クラシック音楽に関心のない人でも、学校で習ったか、どこかで聞いたことのある知名度の高い曲、それが「モルダウ(チェコ語ではヴルタヴァ)」。
スメタナの連作交響詩「我が祖国」の2番目の曲です。YouTubeで検索すれば、いくらでも演奏例が見つかるので曲のアップ省略
子供の頃この曲を初めて聞いて感動して以来、広大でダイナミックな流れを想像、曲の最後の部分は、下の写真のような光景だと思っていました。
チグリスとユーフラテスが合流したシャットゥルアラブ川がペルシャ湾に注ぐ前の下流です。
雄大ですね~~
そしてウィーンに住むようになってから4回ほどプラハへ行きました。
プラハも大変気に入り、細い裏通りなども歩き回りました。が、同時に音楽の「ヴルタヴァ」に違和感を感じるようになりました。
プラハは確かに素晴らしい芸術的な街ですが、言わば箱庭的な精巧さ、ヴルタヴァ川も箱庭の中を流れる川です。
こんな「小川」を、あんな壮大な曲にするのは誇大妄想じゃない?と思い始めて暫く曲が嫌いになりました。
しかし、その後、反省し始めたのです。スメタナが「我が祖国」を作曲した時代、19世紀後半のヨーロッパは各地で民族主義が台頭し、諸民族の入り組んだ中欧やバルカン半島で各民族の独立への機運が高まっていました。とりわけ皇帝という君主のもとに統合された「多民族の寄り合い所帯」であるオーストリア・ハンガリー帝国では、ハンガリーが王朝内での独立を認められた(アウスグライヒ)のに対し、独立を認められなかったチェコでは一層民族主義が高まったのです。
スメタナはヴルタヴァ川の水源からエルベ川(チェコ語でラベ川)に合流するまでの風景を熟知しており、それを民族主義的に情熱を込めて描写したのでしょう。
シャットゥルアラブ川下流のような光景を想像した私の方が誇大妄想だったのではないかと思います。
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