一昨日の朝から裸にさせられているのだけど、その日の夜に唯一着用を許されていたパンツを奪い取られてからは、ずっと真っ裸で一度も家に入れてもらえず、野外で恥ずかしい格好を晒し続けている。そして、今は軽トラックの荷台の上だ。
おちんちんを縛ったロープを両サイドのフックにかけられて、立て膝を付いたまま身動きができない。乗員席の見える窓を横切るバーに両手で掴まっていると、Y美とルコが振り返って窓を覗く。恥ずかしかった。おちんちんを見られ放題だった。おちんちんが振動でぷるぷると震えるたびに彼女たちが大笑いする。
もちろん手でおちんちんを隠すこともできるし、何度そうしようと思ったか分からないけども、下手に隠そうものならY美にこっぴどく叱られ、罰を受けるのは間違いない。Y美におちんちんを隠さないように言いつけられている以上、厳守しなければ僕自身があとでもっと酷い目に遭わされる。
恥ずかしさのあまりおちんちんを隠したくなる衝動は一時的なものだと頭で理解し、羞恥を堪えた。すでにルコには精液が出るところまで見られたし、おちんちんだけでなく袋からお尻の穴までさんざん弄ばれた。ましてやY美には毎日のように弄ばれているのだった。絶対見られたくないところまで既にしっかり見られ、いじられてしまっている。今更隠したところでどうにもならない、ともう一人の僕の嘆息した。
軽トラックは急ブレーキと急発進を繰り返した。努めて外の景色には目を向けないようにして顔を伏せたが、夕方の町は人と車で溢れていて、人々の好奇の視線が僕の剥き出しの肌に突き刺さるのを感じないではいられなかった。
交差点で信号待ちしている時だった。赤信号が恐ろしく長く感じられた。後ろで車のドアの閉まる音がして、若い大人の男女数人が荷台の僕の斜め前に来た。
「あ、男の子だ。残念」
「ほらね、おちんちんあるじゃん。私の勝ちだよ」
女の人が自慢げに力瘤を作った。この人たちは、信号待ちの間、荷台の僕が晒す裸の背中やお尻、汚れた足の裏などを見ながら、男か女か、賭けをしたらしい。
「小さいけど、確かに付いているな」
悔しそうに男の人が呟いた。どうやら僕が女の子であると思って勝負に出たらしい。性別を確かめたのなら、とっとと車に戻ればよいのに、彼らは立ち止まって、いつまでも僕のおちんちんを見ている。信号が青に変わり、軽トラックが動き出した。僕はほっとして腕の力を抜いた。ともすればおちんちんを隠してしまう腕に意識的に力を込めていたので、肩の辺りの筋肉に疲れを覚えた。とにかく、Y美の言い付けを守って、恥ずかしい思いに全身の血が頭に上るのを意識しながら、おちんちんを隠さなかったのだ。そのことをY美は振り返って窓から何度も確かめたから、僕の我慢に満足した笑顔を見せた。
それにしてもどこまで行くのだろうか。軽トラックは町の中心部に向かっていたようだが、途中から外れて山の方面に進んだ。交通量も歩道の人々も途端に少なくなる。不特定多数の人に素っ裸を晒す緊張から完全にではないが解放されつつあると思ったら、次には新たな不安で胸がいっぱいになる。どこへ連れて行かれるのか。軽トラックは相変わらずの乱暴な運転で街灯のまばらな幹線道路を走った。前には大きな黒い影となった山が聳えていた。
夕闇がたちこめて、軽トラックはライトを点灯させた。山の上に残るほのかな明るみの中を鳥の群れが過ぎた。山がぐんぐん近づいてきた。脇道の農道へ曲った。舗装されていない道でがたがたと揺れる。周囲には何もない平面な土地が広がり、木がまばらに生えていた。所々に小屋が見え、その横には畑があった。向かいから車のライトが見えた。軽トラックは速度を落とした。対向車も軽トラックだった。運転手のおじさんが窓をあけて、二三の言葉を交わした。
少しずつ速度を落としながら軽トラックが進み、畑の横で停まった。荷台から降ろされた僕は、おちんちんの根元に括りつけられたロープをナイフで切ってもらうことになった。Yがおぼつかない手つきでナイフの刃をおちんちんの袋とロープの間に入れる。「動かないで」と命じられてじっとしていると、ロープがはらりと僕の体から離れた。
安堵する間もなく、Y美やルコと一緒に箱詰めされたトマトを軽トラックに積む手伝いをさせられた。ルコが濡れた雑巾で僕の体をごしごしと拭いて、マジックで書かれた文字を消してくれた。洗剤の泡と一緒にマジックの汚れが僕の肌から流れた。積み荷が終わると、おじさんからもらった採りたてのトマトを齧った。トマトの汁が手首から肘を伝ってゆく。
「いいな、ナオス君は。丸裸だから服が汚れる心配しなくていいね」
と、シャツにトマトの汁を飛ばしてしまったルコが嫌みを言うと、Y美がくすくすと笑った。Y美だけは「私、トマト嫌いだから」と言っておじさんの好意を断った。立ったまま素っ裸でトマトを齧る僕を正面に見据える。今更ながらこうしてじろじろ見られると、恥ずかしくなってしまう。一人だけ素っ裸でいることが情けなくなった僕は片手でおちんちんを隠して、トマトにかぶり付く。すると、
「きちんと両手で持ちなよ、馬鹿」
