ぐっすりと眠って電車を降りた。頭が重く鈍い頭痛が響いている。飲み過ごしたのは明らかだった。明るい店員がカウンターに勢いよく並べる一升瓶の豪華さに惑わされて、友人と「少しずつ」分け合ったはずなのだが、深く考えずとも個々人が飲んだ量はそれなりの量だった。眠りなおしたが筋肉痛のようにふくらはぎが痛む。
「経口補水液が効くんですよ」と閉じた瞼の裏で友人の言葉が目まぐるしく過ぎていく。身体を起こした頃には薬局は閉まっていたのであとの祭りだが、思えば理屈は正しそうで、喉が渇いているにも関わらず塩気が欲しかった。水やお茶は何度か飲んでいるが、一向に渇きは収まらない。
「いや、ぼくも以前は頭痛がひどかったんですけれどね」と、彼は薬屋のCMのように歯切れよく言った。「経口補水液が効くんですよ」「具合が悪い時に効くよね」「いや、ほんとうに効くんですよ。飲んだらすーっと頭痛が消えて行って」「おいしいの、それ」「具合が悪い時にはおいしいですよ」「具合が良くなるととたんにおいしくなくなるんだよね」「そうそう、わかりやすいですよね」
ひどい風邪をひいて毎日を経口補水液の世話になっていたころを思い出しながら杯を傾けて相槌をうったその時を、もう少しまじめに受け取っていればと現在、熱で温まりすぎた布団を蹴飛ばしながら経口補水液の味を思い出す。塩梅を間違えて塩が粉を吹いている梅干を口に入れ、水と麦茶で口の中を湿して身体をごまかしているが、関節のあちこちから経口補水液のリクエストがあがっているようにピシピシと音がする。
身体を起こしてテレビを茫洋と見つめながら、目の奥から響く痛みをやり過ごして眠れるかどうかは、明日の自分が知っている。
「経口補水液が効くんですよ」と閉じた瞼の裏で友人の言葉が目まぐるしく過ぎていく。身体を起こした頃には薬局は閉まっていたのであとの祭りだが、思えば理屈は正しそうで、喉が渇いているにも関わらず塩気が欲しかった。水やお茶は何度か飲んでいるが、一向に渇きは収まらない。
「いや、ぼくも以前は頭痛がひどかったんですけれどね」と、彼は薬屋のCMのように歯切れよく言った。「経口補水液が効くんですよ」「具合が悪い時に効くよね」「いや、ほんとうに効くんですよ。飲んだらすーっと頭痛が消えて行って」「おいしいの、それ」「具合が悪い時にはおいしいですよ」「具合が良くなるととたんにおいしくなくなるんだよね」「そうそう、わかりやすいですよね」
ひどい風邪をひいて毎日を経口補水液の世話になっていたころを思い出しながら杯を傾けて相槌をうったその時を、もう少しまじめに受け取っていればと現在、熱で温まりすぎた布団を蹴飛ばしながら経口補水液の味を思い出す。塩梅を間違えて塩が粉を吹いている梅干を口に入れ、水と麦茶で口の中を湿して身体をごまかしているが、関節のあちこちから経口補水液のリクエストがあがっているようにピシピシと音がする。
身体を起こしてテレビを茫洋と見つめながら、目の奥から響く痛みをやり過ごして眠れるかどうかは、明日の自分が知っている。
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