毛皮着て大都会てふジャングルを 春生
池に雲置いて整う紅葉山 まきえっと
◎(幹夫)一句一章の綺麗な俳句。池に映し出されている紅葉が佳く詠まれている。
〇(仙翁)雲を置く、整いますか。
◯(道人)池面に映る見事な紅葉を詠った叙景句の中で一番気に入った句。「置いて整う」が巧い。
〇(めたもん)下五の季語へ掛かる中七の「整う」がいいと思います。
〇(アダー女)池の向こうは今を盛りの紅葉の山。晴れた空には白い雲。その雲が池に映り、風景としてぴたっと収まっているなあ!という満足した眼。そうですね。一幅の美しい絵画のようですね。満足、満足!
〇(宙虫)池に雲を置く、池にもある借景。
時雨るるや百年灯るLED めたもん
〇(楊子)百年もつのがいいのか、どうなのか。作者は疑問を持っている。
◎(泉)「百年灯るLED」百年後の日本は、どうなっているのか?
憂国忌地区センターの夕まぐれ あき子
〇(瞳人)三島の獅子吼を、大望遠カメラで活写した人、知っているけど、下の七五とどう…
〇(藤三彩)三島由紀夫の憂国忌!1970年11月25日は積み上げた封鎖が解かれて遅くなった秋の修学旅行が確定。ほのぼのとした想い出。
〇(餡子)あの日のことは、鮮明に覚えています。でも、三島由紀夫も、遠くなってきました。地区センターでは、何か催し物があったのでしょうか?憂国忌と夕まぐれが呼応していて、虚しい。
〇(カンナ)季語がついていないのが良いと思います。
〇(あちゃこ)何気ない取り合わせにより、憂国忌が浮かび上がります。
(選外)(卯平)やはり憂国忌(憂國忌が読み手の好み)は何とかして座五に置きたい。「夕まぐれ」はこの季語に対して句全体を弛緩させないか。
完璧な逆さ紅葉や五色沼 道人
〇(泉)絵画の様に美しい俳句だと思います。
〇(アネモネ)いい癒しの景だと思いました。
〇(宙虫)完璧なと言い切って動かしがたい景にした。
太平燕北風抜けるアーケード まきえっと
〇(あちゃこ)太平燕は中華店なのですね。アーケードを抜ける風に郷愁が感じられます。
〇(餡子)タイピエン・・熊本のご当地グルメとか?今度味わってみたいです。
◎(カンナ)太平燕は燕の名前かと思いきや食べ物ですね。上五で切れるのが良いと思います。
〇(あき子)たいぴーえんのレシピを読んだら、北風がリアルに感じられました。
〇(めたもん)「太平燕」を初めて知りました。温かくて美味しそうですね。「太平燕」の漢字が季語「北風」とよく合っていると思います。
句会果てカラオケ店の年忘れ 春生
◎(瞳人)あはは、胸の内に渦巻く暴言をぐっと飲みこんで、句会は終わった、さあ、吐き出そう
〇(卯平)一般的に句会が終わった後句座を囲んだ連衆と「カラオケ」で忘年会と読んでしまうと、詠み手に失礼だろう。この句の眼目は「果て」。おそらく詠み手は年忘れの句会で余り共感を得なかったようだ。だから「ふてくされて」一人カラオケで憂さを晴らしている。来年はもっと季語の勉強をして頑張るかと言っているような詠み手の心の呟きも聞こえてくる。後者の鑑賞を前提とすれば特選候補の一句。
時朽ちて時新たなり冬夕焼 あちゃこ
〇(泉)来年は参院選があります。正に激動の一年になりますね。
〇(仙翁)時朽ちて新た、そうなればいいですね。
〇(めたもん)変化するリフレイン「時朽ちて時新たなり」が、感傷の中に凛としたものがある冬の夕焼けにぴったりです。
〇(ちせい)朽ちた時と新たな時。冬夕焼けが辺りを包みます。
〇(宙虫)あっという間に時は朽ちる、この感覚に共感。
寒晴や寛解宣言告げられて 卯平
◎(藤三彩)「寛解」の大穴を引き寄せた。もう無理をせずにと思えば衣食住に耐えられる。
〇(瞳人)良かったですねえ
〇(アダー女)良かったですねえ!澄んだ空気と抜けるような青空!スキップしたい気分でしょうね。
ディケンズ読む内科待合暮早し アゼリア
〇(あき子)相当長く待たされる待合室でも、ディケンズがあれば。
〇(アダー女)待合室で呼ばれるまでの時間、全く長いし、日は短くなってきているし・・・そんなとき、よく読書できますね。私も取りあえず、読みさしの本など持っては行くのですが、どうも落ち着いて読むことができません。偉いなあ!