と、Y美が叱る。ルコがY美に媚びるようにくすくす笑う。ルコはY美とつるむ女の子の中では、Y美に気に入られようとする努力が行為や言葉の端に感じられることが多い。その点では風紀委員と双壁を成した。Y美と全く対等に接するのはS子で、S子はY美よりも背が高いことが関係しているのかもしれない。僕が彼女たちに人格を軽んじられ、性的な好奇心を思いのままに満たす対象とされているのは、単純に僕が彼女たちと比べて圧倒的に背が低いからなのだと思う。中学一年生の女の子は、すぐに機嫌が悪くなったりして一見複雑だけど、根っこの部分は意外なほどシンプルなものだ。
食べ終わると、おじさんがもう一つのトマトを渡してくれた。それも両手でしっかり支えて口に運ぶ。夕暮れに広がるオレンジ色の光がだんだん薄くなる中で、Y美のぎらぎらした目だけが異様に際立っていた。
「それにしても二日間ずっと外にいただけあって、よく日焼けしたよね」
トマトを齧る僕の裸をじろじろ見回しながらY美が感動する。
「ほんとだね。日焼けの跡がないもん。背中からお尻にかけて同じ色で日焼けしてる。これって、ずっと丸裸でいた証拠だよね」
後ろにいたルコがそう応じながら、前に回ってY美の隣りに並んだ。僕はとっととトマトを食べ終えてこの場から離れたいのに、ようやく全部を口に入れたと思ったら、おじさんがにこにこしながら、更にもう一つのトマトを渡すのだった。
「おちんちんもお日様をいっぱい浴びたんだね。太腿と同じ色に焼けてるよ」
不意に腰を落としたY美が手を伸ばした。指でおちんちんをつまんで揺する。僕は腰を引いてしまったが、お尻を平手でぴしゃりと叩かれた。カラスの鳴き声が過ぎると、すぐに静寂が戻る。僕はトマトを口に含んだまま、押し寄せてきた性的な快楽に抗するべく精神集中して別のことを考えた。いじられたからと言ってみだりにおちんちんを大きくさせていたら、Y美やルコの嗜虐心を煽るだけだから、ここは頑張らなければならない。
無心でトマトを食べたが、性的な気持ちよさの高まりと並行するようにトマトを咀嚼するペースも速くなった。Y美は緩急をつけておちんちんを扱く。時々左右に振って遊びながらも、基本的には指の腹でおちんちんを固定し、腕全体を振動させている。トマトを口に運ぶ手が止まった。性的な快楽の波が腰の辺りまで伸びてきた。ここからは一気に胸元まで水位を上げてくる。思わず歯を食いしばった。
「おいおい、男の子がそんな簡単におちんちんを大きくさせられたら駄目じゃないか」
おじさんの呆れる声が聞こえた。ルコが短い笑い声を断続的に上げて喜んでいる。勃起は抑えられなかった。もはや精液を放出しなければ収まらないくらいの大きさになって、亀頭がオレンジの残光を照り返していた。と、Y美が手を離して立ち上がった。
「やめてよ。精液が指に付いたじゃない」
糸を引く液が親指と人差し指を繋いでいた。その指がいきなり僕の口に突っ込まれる。僕はY美の指をきれいに舐めた。
勃起させられたおちんちんが生暖かい空気に包まれて、僕が腰を揺する度にぴくんぴくんと動く。もう日は落ちかけたのに、辺りの蒸した空気は日中とさして変わらなかった。足の裏で感じる地熱だけが急激に落ちてゆく。
「せっかくだから、いかせてあげる?」
恥ずかしさと情けなさで泣きたい気分の僕の顔と硬くなったおちんちんを交互に見比べながら、ルコが訊ねた。
「ね、いきたいよね。私たちの前でまた精液を出したいんでしょ」
ルコが冷たい指を大きくさせられたおちんちんに絡ませてきた。
「駄目。簡単に気持ちよくなんかさせない」
かぶりを振ったY美が僕の顎に手を入れて、俯き加減の顔を上げさせた。齧りかけのトマトから汁が滴って、僕の足の指に落ちる。Y美が残りのトマトを僕の口に押し込む。
「これがお前の夕食になるんだから、しっかり食べなさいよ」
結局、僕は大きなトマトを四つ、食べさせられた。
軽トラックに乗り込んだY美が窓から首を出した。真ん中の席にはルコがいて、運転席のおじさんと何か話している。もうすぐ出発するのかもしれない。軽トラックの横で茫然と立っている僕に、Y美が言った。
「お前は、これから家まで歩いて帰るんだよ。12キロくらいの距離だけど、人通りの少ない田舎道だから、素っ裸でも朝までには家に着くと思うよ。無事に家に着いたら、家の中に入れてあげるから頑張って」
信じられない思いでY美の顔を見る。ここから歩いて帰るなんて途方もない。この農道はともかく、家までには幹線道路沿いを歩かなくてはならない。繁華街も抜けることになる。繁華街を避けて人通りの少ない道を選べば大回りになって、距離も12キロでは済まない。ずっと裸で日を浴びてきた身は疲れていて、長い距離を歩くのは辛いものがあった。
「ねえ、聞いてるの?」
「はい」
「これはゲームだからね。誰かに話しかけられても、みだりに自分の名前を言ったら駄目だよ。私のお母さんがお前の面倒を見てるんだから、お母さんに迷惑がかかる真似をしたら、どうなるか分かってるよね。なんで裸で歩いてるのかと訊かれたら裸で歩くのが好きだからと答えなさいよ。分かってるの?」
「え、でも、そんな、ちょっと」
「世話好きな人がお前に衣類を貸してくれても受け取ったら駄目だよ。家に着くまではずっと真っ裸でいること。分かってる?」
「え、そんな」
軽トラックのエンジンが鳴り響いた。僕はY美に最後のお願いをした。
