こんばんは。
お待たせいたしました。
立て続けに台風が来ましたが、被害などありませんでしたでしょうか?
スポーツの秋。ラグビーで賑わっている日本列島ですが、私はテレビでバレーボール観戦です。秋場所も楽しかったです。
兼題:分
「二分隊前へ」匍匐の芋畑 幹夫
五分五分の構えで睨む秋の蝿 楊子
秋刀魚焼く分相応に満ち足りて 泉
〇 (多実生) 海なし県で育った私は魚と言えば、秋刀魚か鰯でした。
○(ちせい)季語は「秋刀魚」。秋刀魚を焼く軽快さも伝わってきました。
◯(アゼリア)分相応が良いですよね。
迷走の社旗はためきて野分晴 瞳人
観月や竹割り分けたやつ原価 吾郎
分去れの碑文に月草戦ぎしか 敏
文明の夢薙ぎ倒す野分後 仙翁
○(泉)台風が来ると、人間の科学も全く無力です。
〇 (多実生) 自然の猛威に人間は無力です。
〇(宙虫)千葉の停電を見ながら、大きくうなずく。
分け入ってみれば山頭火に会う良夜 餡子
◯(卯平)山頭火への憧れ。彼を求めての旅。その果ての良夜。季語の位置が明確。
◎(アゼリア)絵になっています。山頭火とお月見ー夢のようです。
分度器で測る紺空秋の昼 卯平
〇(宙虫)分度器を置きながら空気をとらえる感覚が面白い。
涼新た分断されし相関図 あちゃこ
野分晴ひのきの匂う蛇抜谷 道人
〇(楊子)揺れ動いたひのきが匂う気がする。清々しさもある。固有名詞も効いている。
草の花叔母の小さき形見分け ルカ
〇(藤三彩)可愛らしいおば様だったんでしょう
◎(珠子)平易で美しい句。季語はやさしくあたたかで「小さき」が雄弁です。私の場合、和裁が趣味の叔母から「これが最後」と送ってもらった綿入半纏が本当に最後になり形見となりました。
○(仙翁)草の花と小さな形見分け、しみじみとします。
分校の廃校久し蕎麦の花 多実生
○(敏)荒地でも花をつけるという蕎麦と、廃れた分校との取り合わせは、これ以上ないほどの秋の風景だと思うのですが。
〇(春生)少子化、過疎化でさびれてしまった山村風景。「蕎麦の花」が効いています。
幾つもに道分かれたり迢空忌 春生
◎(ルカ) 「葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」(釈迢空・海やまのあひだ)。この歌に心惹かれ、釈迢空を知った私。この句を一読して、この歌がすぐ思い浮かび、釈迢空に想いを馳せました。
◎(敏)迢空といえば「道」を詠った「葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」をすぐに想い出します。生き方の共感にも様々な合があるということかも知れませんが。
肩で押す分厚き扉望の月 珠子
○(アネモネ)扉の厚さが伝わってきます。
〇(楊子)確かなもの、間違いのないものにはちょっと気後れする自分がいる。
〇(宙虫)ギイーっといった音が聞こえてきそうな重厚感。
◯(卯平)忙しき課長か。部長はもっと余裕あり。かと言って新米社員はそこまで図々しく振る舞うわけにはいかない。その扉を開けた所の窓に月。今日も残業か。しかし、疲れているわけではない。
○(あちゃこ)姿が見えてきます。ふと見上げた月の美しさ。
○(ちせい)季語は「望の月」。手が塞がっていたのだろうと思いました。
◯(アゼリア)両手がふさがっている時、肩で押してしまいます。季語が効いていると思います。
涼新た朝に分度器持たぬ我 ちせい
天高し老いてもありぬ分岐点 アゼリア
○(泉)人間は死ぬまで迷い、人生は問題の連続ですね。
◎(藤三彩)頂点からの下山にも道迷いはありそう
大分で生まれ飛蝗にこぼす愚痴 宙虫
○(餡子)この飛躍の距離感がいいですね。飛蝗にとっては我関せずですものね。
○(アネモネ)なんとなくわかります。
〇(珠子)飛蝗に聞いてもらう愚痴、優しくて何とも切ない。
◯(道人)大分は地方の象徴として読みました。東京一極集中が過度に進む現代の地方在住者は、身近な飛蝗(自然)に愚痴を零したくなる時もあるでしう。
