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正木和三22.12.18

記事引用

 

政木和三

 

◎ 世の中はシンプルである

 

 我々の人類社会の構成、宇宙の構成のすべてが単純な形をとっている。

 宇宙は質素に、そして大きなエネルギーの調和がとれている。

 真理は自然に存在するものであって、人間の造るものではない。

 人間社会には悩みが多い。

 真理を理解しない人間が多いためであろう。

 真理とは何か。

 真理を知るにはどうすればよいのだろうか?

 人間の生きるための真理、それは幼児にみることができる。

 幼児は自分に必要な物以外を求めることはない。

 大人は自分の必要な物の十倍、百倍を求めようとする。

 そしてそれが叶わぬとき、自分は不幸だ、私は寂しいとなげく。

 自分が必要以上に求めるとき、不満と不平がわいてくる。

 それは自分に必要のないものを欲するからである。

 一人の赤ちゃんが此の世に生まれ出るとき、天はその人が一生に必要なもの全てを与える約束をしている。

 この世に生まれた以上、その人の分相応に必要なものは、一生の間、自分について回ることになっている。

 それ以上を望むために、不満が出ることになる。

 宇宙には不満も不平もないはずである。

 星が不平を言ったことも聞かないし、風が不満をいうこともない。

 川も水も、ただ黙々と流れに従って遠い旅をしている。

 木の葉や草に住む虫も、ただせっせ、せっせと働いている。

 一向に不平らしいことも聞かない。

 なぜ人間だけが不平、不満を言うのか。

 愛情問題、食糧問題、対人関係と、他の動植物や自然現象にない問題を、人間だけにあると自負する考え方もあるが、それも所詮個人の必要以上の欲望に帰するものである。

 生まれたときは皆同じように丸裸であった。

 いまはその上に衣服をまとっている。

 そして食事ができる。

 そして生きている。

 それ以上の望みをもってどうなるだろう。

 年をとれば必ず死んでゆく。

 そのとき何を未来へ持って行けるのか。

 持ってゆくものは何一つとしてない。

 自分の肉体すらほったらかして行かねばならない。

 子供のために財を残したいと思う人もあるだろう。

 しかし、その子供はそれによってほんとうの幸福が得られるだろうか。

 子供にとって余分なものは迷惑となり、不幸となる。

 その子供にとっても、必要なものだけでよいのではないだろうか。

 今の世には、欲望の特に激しい人、そのために他人を不幸にしてまで財を築いた人がある。

 そのような人の子孫はどのようになったであろう。

 そのような自己の欲望のために、他人のものを横取りすることから、周辺に不平、不満が起きてくる。

 まずそのような人が、自己の持ち分を考えて、世の多くの人々に幸せを与えることによって均等となる。

 大会社の社長、それはその地位を利用して社員および大衆に幸福を分け与えなければならないという重責がある。

 地位を利用して、自己満足を得るための社長であってはならないはずである。

 世の中は複雑だという人がある。

 その人自身の心が単純でないからそのように思うだけである。

 単純な世の中を、その人達の集団がややこしくしているものである。

 会社においては、上司に対して心にもないオベンチャラをする。

 年末、年始や中元のつけとどけ等を義理でしている人が多い。

 ほんとうに世話になったお礼であれば、どれほどしてもよい。

 自分の気のすむように十分にすればよい。

 ただ習慣的に、お義理にしなければ上司から悪くされると困るからと、いやいやながら持ってゆくのもあるだろうし、中には恨みのこもった贈り物もあるだろう。

 また人間社会には裏があるから、心を殺してそれをやっておかぬと、自分が出世できないと思い込んでいる人がある。

 このように、ひねくれた、裏街道ばかりに目標をおいて出世した人々が、社会のリーダーとなったときこの世は複雑なものとなる。

 このようなことがまた次代にも伝わってゆく。

 コンピューターはゼロと一の数字しか理解できない。

 ゼロと一とは、ものが有るか、無いかだけの最も単純な考え方によって、人間が一年もかかるような計算を数秒間でやってしまう。

 これはコンピューターの構造がシンプルに造ってあるためである。

 だから、コンピューターは迷うことなく計算を遂行してゆく。

 人間の世界も、有か無かだけの二種類しかない。

 明るいところと暗いところの差は光があるかないかの違いであり、健康と病気、生と死、また会うも別れも、これらのすべてが有か無だけで説明できるものである。

 人間には、有か無しかないと思えば、考え方がシンプルとなる。

 その中間はあり得ないものだから考えなくてもよいことになる。

 このように考えれば、望んでも自分のものにすることのできないものは、自分には不必要なものと思えば欲望も消えてゆく。

 またいくら努力しても思いが達せられないことがあれば、それは自分には無関係のことであると思い、思い切ってしまうようにする。

 そして、自分の実行できることだけが、自分のすべきことであると思い、それに全力を注入すればよい。

 この世は、水の流れのように、なるようにしかなって行かないと思えば、悩みも迷いも消え去ってゆく。

なっとく

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