「お願いだから僕を置いて行かないで。こんなところから歩いて帰るなんて、できません。荷台でもいいですから、乗せてください」
必死の願いもY美に一笑に付された。その隣りではルコが欠伸をしている。運転手のおじさんは早く出発したいようで、僕に不機嫌な視線を向けた。僕は、窓から手を放した。
「くれぐれも警察に保護されないようにね。警察にだけは見つかったらアウトだよ。ゲームの健闘を祈ってるから」
それだけ言うと、Y美はおじさんにぺこりと頭を下げた。軽トラックは急発進して、来た道を引き返した。エンジン音が遠ざかっても赤いテールランプだけはどこまでも心細く小さく光っていたが、やがて消えた。
いつまでも途方に暮れている訳にはいかない。僕は農道を歩き始めた。舗装されていない道ながらよく均されていて時折石ころが転がっている程度だから、足の裏もそれほど痛くはなかった。薄闇の中を一人で歩くのは心細かった。もし僕が服を着て靴を履いていてもこの不安は完全に払拭できないだろう。そんな道を素っ裸で黙々と歩いている。周囲には人の気配が全くなかった。
丈高い草の密集している一帯を通り過ぎる。密集する草は完全な暗闇に包まれていて、怖くて見ることができなかった。見つめると、そのまま闇に吸われてしまう気がする。真っ裸だからこのまま自然に還ってしまう恐怖が増大したのかもしれなかった。死の恐怖は肉体の痛みとか変化によってではなく、裸でいることの感覚から覚えることもある。闇の気配が全身の肌を直接包み込んでくる。もう少ししたら逆に安らぎを覚えるのかもしれないが、そこまで耐える自信はなかった。祈るような気持ちで足早にそこを通り過ぎた。
大きな水溜りを避けると道の脇の草に足を踏み入れることになる。そこには蛇が潜んでいる気がして、水溜りの中をじゃぶじゃぶ歩いた。踝までの深さで水溜りの底は泥でぬめぬめして気持ちが悪い。水溜りに街灯の淡い光が反射していた。舗装された車道は、もうすぐだった。
舗装された車道には、通行量がさしてないにもかかわらず一定の間隔で街灯があった。土地の政治家が町内の主要な車道全てに街灯を設置しようと働きかけた時、おば様が間に入って相当な額を儲けたという話をY美がS子に語っていた。ほんとか嘘かは分からない。とにかく、オレンジの光に照らされて一直線の平坦な道を歩く。暗い農道を歩いている時は両手を自由にしていたが、ここではそうはいかない。おちんちんを手で隠して、車が通らないか耳を澄ませながら歩いた。いずれは幹線道路につながる筈だった。
歩行のペースが速くなった。やはり未舗装の道と違って歩きやすい。全裸裸足の身にとっては、未舗装と舗装の違いは天と地ほどにも大きい。舗装路では人や車に遭遇する可能性がぐっと高まる半面、歩行のペースを未舗装のでこぼこ道の時とは段違いに上げることができる。僕はそのメリットを存分に享受するべく、軽く走った。
車が通る度に柵を跨いで草の中にしゃがみ込んだり、木の後ろに回ったりした。やがて右手に人家が見えてきた。片道二車線の幅広な幹線道路に突き当たる手前に、信号のない交差点があった。軽トラックに乗せられた時は通った幹線道路だけど、歩いて行くのはためらわれた。車がひっきりなしに通っている。立派な歩道が整備されているので、もしも僕が普通に服をまとっていれば迷うことなくこの道を選び、その上お金があればバスにも乗るだろうけれど、素っ裸で何も持たない身なので、幹線道路の手前にある、人家の並ぶ暗い裏道に素足を踏み入れることにした。
暗いといっても農道ほどではない。街灯が先の車道よりも広い間隔でぼろぼろのアスファルト道を照らし、すぐ右手には人家がひしめいていた。夕飯を終えてテレビの前でくつろいでいる時間帯だったが、人家はどれも不気味なくらいひっそりとして、明かりも少なかった。それは逆に、いつ人が道路に躍り出てくるか分からない緊張を伝えるのだった。
未舗装の、全く人の気配がない農道が懐かしくなった。あの道を抜けてからは、闇に吸われる死の感じから解放された代わりに、街灯の光に照らされた緊張、僕が全裸という極めて不利な条件で生存していることを証明する緊張がずっと続くのだった。その上、走ったので息が乱れに乱れ、喉がからからに乾いた。
木や草の生い茂る暗がりの奥に小公園があった。公園内に一つだけある街灯は、忌々しいことに僕が用のある水飲み場だけを煌々と照らしていた。蛇口を捻ると、ごほごぼと音を立てて水が出てきた。両手ですくって喉を潤す。と、砂を踏む音がした。滑り台の横の小さな人影が近づいてきた。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
女の子だった。両手に溜めた水に口を付けている僕の体を、頭から足先まで、びっくりしたような顔をして眺め回している。僕は急いでおちんちんに手を当てた。掬った水が排出口のコンクリートにばしゃりと掛かった。「喉が渇いたから水を飲んでるの」と答えても、女の子は身じろぎもせず、僕を見つめ続けた。
「なんで裸なの?」