◎(幹夫)飛蝗に小言を言っても詮無きは無論承知。他郷は知らず、生まれも育ちも大分県という自身の境遇とその故郷に寄せる思いが詠まれる。
(選外)(藤三彩)大分はラグビーワールドカップの会場として盛り上がっている。愚痴など言っている場合ではないのでは
ピルケースに分けし錠剤小鳥来る アネモネ
〇(藤三彩)ピルケースに一瞬ドキッとする。避妊薬じゃなくて色鳥のようなその日の多色な錠剤を薬食いするのだ
〇(春生)取り合わせの妙。色とりどりの錠剤と小鳥。
◯(アゼリア)姉がピルケースに色とりどりの薬を入れて持ち歩いていたのを思い出しました。
○(まきえっと)ピルケースも錠剤もたくさんの彩を使っているのかしら。小鳥来るのさりげなさが秋にふさわしいです。
(選外)(道人)老いる程薬は増えて管理も難しくなるが、「小鳥来る」で心持ち救われる。
(選外)(卯平)出かける時常備薬を分けて持参する事はよくある事。ウキウキと出かける作者。季語がその様子を表している。
漫画本並びし床屋野分過ぐ まきえっと
〇(藤三彩)『少年マガジン』や『少年ジャンプ』とか読んでいたのを思い出す
◯(卯平)理髪店にはどうしてか漫画本が並んでいる。中には散髪が終わったのに漫画本を読んでいる人も。作者は台風を待っている。その俳諧味に共感。
○(幹夫)野分一過安堵の一時だ。
テーマ:長
長いのは鳴かぬ蚯蚓と鳴く蚯蚓 ちせい
○(吾郎)なんだか分からないけど、多分そういうことなんだろう。
秋の雨記帳の音がまだつづく 楊子
◯(道人)「記帳の音」に惹かれました。個人の遺徳が偲ばれます。
○(吾郎)ジャニーさんちの記帳。冬じゃ寂しいし、春じゃめでたいし(笑)、夏じゃ列席者が可哀想だし、やっぱり秋か。
棒立ちで過ごす一日鉦叩 まきえっと
○(ルカ)どんな一日かはわかりませんが、季語が面白く響いています。
◎(卯平) 実は選者も一日最低六時間立ちっぱなしの仕事に従事している。鉦叩はその様子を見守っている。殆ど客が来ない深夜の立ち仕事。その姿は私選の姿。
○(幹夫)一日中退屈なのか、否、自身の職業が棒立ちなのか?棒立ちの実態は不明だが、チンチンと鳴く鉦叩の声が切ない。
◎(吾郎)この長さは実感。鉦叩がいい塩梅です。
稲穂揺れ隙間だらけの時刻表 宙虫
◎(瞳人)田舎のJRの間引きのひどさ、何考えとる、民営なんかにするのじゃなかったよ
○(餡子)郷里でしょうか、あるいは旅の途中でしょうか。稲穂の揺れる辺りにはバスも列車も日に何本の世界でしょう。隙間だらけが時刻表を視覚でとらえて上手い。
○(アネモネ)隙間だらけの時刻表、に得心です。
〇(楊子)しずがな光景が目にうかぶ。ホームに降り立ったのはひとり。
〇(珠子)バス停ととりました。日本中どこにでもある景。わが実家も。
○(幹夫)止まる列車が一日に数本という田園調長閑な田舎の駅舎の景だ。
○(吾郎)1時間に1本どころか1日2本の秘湯のバス路線、秋ですなぁ。
宇宙から長城ながめ天の川 泉
◎ (多実生) 宇宙から建造物が見えるとしたら、万里の長城だそうです。
長き夜の行軍銃の影を踏む 幹夫
○(ルカ)行軍の最中は、常に銃を突きつけられている恐怖 を感じる。その張り詰めた感覚が伝わってきました。
○(仙翁)戦争の様子がよく分かるような気がします。
◎(春生)誰へのどんな内容の手紙かは分かりませんが、長時間かけてやっと書き終えたという達成感が出ています。
○(あちゃこ)長く辛い先の見えない行軍。闇だけが広がっています。
夏の果て堀に垂らした鰻針 多実生
〇(珠子)暑い暑い夏でしたが、必ず果てはあります。釣れるはずもないが針を垂らして一日無心に過ごすのもよかろう。
七夕に銀河へ遠出六丁目 瞳人
○(泉)法螺もここまで吹くと、返って小気味良いです。
秋暑し水場にのびる象の鼻 敏
◎(アネモネ)象の鼻のもぞもぞ感がリアル。
