昨日の世田谷区に続いて、多摩市公契約条例について調査。多摩市は人口約15万人で昭和48年から入居が始まった多摩ニュータウンがある。高齢化が一気に進もうとしているなかで健幸まちづくりを進めている。自治基本条例、議会基本条例もすでに制定済み。
多摩市公契約条例制定までの経過
平成22(2010)年に阿部市長(現)が選挙公約として「公契約条例の制定」を掲げ初当選。市発注の工事・委託等に携わる労働者の賃金、労働条件の低下を防止することで、労働者の生活安定、ダンピング防止、良質なサービスの提供を目指した。
庁内では、副市長・関係課長・労働組合など7名で「公契約制度調査検討委員会」を設置し4回検討を重ねる。庁外においては事業者アンケートを実施するとともに「公契約制度に関する審査委員会」を、弁護士・労働側二人・経営者側二人で構成。パブリックコメントを実施後、平成23(2011)年12月21日条例案を可決した。
制定後、「公契約制度に関する審査委員会」は、労務報酬下限額の諮問や公契約条例に係る重要事項を検討する「公契約審議会」に移行。熟練労働者については設計労務単価の90%以上、委託・指定管理・熟練労働者以外の労働者については下限額を903円と定めた。その後、最低賃金が大幅に引き上げられる中で、現在は熟練労働者は設計労務単価の90%ととし、全体の労働者の80%とする、熟練労働者以外は1045円としている。
工事請負契約は予算の半分を目安として5000万円、業務委託契約では1000万円以上、公の施設の指定管理を対象としている。
受注者は労務台帳の整備、立入検査や報告など、関係者への調査に協力することが義務付けられている。条約違反については契約を解除し公表、市は損害賠償または違約金の支払いを命じることができる。
多摩市公契約条例の特徴は、労働者の中には、1人親方も含まれること、60歳以上の労働者は除外、指定管理や委託契約においては労働者の継続雇用について努める、労務台帳に賃金は記載せず設計労務単価の90%以上の支払いをしている旨の記載、公契約条例のほか総合評価落札方式で地元業者に加点をするなどのダンピング防止措置をしている。
これまでの7年間の効果を確認するため事業者にアンケートを取ったところ、「離職率の低下」「ダンピング防止」につながっていると評価されている結果が出ている。
今後の課題として、労務台帳の改善、下限額の業種別設定、適用労働者の年齢、落札率、公契約条例の周知など。
・・・お話を聞いて、公契約条例により「離職率が低下」していることや、「ダンピング防止」につながっていることなどを周知していく必要性や、労務台帳の簡素化により事業者の負担を減らしていくことが大切だと感じた。