◯(道人)「ディケンズ」が内科と合っている。季語もいい。
〇(泉)ディケンズ・・・確か「クリスマス・キャロル」でしたか?
〇(あちゃこ)ディケンズですから、クリスマスキャロルかな?静かな12月の景。内科は省略してディケンズを開く待合暮早し ではどうでしょうか。
(選外)(卯平)上五の人物名はクリスマスを連想はさせる。しかし、揚句の中七は納得しても下五の「暮早し」は安易な置き方ではないか。上五へと読み手が思いを巡らす座五が欲しい。
冬紅葉雲のギザギザ水を吸ひ ちせい
◎(仙翁)紅葉も雲もギザギザでしょうか。
登り来て野山の錦分かつ湖 仙翁
〇(藤三彩)山頂の湖からの景色は格別なのだろう。登り来てが快い響。
〇(めたもん)高い所から見下ろした錦秋の景が広がります。中七、下五の措辞が上手いと思います。
嵩高き北に富士あり冬夕焼 瞳人
陣痛を誘う湖うすもみじ 楊子
◯(道人)句意よりも頭韻と脚韻、真ん中の「ウ」音「ミ」音の響き合いでいただいた。
スラブ語の路上ライブや待降節 道人
〇(楊子)旅ではなく、本当に住んでいる外国人が多くなりました。
〇(ちせい)ロシア語やハンガリー語だったのか、楽器がスラブ系だったのかもしれません。
〇(餡子)聴きたかったですね。待降節という季語にはじめて出合いました。
〇(あちゃこ)クリスマスに向けての街の風景。路上ライブも増えそうです。
◯ (アゼリア) ウクライナの方でしょうか?一日も早く戦禍が収まることを祈ってます。
〇(卯平)かなり作意を感じるが句としては成り立っている。
顔見知り街にちらほら雪の花 あき子
散紅葉妻うなされる先の闇 めたもん
寒落暉気持ちは言葉で言い包む 藤三彩
年末の「第九」今年はひとり行く アダー女
〇(藤三彩)一人でごゆっくりどうぞ。
〇(瞳人)どういうことになりまして
(選外)(卯平)実は読み手も年末「第九」に行く予定。もしかすると終楽章で一緒に歌えるかも知れない。年末と「第九」で説明的では。中七下五の散文も韻文に整理しようと思えば十分可能な措辞。
冬夕焼影絵となりて街沈む 餡子
〇(アネモネ)なかなかクールな視線と表現だと思いました。
〇(カンナ)詩的な表現が良いと思います。
〇(春生)大景をしっかりと捉えて妙。
〇(仙翁)夕焼け、沈む街、面白いですね。
◎(まきえっと)影絵となって街が沈むなんて、なるほどです。
◎(宙虫)冬の影絵。色々な空気感を孕んで夜に向かう街の雰囲気が伝わる。
終末時計一分半に冬夕焼 カンナ
〇(藤三彩)「終末時計」というのが微妙。お亡くなりになりましたという絶滅までの残り時間があと一分半(九十秒)!
〇(あき子)冬夕焼のなかでの一分半に、現実世界の緊張が表現されています。
(選外)(卯平)最初選を考えた。しかし中七の「に」が妥当か。「や」では常套的かも知れないが、何とか出来ないか。勿体ない句。
錦秋や池はぽつかり雲浮かべ アネモネ
〇(春生)美しい景です。
〇(仙翁)景色が見える面白いですね。
モネのごと湖面に映る紅葉かな 泉
寄せ鍋の蓋とる縁のうすい町 宙虫
〇(ちせい)蓋を取る時ふと気付く「縁」。うすいなあと。
〇(まきえっと)旅先なのでしょうか?縁が薄くても鍋で温もりを大事にしてください。
〇(幹夫)寄鍋の鍋の中の世界を一つの町と捉えたところが面白い。
〇(藤三彩)具材が雑多な寄せ鍋。縁の薄い町にはいづらいでしょう。
◎(楊子)鍋の蓋を比喩として薄い街の人間関係を詠んでいる。
きらめける湖面の矜持冬紅葉 幹夫
今月の写真
一枚目・・・熊本市の下通商店街
投句のなかに「太平燕」が登場した。熊本のソウルフードのひとつ。
https://www.jalan.net/news/article/406560/?msockid=38b67f83a74568b02dcc6b37a69769af
二枚目・・・熊本県玉名市の市街地
三枚目・・・大分県豊後大野市の用作(ゆうじゃく)公園
いよいよ十二月になりました。広島は寒さは次第に厳しくなって来ました。しかし、一年が経つのは早いものです。今年一年、何とか健康で過ごせたことに感謝です。