〇(珠子)コンクリートでできている上野動物園の動物たちは、東京の夏を耐えねばなりません。水ぐらいたっぷりと思います。
◯(道人)長くゆったりとした「象の鼻」の動きで、八月の残暑ではなく、九月の「秋暑」がより伝わって来る。
◯(卯平)まだ暑い秋の動物園。象の鼻がゆったりとのびている風景がよく描写できている。
○(ちせい)季語は「秋暑し」。愉快な感じですね。「象の鼻」が過不足ないと思いました。
◯(アゼリア)器用に長い鼻を使いますよね。伊達に長い訳ではないと納得します。
長き夜や適わぬ時を追い求む 仙翁
新さんま載せて弾みし台秤 アネモネ
〇(楊子)弾むということばが活きの良さを確かにしている。市場トロ箱の銀のさんまがおいしそう。
○(敏)鮪の計量に使うような台秤に載せられた「新さんま」、その大きさが想像されますね。
○(あちゃこ)いよいよ秋刀魚が手に入る嬉しい弾み。
戦死者のセピアの遺影雁渡 あちゃこ
◯(アゼリア)実家にもセピア色の伯父の遺影があります。祖父母の想いを聞いて育った身としては、なかなかしまえません。
台風の殿が撃つ高梯子 珠子
大還暦鹿しか仕切れん会だ 吾郎
○(泉)「大還暦」は120歳のことですね。勉強になります。
◯(道人)「大還暦」とは大きな人生の節目としての「還暦」と受け取れます。そのお祝いなら会ならさぞ賑わって収まりがつかない。鹿が登場すると喧諤々が直ぐに収まって半生の感慨に戻れそうです。俳諧味豊かな回文句。
長き夜の長き手紙の結語かな 卯平
○(ちせい)季語は「夜長」。結語にハッとしたのだと思います。何が書いてあったのか、想像力を掻き立てられました。
灯り無き夜の長さや安房上総 餡子
〇(瞳人)風速50メートルの直撃、房総はこれにやられた、首都圏での見ていられない光景だ
〇(珠子)心よりお見舞い申し上げます。どれだけ大変なことか。数年前、電気系の故障で一日停電だったことがありましたが、近所には電気がついてコンビニもスーパーも近くにあって、それでもかなり不安だったことを思い出しています。
〇 (多実生) 文明社会の柱の電気、灯りをはじめ大変な事を再認識。
○(敏)台風15号によってもたらされた千葉の災害は、安房上総のみならず上総の約半分の地域にも及ぶ全県的なもののようです。ブルーシートと瓦礫の山倒壊した家屋と電信柱の映像には、胸が締め付けられる想いがします。
〇(春生)安房上総では、今も停電が続いています。心よりお見舞い申し上げます。
○(あちゃこ)大変さが伝わってきます。本当に大変な思いをされています。誰にでも起こり得る事。
肥料屋は鰻の寝床昼の虫 アゼリア
病床に風の声聴く夜長かな 春生
○(アネモネ)「風の声聞く」の所在なさ。
○(仙翁)入院している人は、こんな感じでしょうね。
梨を剥く母の歳月終わりなき ルカ
(選外)(楊子)梨は動かない。母の人生もみえる。
長き夜を十万億土追いかけて 道人
(選外)(卯平)上五を強く切ってあればこの句はそれなりに鑑賞に耐える。
雑詠
かたことの日本語秋刀魚焼く煙 まきえっと
○(アネモネ)いかにも今風な居酒屋。
花野へと今日二台目の救急車 楊子
〇(宙虫)無事であってほしい。見る時は何度も見る救急車。
眼帯のをんな一人のをどりかな 卯平
○(ルカ)眼帯をつけた女人はどこか魅力的。踊りも魅力的な気がします。
◎(餡子)何とも奇妙な場面。小説が書けそうです。
◎(仙翁)何か面白い。をんな、をどりのひらがなもいい。
〇(宙虫)一人の踊りが印象的。
○(まきえっと)情景が目に浮かびます。新鮮でした。
靴下を脱ぐ雲間より望の月 珠子
○(餡子)靴下を脱いでいるのは、男性?女性? 今日一日の疲れも一緒に脱ぐ。折しも、望月が現れて癒されましたね。
〇 (多実生) 仲秋の名月は、大分南に有るので部屋からでも見られます。
◎(宙虫)一日出かけていたのか。靴下を脱ぐときふっと息をつく。その息が聞こえてきそうな瞬間がいい。
