えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

吹けば飛ぶ

2009年12月08日 | 雑記
そのうす赤紫の線一本が、私に白い粉を吸わせるもととなったわけでした。
吸入器にブリスター―円盤型の銀紙にチョコレートを四つ押し込んでパッケージ
したような見かけの薬包―をセットし、蓋を押しあげてディスクに穴を貫通させます。
塩ビの笛ラムネの口をずっと広めにしたような吸入口を加えて一気に息を吸うと、
喉の奥をかすかに甘さを残して粉が通ってゆきました。

リレンザ(ザナミビル水和物ドライパウダーインヘラー)を日に二度吸うのが
今日からの日課になりました。期間は五日間。抗インフルエンザウイルス剤です。

職場の斜め後ろの席で一人発症し、家に帰れば弟が寝込んでいて、洗面所には
業務用アルコール消毒剤がどっしりと石鹸の代わりに鎮座しているのを見ると
これはもう覚悟を決めなければいけない気がしていたのですが、
今朝熱を測るとついに微熱が。
念のため検査―針金のような芯の先に綿のついた長い綿棒を鼻からつっこみ、
運が悪ければ鼻血が出る柔らかい粘膜に綿を当てて献体をとる―を受けて
しばし待機。フリースを着て部屋の温度は26度なのに身体はうそ寒く、脇から背中に
かけてじりじりと焦がすような寒気がしました。
検査の結果は5センチほどの細い紙切れで分かりました。
白地に気のせいかと思われる程度の、でも白地に比べると明らかにうっすらした
赤い線が浮き上がり、先生はひとこと「A型ですねー」といつも変わらぬ
明るい声でおっしゃると「Re」をパソコンに打ち込み、出てきた「Re」のつく
薬のリストから「リレンザ」を選んでEnterキーを押しました。

リレンザは吸入する粉薬で、一気に吸い込んでも噎せない細かい粒子が
円盤のチョコレートの一粒一粒にしまわれています。これに穴を開けて吸い込んで
から、吸入器の先端をひっぱり、半分ほど円盤が顔を出したところで元に戻すと
かちっというプラスチック同士のかみ合うあの音と共に円盤が時計回りに回転して
次の薬が所定の位置に装填されます。たまご型の吸入器はりっぱなリボルバー式なのです。
吸えているのかいないのかよくはわかりませんが、喉の奥のかすかな甘みにかけて
今日は休もうと思います。

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