失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「Almost Blue」 Elvis Costello 1982年 EBTG 1988年

2005-08-29 | 
昨日、棚を整理してたら出てきた。オリジナル&カヴァー、前回に続き、第8回。

我ながら、コレを2枚とも8cmというのは渋い、と思う。もうひとつのカヴァーは、アルバムの一曲。

エルヴィス・コステロ。初期はパンク、パブロック、後にジャズ、カントリー、クラシックなどなど、時代とともに様々なスタイルの変遷があるように見えるが、よく聴くと一貫してポップ。ザッパほどではないものの、膨大なカタログ量でコレクターを悩ませるアーティストのひとりでもある。最近は過去のアルバムに、アルバム未収録曲あるいはデモやライブなどの未発表音源をボーナス・ディスクとして付けた(ボーナスの方が長かったりする!)再発シリーズ、何とかして欲しい。このボーナスに侮れない名曲があって、ホントに困りもの。かなりダブって買ってるし。

独特のコブシがまわるちょっとアクの強いヴォーカル・スタイルと、汲めども尽きぬ名曲量産のメロディー・メイカーぶりはデビュー(1977年)から衰えを知らない。

80年代、Robert Wyattの「Shipbuilding」(1982)という名曲をシングルで繰り返し聴いていた。ミュートをかけた謎の管楽器のようなワイアットの声に、この世のものとは思えない美しいメロディー。ヘビーな現実を歌っているのに、音の響きはあくまで甘美。この名曲を提供したのがコステロと知り、初めて買ったレコードが「Goodbye Cruel World」(1984)。コステロ本人がボロクソに貶しているが、私的には名盤。The Costello Show名義の「King Of America」(1986)は一番聴いたアルバムかも。冬のイメージのある大好きな一枚だ。
そして最近DVDでLIVE AID(1985)を見直して、一番カッコよかったのは、やはりこの人だった。まだ明るいうちにステージにふらっと現れ、「All You Need Is Love」をひどくぶっきらぼうにギター一本でキメ、終わったらさっさと退場していくコステロ、たまらん無頼っぷり。まだこの頃は痩せてたしね。

Elvis Costello Discography

で、今回のテーマ「Almost Blue」。ジャズ・テイスト溢れる、というよりコレ、ジャズ・スタンダードのカヴァーじゃないの?と言いたくなるタイムレスな傑作。コステロはカヴァー曲も素晴らしいものが多い(「I wanna be loved」とかね)ので混乱する。

本人盤(左上)は正方形ジャケットのドイツ盤。1989年のアルバム「Spike」からのシングル。全曲3分未満の小品を集めたコンピレーションだ。

①Baby Plays Around (MacManus and O'Riordan) 1989
何気ないけど、繰り返し聴くとジワジワくる名曲。
こんな昔からあるような曲を普通に書けちゃうところが実力者。

②Point Of No Return (Goffin and King) 1989
アルバム未収録曲。このコンピ唯一の明るめの曲。Goffin/King作、1962年のヒットのカヴァー。

③Almost Blue (Costello) 1982
ハイ、これがオリジナル。アルバム「imperial bedroom」に収録。これの直前の、カントリー・アルバムのタイトルが「Almost Blue」なんだけど、それにはAlmost blueという曲は入ってない、という確信犯的ややこしさ。

④My Funny Valentine (Rogers & Hart) 1979
この時点で既に10年前の録音。象ジャケットの「Armed Forces」収録。解説不要の大スタンダード・ナンバーを歌う。

輸入盤屋で1000円くらい。タイトルの文字はブルー・ノート・レーベルを意識したデザイン。ジャズ・シンガー、コステロのEPってことだな。


下、横長ジャケットがEverything But The GirlのCDミニアルバム。

①i always was your girl (thorn/watt) 名盤「idlewild」からのカット。
②hang out the flag (watt/thorn)
③home from home (thorn)
④almost blue (costello)

②~④はオリジナル・アルバム未収録。特に②③はこのシングルでしか聴けないようだ。結構いい出来なのにね。激レア、ってヤツか。
そして今回の主役④は、ライナーにわざわざ86年録音と記載されている。私はオリジナルより先にこっちを聴いて、何ちゅう名曲だ!とたまげた。もしかすると未だにコステロ盤より好きかも。トレイシー・ソーンの声ならどんな曲でもOK、というくらい大好きなヴォーカリストだが、これほどしっくりくる曲もないんじゃないか。シンプルで、ドラマチック。
この曲は後に、ちょっと渋い編集盤「essence and rare」に収録された。

Everything But The Girl Discography

定価1200円、定価で。


1989年には、ジャズ界のやんちゃペッター、Chet Bakerが「Let's Get Lost」(右上)で取り上げた。トランペッターのアルバムなのに、全12曲中11曲が歌モノ。57歳とは思えぬジャケの老人フェイスに度肝を抜かれるが、歌声はワイアットをヨレヨレにしたような、いい感じの枯れ具合。並み居るジャズ・スタンダードを差し置いて、この遺作のラストを飾るのが英国の若造が書いた曲、というのが泣かせる。きっとコステロも喜んだことだろう。
3人の中では一番不安定な歌声なんだけど、何だろう、この迫力!

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