これこそが自分の一番訊きたいことなのだと言うように、女の子の目が一際大きく開かれた。僕はなんと返事をしてよいか分からず、手でしっかりおちんちんを隠したまま後ずさった。と、女の子が僕にまた一歩近づいた。「遊んでいたら服を失くしたの」と、女の子の好奇心がこれ以上膨らまないよう祈りつつ返した。
「ふうん、裸で遊んでたの?」
全然信じていないようだった。僕をあやしむ目つきで眺め回し、無邪気に問いを重ねる。女の子は小学一年生くらいで、白い半袖のシャツにジーンズの半ズボンという男の子のような格好だった。
「悪い友達に服を取られてしまったの」
「いじめられてたの?」
「うん、まあ」
「それで、裸のままおうちまで帰るの?」
「う、うん。困ってるの」
もしかすると、衣類をどこからか持ってきてくれるかもしれないという淡い期待を抱いた僕は、女の子の僕をあやしむ目つきが少し和らいだのを見逃さず、同情を誘うように殊更に困った素振りをして見せた。実際に困っていたのだから、素振りに不自然さはなかったと思う。
「でもお兄ちゃん、裸といってもパンツは穿いてるんでしょ」
「え? その、穿いてないけど」
突然妙なことを言い出す女の子にうろたえながら答える。女の子は僕が一糸もまとっていないのに信じないで、僕の後ろに回った。急いで身をよじったけども、女の子の小さな手でお尻を叩かれてしまった。
「ほんとだ。お尻丸出しだね。でも、前は布で隠してたでしょ」
何を根拠にそんなことを言い出すのか不明だった。しかし、女の子は、幾ら僕が隠してないと言い張っても、一向に納得しないのだった。
「じゃ、見せてよ」
「え?」
「ほんとに隠してないかどうか、見て確かめる」
「やだよ。恥ずかしいもん」
「ずっと裸で歩いてたくせに、何で恥ずかしいのよ」
木の枝で僕の手を叩き、水飲み場の前まで僕を引っ張る。女の子は、僕が正真正銘の素っ裸であることを自分の目でしっかり確認するまでは、手助けができないと言った。女の子の家は公園に隣接していて、庭から公園に出入りできるから、すぐに衣類を持ってくることが可能らしい。
「早く見せてよ」
ビシッと木の枝で手の甲を叩かれた僕は、観念して手の力を抜いた。女の人を怒らせるとどれだけ恐ろしいかは骨の髄まで知っていた。例え小学一年生でも変わりはない。僕は、これ以上女の子の機嫌が悪くならないように努めなければならなかった。
女の子が僕の手をどかせた。木の枝でおちんちんの袋、それからおちんちんを揺らす。
「お兄ちゃんが丸裸なのは初めから知ってたもんね。水を飲んでる時、おちんちん、丸出しだったもん。もっと近くで見たかったの。ねえ、ちゃんと気をつけをしてよ。学校で並ぶ時みたいに。男の子の体をもっと見せて」
まるで嫌いな子のおもちゃで遊ぶかのような乱暴な手つきだった。おちんちんの皮を摘まんで地面に向けて引っ張る。痛みを訴えるが、気をつけの姿勢を取らない限り、女の子はやめないと言った。僕は言われた通りにした。すると、女の子はおちんちんの皮から指を放し、おちんちんの根元を親指と人差し指で支えた。
何人もの人におちんちんをいじられながら、今日はまだ一度も射精をしていなかった。そんなこともあって、おちんちんは感じやすくなっていた。ついさっきもY美に扱かれたけど、勃起させられただけで精液を出すまでには至らなかった。今は小さな女の子が興味本位でおちんちんをつまんでは、ためつすがめつ眺めている。女の子の吐く息がかかるのも感じられるほど、顔がおちんちんの間近にあった。
「ねえ、何か硬くなってきたよ。大きくなってきたよ」
無邪気に驚きの声を上げる女の子の前で、僕は顔から火が出るほどの羞恥に身をくねらせた。女の子が指の疲れを覚えておちんちんを持ち替える度に新たな刺激を加えられる。言い付けられた気をつけの姿勢を崩すことができないのは、女の人の命令を守らなければならないとしか考えられなくなっている僕の精神的な傾向に問題があるとして、恥ずかしいのはその姿勢のまま、おちんちん大きくさせてしまったことだった。
昂進する快楽にじっと耐える。いつまで我慢できるか分からないけど、こんな小さな女の子の前で精液を出してしまうのだけは回避しなければならないと思った。ふと下を見ると、女の子の目に涙がいっぱい溜まっていた。おちんちんから手を放して立ち上がる。両膝ががくがくと震えていた。
「やだ。こんなの、気持ち悪い」
勃起してしまい、下腹部にぴったりとくっ付いたおちんちんからさっと目を逸らして、女の子が叫んだ。その声を聞いて、若い男の人が公園に駆け込んできた。
「お兄さん、怖い」
「家に戻りなさい。こんな遅い時間に何してんだ」
がっしりした体格の若い男の人が女の子を叱って、抱き抱えると、僕から離れた場所に女の子を連れて行って、女の子から話を聞いた。お兄さんは、女の子の言うことを神妙な顔つきで聞き、頷く。女の子を公園に繋がる庭から家に戻すと、大股で僕に近づいた。
「お前、うちの妹に何したんだよ」
街灯の光にお兄さんの怒りの相が浮かび上がった。僕はおちんちんを手で隠したが、大きくなっていることはお兄さんにばれているようだった。いきなりお兄さんの膝が僕の脇腹に入った。お兄さんの肘が背中に振り降ろされ、たちまち黒い土の上に倒されてしまった。続いてお尻や背中、腹を蹴られた。執拗な暴行は僕に弁解の余地を与えてくれなかった。呻き声を漏らしつつ許しを乞う。が、お兄さんは聞く耳を持たないとばかり、一気に爆発させた怒りの感情の赴くままに僕を蹴り、殴った。
