ナカナカピエロ おきらくごくらく

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セミ

2011-07-14 01:50:52 | 日記
セミ

ついに鳴きだした。セミである。

昔は近くに林のようなところがあって、小さい頃は、よくセミを取った。そのほとんどがアブラゼミである。今でも近くで鳴いていれば、手で取れたりする。だから、私にとって羽根が透き通ったミンミンゼミなどは英雄であった。

林ではセミの抜け殻がたくさん取れた。一回だけ、朝早く犬の散歩をしている時、孵化するセミを見たことがある。中からは真っ白な体で出てきた。なんとも稀有な瞬間である。

それでは「屋上の幻想」から。。。ちょっと長いけど。。。

断末魔

ある日
俺の耳から
蝉が入ってきた

強引に耳穴を抉じ開け
俺の耳奥で
しばらく鳴き続けた後
断末魔をあげて
そっくり返り
お陀仏になった

それからしばらく
物忘れが激しくなった
何か思い出そうとしても
前頭側頭葉がやられているらしい
そんな感じで俺は
段々と俺を失い始め
ついには山奥の病院に
隔離されることとなった

俺は白い部屋に
入れられている
物音はしなかった
夜になっても
白い蛍光灯が照らし続け
部屋の隅に闇を作ることはなかった

そうやって十年が過ぎた
そしてその年の夏がやってきた
自分の異変がついにやってきたのだ
この十年間俺の脳味噌を食い荒らし
生を育んできた幼虫がついに孵化し
数百とも知れぬ蝉が
俺の頭の中で一斉に鳴きだした
そいつらは純粋な生に従って
それを全うすべく
俺の頭蓋骨を抉じ開け
脳味噌をぶちまけようとしているのだ

俺は強引に耳穴を抉じ開け
俺の耳奥で
鳴き続けている蝉を掻き出すべく
しばらく白い部屋でのた打ち回った後
断末魔をあげて
そっくり返り
お陀仏になった

壊れたテープレコーダのように
蝉の鳴き声が流れ続ける俺の頭を残して

..........................。

そんなことを考えながら
蝉がわんさか鳴き続ける
大きな木の下で
俺は汗を拭きながら
夏の日差しをしのぐ


後記
とりあえず会社に行けた。
サリンジャーの短編「バナナフィッシュにうってつけの日」の主人公のように人生を終わりにできたなら、と思う。
コメント
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