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TPPと私たちの食・農・くらし 鈴木宣弘東京大学教授 食の安全その3

2016-04-30 19:39:19 | TPPと私たちの食・農・くらし
食品添加物の基準緩和や表示の問題
もう一つ、うそがばれた。輸入農産物に使用される防腐剤や防カビ剤などのポストハーベスト(収穫後)農薬についても日本の基準が厳しすぎるからもっと緩めるよう米国から求められ、日米2国間並行協議の項目に挙げられていた。日本では収穫後「農薬」は認めていないので、米国のために「食品添加物」に分類したのだが、こんどは、そのため食品パッケージに表示されることが米国の輸入食品の販売を不利にするとして、防カビ剤などの食品添加物としての審査をやめるよう要求され、すでに、2013年12月に日本が米国の要求に対応したと米国側文書に記されていたが、日本側は誤報とし、米国も「訂正する」としたが、案の定、付属文書において、並行交渉の結果として、衛生植物検疫(SPS)関連で、「両国政府は、収穫前及び収穫後に使用される防かび剤、食品添加物並びにゼラチン及びコラーゲンに関する取組につき認識の一致をみた。」と記されている。やはり隠していただけであった。
つまり、輸入畜産物・穀物は、成長ホルモン、成長促進剤、GM、除草剤の残留、収穫後農薬などのリスクがあり、まさに、食に安さを追求することは命を削ることになりかねない。このような健康リスクを金額換算して上乗せすれば、実は、「表面的には安く見える海外産のほうが、総合的には、国産食品より高い」ことを認識すべきである。そこで、外食や加工品も含めて、食品の原産国表示を強化することが求められるが、表示に関連しては、「国産や特定の地域産を強調した表示をすることが、米国を科学的根拠なしに差別するものとしてISDSの提訴で脅される可能性もある。要するに、「米国企業に対する海外市場での一切の差別と不利を認めない」ことがTPPの大原則なのである。TTIP(米EUのFTA)でも米国はEUのパルメザンチーズなど地理的表示を問題視している。ところが、米国自身は食肉表示義務制度で原産地表示を義務付けている。さらに、これがカナダとメキシコとから不当差別としてWTO(世界貿易機関)に訴えられ、米国が敗訴する皮肉な事態になっている。つまり、そもそもTPPのみならず食料の原産地表示の困難性が増してきている事態は深刻である。
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