地面にくの字になって横たわる僕にお兄さんが質問を浴びせた。僕が変質者で妹に性的ないたずらをしたものと思っていたらしい。あの小さな女の子がそのように話したのであれば、随分と酷い嘘だと思った。尤もおちんちんを勃起させた素っ裸では、疑われても仕方なかった。事情を説明すると、お兄さんは隅から隅まで信じたとは思えなかったが、少なくとも妹に精神的な外傷を与えるような仕打ちを意図したものではないことだけは信じてくれたようだった。
体に付着した土や砂をはたいて僕を立ち上がらせたお兄さんは、庭から自転車を持ち出して、僕を送ると言い出した。有無を言わせない口調だった。女の人が買い物に使用するような、重心の低い自転車の荷台に跨いでお尻を下ろすと、ペダルを漕ぎ始めた。
軽快に走り出した自転車は、しかし僕の感覚とは異なる方向に向かった。念のために行き先をもう一度告げても「いいから黙ってろ」としか返さない。それが僕の目的地への近道であれば良い。しかし、この辺の地理に詳しくないのであまり自信はないけど、どうも逆方向の気がしてならなかった。不安に駆られる僕を無視して自転車はぐんぐんと速度を上げ、もはや飛び降りることは叶わなくなった。
自転車は次第に町の中心部に近づき、ついには繁華街に差しかかった。繁華街は、夜の八時を過ぎた頃で非常な賑わいを呈していた。お兄さんは繁華街では「人が多くて危ないから」という理由で自転車を引いて歩いた。
よく警察に呼び止められなかったと思う。酔っ払いやコンパ帰りの学生の群れに何度も取り囲まれた。その度に僕がなぜ素っ裸なのか問われたが、お兄さんは、僕があるトラブルに巻き込まれて身に着けていた物を一切無くしてしまったから自分が親切心から送り届けているのだと、語った。皆が皆、お兄さんの親切心を褒めた。その間、僕はお尻を撫でられたり背中を叩かれたり、荷台の隙間に隠していたおちんちんを覗かれたりした。
学生の集団に自転車から降ろされたこともあった。両手を高く上げさせられた僕の体を酔っ払った女の人たちがぺたぺたと触った。
自転車の荷台の上で素っ裸の身を硬くして、不特定多数の人の好奇の視線にさらされる恥ずかしさに耐える僕にとって、お兄さんの自転車を引く速度はかたつむり並みに遅かったし、繁華街は絶望的に長かった。
繁華街を抜けると再び自転車が走り出した。目的地からは遠のくばかりだった。
おちんちんを縛ったロープを両サイドのフックにかけられて、立て膝を付いたまま身動きができない。乗員席の見える窓を横切るバーに両手で掴まっていると、Y美とルコが振り返って窓を覗く。恥ずかしかった。おちんちんを見られ放題だった。おちんちんが振動でぷるぷると震えるたびに彼女たちが大笑いする。
もちろん手でおちんちんを隠すこともできるし、何度そうしようと思ったか分からないけども、下手に隠そうものならY美にこっぴどく叱られ、罰を受けるのは間違いない。Y美におちんちんを隠さないように言いつけられている以上、厳守しなければ僕自身があとでもっと酷い目に遭わされる。
恥ずかしさのあまりおちんちんを隠したくなる衝動は一時的なものだと頭で理解し、羞恥を堪えた。すでにルコには精液が出るところまで見られたし、おちんちんだけでなく袋からお尻の穴までさんざん弄ばれた。ましてやY美には毎日のように弄ばれているのだった。絶対見られたくないところまで既にしっかり見られ、いじられてしまっている。今更隠したところでどうにもならない、ともう一人の僕の嘆息した。
軽トラックは急ブレーキと急発進を繰り返した。努めて外の景色には目を向けないようにして顔を伏せたが、夕方の町は人と車で溢れていて、人々の好奇の視線が僕の剥き出しの肌に突き刺さるのを感じないではいられなかった。
交差点で信号待ちしている時だった。赤信号が恐ろしく長く感じられた。後ろで車のドアの閉まる音がして、若い大人の男女数人が荷台の僕の斜め前に来た。
「あ、男の子だ。残念」
「ほらね、おちんちんあるじゃん。私の勝ちだよ」
女の人が自慢げに力瘤を作った。この人たちは、信号待ちの間、荷台の僕が晒す裸の背中やお尻、汚れた足の裏などを見ながら、男か女か、賭けをしたらしい。
「小さいけど、確かに付いているな」
悔しそうに男の人が呟いた。どうやら僕が女の子であると思って勝負に出たらしい。性別を確かめたのなら、とっとと車に戻ればよいのに、彼らは立ち止まって、いつまでも僕のおちんちんを見ている。信号が青に変わり、軽トラックが動き出した。僕はほっとして腕の力を抜いた。ともすればおちんちんを隠してしまう腕に意識的に力を込めていたので、肩の辺りの筋肉に疲れを覚えた。とにかく、Y美の言い付けを守って、恥ずかしい思いに全身の血が頭に上るのを意識しながら、おちんちんを隠さなかったのだ。そのことをY美は振り返って窓から何度も確かめたから、僕の我慢に満足した笑顔を見せた。
