〇(めたもん)中七「縄かき混ぜる」が生き生きと春を表現。子供たちの声も聞こえてきます。
たんぽぽのてんてこてんてこぽぷこーん 宙虫
〇(カンナ)中七、下五がたんぽぽらしい感じがします。
〇(仙翁)宮沢賢治の言葉のようで、面白いですね。
◯(道人)意味不明なれどリズム感と平仮名だけの表記で身も心も軽くなりそう。
春愁を思ひの丈舞へ信天翁 瞳人
雑詠
チューリップ転校の子と朝ごはん あき子
〇(楊子)新しい学校には慣れるだろうかと親は心配します。季語が明るいから救われます。
豚肉にすりこむハーブ木の芽風 まきえっと
○(アネモネ)木の芽風いいですねえ。期待感わくわくです。
◎(楊子)和え物などの和風の料理ではないところが新鮮です。アイランドキッチンのあるモダンな家にも木の芽風は入るでしょう。
○(藤三彩)豚肉ブロックにグローブ(丁子)など穴を明けて詰める。自由な時間の中に入る。
〇(珠子)時折春風の舞い込むキッチン、またはテラスでの食事会かもしれません。中七が何ともおいしそうです。
花咲いて楽しい年金暮しかな 泉
◎(瞳人)もう、これで、十分、ゆるりまいりましょう
◎(アネモネ)これはもう花の年金生活!うらやましい。
○(幹夫)花鳥風月を愛でてつつましく。その心がけに共感です。
開花予想見ごろと人出感染症 藤三彩
○(泉)新型コロナは未だに恐怖です。
郷の川魚の光れる春来る 多実生
荒れ庭の片隅紫雲英咲初むる 仙翁
三月や浅瀬を弾む水の音 珠子
◯ (アゼリア) 寒い日もありますが春は来ているのですね。
春先は鬱漬け頭痛覇気去るは 吾郎
○(餡子)木の芽時の鬱!五月病!春は春愁の時期。「まあいいか!」と開き直る日は来ます。
〇(カンナ)よく考えつかれたと感心しました。
○(宙虫)春愁が春愁を呼ぶ。春は鬱陶しさの連続だ。
〇(仙翁)このような気持ちになるかも。綺麗な回文ですね。
〇(めたもん)「はるさきはうつづけづつうはきさるは」ですね。見事な回文の句。特に「鬱漬け」という措辞はいいなあ。
◎ (アゼリア)共感の句です。春は苦手です。
〇(まきえっと)本当に鬱漬けですね。
雛飾る次男の仕切る七段目 楊子
○(アネモネ)次男なかなか(笑)
◎(あき子)賑やかな声が聞こえてきて、幸せを感じます。成長しても七段目は仕切ってほしい。
○(卯平)七段目は向かって左から御駕篭、重箱、牛車と並べるのだそうだ。何で次男が飾るのか。長男では凡、ましてや長女や次女では貧すれば鈍する世界だろう。次男とは愉快だ。
○(吾郎)御駕籠、重箱、牛車を並べるのは次男の仕事…、微妙なヒエラルキー。
◎(まきえっと)次男がいい仕事していますね。
早逝の友の老けぬ目白椿 めたもん
○(藤三彩)学校や会社の同僚がいなくなる。寂しいな。
地震しみる三月仙台空港ピアノ 瞳人
○(藤三彩)ピアノが弾ける人はいいな。世界の駅や空港にピアノが置かれる。
〇(カンナ)「地震しみる」と「三月」が利いていて良いと思います。
地図アプリの終点に立つ春彼岸 宙虫
○(餡子) 終点はどこだったのでしょうか。気になりますが・・・。まさか彼岸ですか?
○(あちゃこ)旅の目的地?そうではなく、やっと辿り着いた地でしょう。取り合わせの面白さ。
直行便なき赴任の地鳥雲に アゼリア
〇(瞳人)いいじゃあないですか、3年? 5年?
○(幹夫)僻地への赴任ですね。初任地は北海道、私自身のことを思い出しました。
◎(藤三彩)ご同感です。スリランカ(セイロン島)など経験しました。
〇 (多実生) 転勤赴任の経験は有りませんが、様々な想いが展開します。
〇(カンナ)取り合わせが良いと思います。
○(卯平)つい今大国に攻められている某国に思いをはせる。鳥雲にで納得。
三従の三つ目に迷い春うらら 餡子
◯(道人)女性の本質を捉えて俳諧味あり。
父母のイニシャル涅槃図の裏に 道人
○(卯平)と言う事は歿は父母とも一緒の日だろうか。涅槃図の裏に惹かれる。
風は荒野よりミモザの黄の熟るる あちゃこ
○(宙虫)黄色が熟れる。日に日に情景が変わる春。荒野からの風が面白い。
〇(仙翁)きれいな景色が見えます。破調がいいですね。
○(吾郎)キレがいい。荒野と熟れ具合の取り合わせも。
〇(めたもん)下五「黄の熟るる」の表現の面白さ、リズム、言い切らない感じが好きです。「熟るる」を「熟れる」「熟れて」とする手も?でも、無難過ぎるかな?
春炬燵まどろみながら考へる 幹夫
〇(瞳人)老いに、身をゆだねるな、とトビー・キース言い
○(アネモネ)春炬燵がいかにもです!
選外 (多実生) 気持ちが良さそうで、半分は夢の続きの様です。
無言なる部屋に座しけり春の雨 卯平
〇(仙翁)部屋を無言ととらえて、静寂孤独感が浮かびます。
卵料理増えた食卓山笑う カンナ
料峭や風に転がるポリバケツ アネモネ
〇(あき子) 料峭の肌の感覚と無機質なポリバケツの取り合わせが、小説の一場面のよう。
○(あちゃこ)モノに語らせている作者の心情の渇きを想像させます。
○(吾郎)どこかおかしく物悲しい様と音
〇(まきえっと)このさり気なさが好きです。乾いた音なんだろうな。
☆☆次回をお楽しみ。
もう三月も終わりますが、広島は寒い日が続きます。雨も多いし、なかなか春を実感できません。それにしても、大谷選手に関するスキャンダルには驚きました。結婚も縁なら、通訳とも縁でしょう。大谷選手の今後の活躍に期待です。