◯(卯平)艶のある句。なんとも色っぽい。季語の位置が詠み手の像を明確にしている。
◎(ちせい)季語は「望の月」。詩的感興があると思いました。曰く言い難いのですが。
◎(まきえっと)取り合わせがいいですね。
(選外)(道人)残業か呑み会か、夜半に帰宅して、畳部屋で靴下を脱ぎながら窓の外を仰ぎ見た瞬間の名月でしょうか。生活感の断片を切り取って無駄い。
さざなみを刻みし風や夕化粧 敏
○(仙翁)さざなみを刻む、面白い表現ですね。
効ありやレモンの輪切り顔に乗せ 泉
〇(瞳人)何十年前であろう、飲み屋のお姉さんがやっていたよ、効くんかいなあ
告げ口はこおろぎだった風の村 宙虫
〇(藤三彩)狭い村の人間模様があって若者は村を風のように出るのでしょう。
○(餡子)面白い。このこおろぎは、平仮名書きですから、蟋蟀と書くより、想像がふくらみます。風に乗って、噂話は膨らんでいく。
◎(楊子)もう昔のことはどうでもよくなりました。感傷でもなく思い出でもなく平行な視線がいい。
◎(あちゃこ)あらあら大変。お喋りなこおろぎ達。然もありなん。おかしみの中に怖さも感じます。
○(吾郎)風の村~がいかにもですが、告げ口はこおろぎ…は好き。
〇(まきえっと)こおろぎだったら、告げ口はしねいでよねと言えそう。
(選外)(道人)「こおおろぎ」の繊細さ。告げ口も告白もしそうですね。
初秋刀魚七九八といふ値札 瞳人
○(泉)七九八はかなり高い。今年は不漁の様子です。
床の絵馬蓼の穂の出た前のこと 吾郎
西友の前にお神酒所秋高し アネモネ
○(餡子)賑やかな祭りの景が想像できます。西友がいい味だしています。
○(敏)お神酒所にはそれなりの広さが必要ですので、スーパーの広い駐車場などは最適なのでしょう。地域に密着した店舗の有り様がうかがえます。
〇(まきえっと)西友の登場がいいですね。他店より1円でも高ければ・・・と店内放送。
草の穂の斃れ戦の幾星霜 幹夫
大畝と小畝の大地蚊の名残 ちせい
煩悩のままなる暮し赤のまま 多実生
〇(瞳人)解脱できないのは、おたがいさまにて
〇(楊子)共感という選なら一番です。赤という色が暗くはない暮らしぶりを表している。
○(仙翁)その通りですね。煩悩のまま、赤のまま、いいですね。
〇(春生)自画像でしょうか、俳味を交えた佳句です。
○(吾郎)赤のままってそういう雰囲気あります。
分断の続く地球や月今宵 餡子
〇(藤三彩)国境がある分断、さらに宇宙防衛隊の創設により月は誰のものとなりそう。
したたかや風に抗う葛の花 あちゃこ
○(敏)葛ほど「したたか」という形容が相応しい植物は見あたりませんね。
本籍は駅舎軒下帰燕かな アゼリア
〇(瞳人)また、元気で戻って来いよー
◯(道人)人間も本籍と現住所が違って当たり前の時代。燕に託して郷愁を詠って味わい深い。
〇(春生)駅舎で、今年生まれた燕でしょうか。駅舎を「本籍」といったところが愉快。
○(あちゃこ)本籍は色々ですが、燕が帰って来た。嬉しさと安堵感。
○(ちせい)季語は「帰燕」。駅舎でのアイドル。
○(まきえっと)駅舎を「本籍」としたところが楽しいです。
毎年の宿敵のあり草相撲 ルカ
〇 (多実生) 才能のある者同士、決戦は同じ顔です。
○(幹夫)折しも秋場所最中「草相撲いつかは共に幕の内」といった心地で読んだ。
無花果の中や小人の火を燃やす 春生
◎(泉)この様な捉え方もあるんですね。感心しました。
○(ルカ)ファンタジーですが、面白いです。
○(幹夫)2分割の無花果は、確かにそう見える。
露の世や壁に向かいて結跏趺坐 仙翁
◎(道人)「壁に向かいて」に作者の生き様が見えて来そうです。
瞑りても見ゆる面影今日の月 道人
○(ルカ)美しき月は、瞼に残ります。
次第に秋らしくなって来ました。広島カープはCSに残れるのか?来季からの広島カープは、厳しいだろうと予測されます。ファンの応援で、後押しするしかないですね。それと、世界ラグビーの迫力に圧倒されています。