それにしてもどこまで行くのだろうか。軽トラックは町の中心部に向かっていたようだが、途中から外れて山の方面に進んだ。交通量も歩道の人々も途端に少なくなる。不特定多数の人に素っ裸を晒す緊張から完全にではないが解放されつつあると思ったら、次には新たな不安で胸がいっぱいになる。どこへ連れて行かれるのか。軽トラックは相変わらずの乱暴な運転で街灯のまばらな幹線道路を走った。前には大きな黒い影となった山が聳えていた。
夕闇がたちこめて、軽トラックはライトを点灯させた。山の上に残るほのかな明るみの中を鳥の群れが過ぎた。山がぐんぐん近づいてきた。脇道の農道へ曲った。舗装されていない道でがたがたと揺れる。周囲には何もない平面な土地が広がり、木がまばらに生えていた。所々に小屋が見え、その横には畑があった。向かいから車のライトが見えた。軽トラックは速度を落とした。対向車も軽トラックだった。運転手のおじさんが窓をあけて、二三の言葉を交わした。
少しずつ速度を落としながら軽トラックが進み、畑の横で停まった。荷台から降ろされた僕は、おちんちんの根元に括りつけられたロープをナイフで切ってもらうことになった。Yがおぼつかない手つきでナイフの刃をおちんちんの袋とロープの間に入れる。「動かないで」と命じられてじっとしていると、ロープがはらりと僕の体から離れた。
安堵する間もなく、Y美やルコと一緒に箱詰めされたトマトを軽トラックに積む手伝いをさせられた。ルコが濡れた雑巾で僕の体をごしごしと拭いて、マジックで書かれた文字を消してくれた。洗剤の泡と一緒にマジックの汚れが僕の肌から流れた。積み荷が終わると、おじさんからもらった採りたてのトマトを齧った。トマトの汁が手首から肘を伝ってゆく。
「いいな、ナオス君は。丸裸だから服が汚れる心配しなくていいね」
と、シャツにトマトの汁を飛ばしてしまったルコが嫌みを言うと、Y美がくすくすと笑った。Y美だけは「私、トマト嫌いだから」と言っておじさんの好意を断った。立ったまま素っ裸でトマトを齧る僕を正面に見据える。今更ながらこうしてじろじろ見られると、恥ずかしくなってしまう。一人だけ素っ裸でいることが情けなくなった僕は片手でおちんちんを隠して、トマトにかぶり付く。すると、
「きちんと両手で持ちなよ、馬鹿」
と、Y美が叱る。ルコがY美に媚びるようにくすくす笑う。ルコはY美とつるむ女の子の中では、Y美に気に入られようとする努力が行為や言葉の端に感じられることが多い。その点では風紀委員と双壁を成した。Y美と全く対等に接するのはS子で、S子はY美よりも背が高いことが関係しているのかもしれない。僕が彼女たちに人格を軽んじられ、性的な好奇心を思いのままに満たす対象とされているのは、単純に僕が彼女たちと比べて圧倒的に背が低いからなのだと思う。中学一年生の女の子は、すぐに機嫌が悪くなったりして一見複雑だけど、根っこの部分は意外なほどシンプルなものだ。
食べ終わると、おじさんがもう一つのトマトを渡してくれた。それも両手でしっかり支えて口に運ぶ。夕暮れに広がるオレンジ色の光がだんだん薄くなる中で、Y美のぎらぎらした目だけが異様に際立っていた。
「それにしても二日間ずっと外にいただけあって、よく日焼けしたよね」
トマトを齧る僕の裸をじろじろ見回しながらY美が感動する。
「ほんとだね。日焼けの跡がないもん。背中からお尻にかけて同じ色で日焼けしてる。これって、ずっと丸裸でいた証拠だよね」
後ろにいたルコがそう応じながら、前に回ってY美の隣りに並んだ。僕はとっととトマトを食べ終えてこの場から離れたいのに、ようやく全部を口に入れたと思ったら、おじさんがにこにこしながら、更にもう一つのトマトを渡すのだった。
「おちんちんもお日様をいっぱい浴びたんだね。太腿と同じ色に焼けてるよ」
不意に腰を落としたY美が手を伸ばした。指でおちんちんをつまんで揺する。僕は腰を引いてしまったが、お尻を平手でぴしゃりと叩かれた。カラスの鳴き声が過ぎると、すぐに静寂が戻る。僕はトマトを口に含んだまま、押し寄せてきた性的な快楽に抗するべく精神集中して別のことを考えた。いじられたからと言ってみだりにおちんちんを大きくさせていたら、Y美やルコの嗜虐心を煽るだけだから、ここは頑張らなければならない。
無心でトマトを食べたが、性的な気持ちよさの高まりと並行するようにトマトを咀嚼するペースも速くなった。Y美は緩急をつけておちんちんを扱く。時々左右に振って遊びながらも、基本的には指の腹でおちんちんを固定し、腕全体を振動させている。トマトを口に運ぶ手が止まった。性的な快楽の波が腰の辺りまで伸びてきた。ここからは一気に胸元まで水位を上げてくる。思わず歯を食いしばった。
「おいおい、男の子がそんな簡単におちんちんを大きくさせられたら駄目じゃないか」
おじさんの呆れる声が聞こえた。ルコが短い笑い声を断続的に上げて喜んでいる。勃起は抑えられなかった。もはや精液を放出しなければ収まらないくらいの大きさになって、亀頭がオレンジの残光を照り返していた。と、Y美が手を離して立ち上がった。
「やめてよ。精液が指に付いたじゃない」
糸を引く液が親指と人差し指を繋いでいた。その指がいきなり僕の口に突っ込まれる。僕はY美の指をきれいに舐めた。
