「おれは負けずぎらいなんでな!」
というような言葉を聴いて、
ふむ……と聞き流しました。
が、その後、ふと、負けずぎらいってなんだろう と
思ったのです。
負けるのが嫌いなら、負けぎらい。
これはわかります。
でも、『ず』を入れたら、負けないことが嫌いになるのでは?
こういうときに、適当な人間は、
『ず』は特に意味がないとか、
口当たりを整えたりするのに入ったのだ、とか
言い出すものでしょうが、言葉はそういいかげんなものではありません。
そこにその音が入るにはなにかしらの意味があるのです。
というところで思い出したのは、『きらい』のかたち。
「アレは人が見てないところで手を抜くきらいがあるよ」
『性質』・『くせ』・『かたより』をあらわす言葉です。
なまける性質、は『なまけきらい』。
なまけるのがきらいなのではありません。
「アレは争いには負けじとするきらいがあるよ」
で、人と争ったら、負けまいとする性質がある、
ということをあらわします。
短くいうと、
『負けじきらい』。
「あの子は負けじきらいがあるから」
といったように使います。
現代語の『負けず嫌い』は、
おそらく、『負けじきらい』(負けまいとする性質)が
揺らいだ形だろう、とわたしは考えます。