名邑十寸雄の手帖 Note of Namura Tokio

詩人・小説家、名邑十寸雄の推理小噺・怪談ジョーク・演繹推理論・映画評・文学論。「抱腹絶倒」と熱狂的な大反響。

∞ 文体論 【二次元 縦軸】

2017年05月13日 | 日記
 縦軸とは強弱の幅です。上下の様な感覚で、ff(フォルテシモ)は強烈に、pp(ピアニシモ)は再弱音という様に表現する。肝心なのは、最強表現の場面は極端に抑え、最弱表現は力強く想念が伝わる様に描く事。ここに矛盾はありません。この手法は、ウィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮法から学びました。あれ程の落差を出せる指揮者は、今後も出ないでしょう。物理的な音量の差では無い技巧です。殆ど不可能な「間」と「ずれ」を、見事に表現します。

 文学は、音楽とは異なります。が、文学でも「間」と「ずれ」が重要です。エピソードや語感の様な強弱ではなく、想念の強弱を描きます。言葉単体ではなく、言葉の矛盾、相反する概念の葛藤、綜合概念の上昇機構などが面白いでしょう。二重の円心構造よりも五重構造の方が強いのは当然です。これは漸増効果となり深い読後感となります。

 分かり易い例を上げましょう。天敵よりも、子供を守ろうとする母親の方が強い。悲しみよりも怒りの方が強い。執念よりも無心の方が強い。数え上げるときりが無いほど多様な強弱関係が存在します。

 先に述べたリズムと関連して、自然と複層効果が生じます。強い場面が早くなる訳でもなく、弱い場面が遅いとも限りません。空白の間を如何に使うかがポイントです。
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