勃起させられたおちんちんが生暖かい空気に包まれて、僕が腰を揺する度にぴくんぴくんと動く。もう日は落ちかけたのに、辺りの蒸した空気は日中とさして変わらなかった。足の裏で感じる地熱だけが急激に落ちてゆく。
「せっかくだから、いかせてあげる?」
恥ずかしさと情けなさで泣きたい気分の僕の顔と硬くなったおちんちんを交互に見比べながら、ルコが訊ねた。
「ね、いきたいよね。私たちの前でまた精液を出したいんでしょ」
ルコが冷たい指を大きくさせられたおちんちんに絡ませてきた。
「駄目。簡単に気持ちよくなんかさせない」
かぶりを振ったY美が僕の顎に手を入れて、俯き加減の顔を上げさせた。齧りかけのトマトから汁が滴って、僕の足の指に落ちる。Y美が残りのトマトを僕の口に押し込む。
「これがお前の夕食になるんだから、しっかり食べなさいよ」
結局、僕は大きなトマトを四つ、食べさせられた。
軽トラックに乗り込んだY美が窓から首を出した。真ん中の席にはルコがいて、運転席のおじさんと何か話している。もうすぐ出発するのかもしれない。軽トラックの横で茫然と立っている僕に、Y美が言った。
「お前は、これから家まで歩いて帰るんだよ。12キロくらいの距離だけど、人通りの少ない田舎道だから、素っ裸でも朝までには家に着くと思うよ。無事に家に着いたら、家の中に入れてあげるから頑張って」
信じられない思いでY美の顔を見る。ここから歩いて帰るなんて途方もない。この農道はともかく、家までには幹線道路沿いを歩かなくてはならない。繁華街も抜けることになる。繁華街を避けて人通りの少ない道を選べば大回りになって、距離も12キロでは済まない。ずっと裸で日を浴びてきた身は疲れていて、長い距離を歩くのは辛いものがあった。
「ねえ、聞いてるの?」
「はい」
「これはゲームだからね。誰かに話しかけられても、みだりに自分の名前を言ったら駄目だよ。私のお母さんがお前の面倒を見てるんだから、お母さんに迷惑がかかる真似をしたら、どうなるか分かってるよね。なんで裸で歩いてるのかと訊かれたら裸で歩くのが好きだからと答えなさいよ。分かってるの?」
「え、でも、そんな、ちょっと」
「世話好きな人がお前に衣類を貸してくれても受け取ったら駄目だよ。家に着くまではずっと真っ裸でいること。分かってる?」
「え、そんな」
軽トラックのエンジンが鳴り響いた。僕はY美に最後のお願いをした。
「お願いだから僕を置いて行かないで。こんなところから歩いて帰るなんて、できません。荷台でもいいですから、乗せてください」
必死の願いもY美に一笑に付された。その隣りではルコが欠伸をしている。運転手のおじさんは早く出発したいようで、僕に不機嫌な視線を向けた。僕は、窓から手を放した。
「くれぐれも警察に保護されないようにね。警察にだけは見つかったらアウトだよ。ゲームの健闘を祈ってるから」
それだけ言うと、Y美はおじさんにぺこりと頭を下げた。軽トラックは急発進して、来た道を引き返した。エンジン音が遠ざかっても赤いテールランプだけはどこまでも心細く小さく光っていたが、やがて消えた。
いつまでも途方に暮れている訳にはいかない。僕は農道を歩き始めた。舗装されていない道ながらよく均されていて時折石ころが転がっている程度だから、足の裏もそれほど痛くはなかった。薄闇の中を一人で歩くのは心細かった。もし僕が服を着て靴を履いていてもこの不安は完全に払拭できないだろう。そんな道を素っ裸で黙々と歩いている。周囲には人の気配が全くなかった。
丈高い草の密集している一帯を通り過ぎる。密集する草は完全な暗闇に包まれていて、怖くて見ることができなかった。見つめると、そのまま闇に吸われてしまう気がする。真っ裸だからこのまま自然に還ってしまう恐怖が増大したのかもしれなかった。死の恐怖は肉体の痛みとか変化によってではなく、裸でいることの感覚から覚えることもある。闇の気配が全身の肌を直接包み込んでくる。もう少ししたら逆に安らぎを覚えるのかもしれないが、そこまで耐える自信はなかった。祈るような気持ちで足早にそこを通り過ぎた。
大きな水溜りを避けると道の脇の草に足を踏み入れることになる。そこには蛇が潜んでいる気がして、水溜りの中をじゃぶじゃぶ歩いた。踝までの深さで水溜りの底は泥でぬめぬめして気持ちが悪い。水溜りに街灯の淡い光が反射していた。舗装された車道は、もうすぐだった。
舗装された車道には、通行量がさしてないにもかかわらず一定の間隔で街灯があった。土地の政治家が町内の主要な車道全てに街灯を設置しようと働きかけた時、おば様が間に入って相当な額を儲けたという話をY美がS子に語っていた。ほんとか嘘かは分からない。とにかく、オレンジの光に照らされて一直線の平坦な道を歩く。暗い農道を歩いている時は両手を自由にしていたが、ここではそうはいかない。おちんちんを手で隠して、車が通らないか耳を澄ませながら歩いた。いずれは幹線道路につながる筈だった。
歩行のペースが速くなった。やはり未舗装の道と違って歩きやすい。全裸裸足の身にとっては、未舗装と舗装の違いは天と地ほどにも大きい。舗装路では人や車に遭遇する可能性がぐっと高まる半面、歩行のペースを未舗装のでこぼこ道の時とは段違いに上げることができる。僕はそのメリットを存分に享受するべく、軽く走った。
車が通る度に柵を跨いで草の中にしゃがみ込んだり、木の後ろに回ったりした。やがて右手に人家が見えてきた。片道二車線の幅広な幹線道路に突き当たる手前に、信号のない交差点があった。軽トラックに乗せられた時は通った幹線道路だけど、歩いて行くのはためらわれた。車がひっきりなしに通っている。立派な歩道が整備されているので、もしも僕が普通に服をまとっていれば迷うことなくこの道を選び、その上お金があればバスにも乗るだろうけれど、素っ裸で何も持たない身なので、幹線道路の手前にある、人家の並ぶ暗い裏道に素足を踏み入れることにした。
暗いといっても農道ほどではない。街灯が先の車道よりも広い間隔でぼろぼろのアスファルト道を照らし、すぐ右手には人家がひしめいていた。夕飯を終えてテレビの前でくつろいでいる時間帯だったが、人家はどれも不気味なくらいひっそりとして、明かりも少なかった。それは逆に、いつ人が道路に躍り出てくるか分からない緊張を伝えるのだった。
未舗装の、全く人の気配がない農道が懐かしくなった。あの道を抜けてからは、闇に吸われる死の感じから解放された代わりに、街灯の光に照らされた緊張、僕が全裸という極めて不利な条件で生存していることを証明する緊張がずっと続くのだった。その上、走ったので息が乱れに乱れ、喉がからからに乾いた。
木や草の生い茂る暗がりの奥に小公園があった。公園内に一つだけある街灯は、忌々しいことに僕が用のある水飲み場だけを煌々と照らしていた。蛇口を捻ると、ごほごぼと音を立てて水が出てきた。両手ですくって喉を潤す。と、砂を踏む音がした。滑り台の横の小さな人影が近づいてきた。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
女の子だった。両手に溜めた水に口を付けている僕の体を、頭から足先まで、びっくりしたような顔をして眺め回している。僕は急いでおちんちんに手を当てた。掬った水が排出口のコンクリートにばしゃりと掛かった。「喉が渇いたから水を飲んでるの」と答えても、女の子は身じろぎもせず、僕を見つめ続けた。
「なんで裸なの?」
これこそが自分の一番訊きたいことなのだと言うように、女の子の目が一際大きく開かれた。僕はなんと返事をしてよいか分からず、手でしっかりおちんちんを隠したまま後ずさった。と、女の子が僕にまた一歩近づいた。「遊んでいたら服を失くしたの」と、女の子の好奇心がこれ以上膨らまないよう祈りつつ返した。
「ふうん、裸で遊んでたの?」
全然信じていないようだった。僕をあやしむ目つきで眺め回し、無邪気に問いを重ねる。女の子は小学一年生くらいで、白い半袖のシャツにジーンズの半ズボンという男の子のような格好だった。
「悪い友達に服を取られてしまったの」
「いじめられてたの?」
「うん、まあ」
「それで、裸のままおうちまで帰るの?」
「う、うん。困ってるの」
もしかすると、衣類をどこからか持ってきてくれるかもしれないという淡い期待を抱いた僕は、女の子の僕をあやしむ目つきが少し和らいだのを見逃さず、同情を誘うように殊更に困った素振りをして見せた。実際に困っていたのだから、素振りに不自然さはなかったと思う。
「でもお兄ちゃん、裸といってもパンツは穿いてるんでしょ」
「え? その、穿いてないけど」
突然妙なことを言い出す女の子にうろたえながら答える。女の子は僕が一糸もまとっていないのに信じないで、僕の後ろに回った。急いで身をよじったけども、女の子の小さな手でお尻を叩かれてしまった。
「ほんとだ。お尻丸出しだね。でも、前は布で隠してたでしょ」
何を根拠にそんなことを言い出すのか不明だった。しかし、女の子は、幾ら僕が隠してないと言い張っても、一向に納得しないのだった。
「じゃ、見せてよ」
「え?」
「ほんとに隠してないかどうか、見て確かめる」
「やだよ。恥ずかしいもん」
「ずっと裸で歩いてたくせに、何で恥ずかしいのよ」
木の枝で僕の手を叩き、水飲み場の前まで僕を引っ張る。女の子は、僕が正真正銘の素っ裸であることを自分の目でしっかり確認するまでは、手助けができないと言った。女の子の家は公園に隣接していて、庭から公園に出入りできるから、すぐに衣類を持ってくることが可能らしい。
「早く見せてよ」
ビシッと木の枝で手の甲を叩かれた僕は、観念して手の力を抜いた。女の人を怒らせるとどれだけ恐ろしいかは骨の髄まで知っていた。例え小学一年生でも変わりはない。僕は、これ以上女の子の機嫌が悪くならないように努めなければならなかった。
女の子が僕の手をどかせた。木の枝でおちんちんの袋、それからおちんちんを揺らす。
「お兄ちゃんが丸裸なのは初めから知ってたもんね。水を飲んでる時、おちんちん、丸出しだったもん。もっと近くで見たかったの。ねえ、ちゃんと気をつけをしてよ。学校で並ぶ時みたいに。男の子の体をもっと見せて」
まるで嫌いな子のおもちゃで遊ぶかのような乱暴な手つきだった。おちんちんの皮を摘まんで地面に向けて引っ張る。痛みを訴えるが、気をつけの姿勢を取らない限り、女の子はやめないと言った。僕は言われた通りにした。すると、女の子はおちんちんの皮から指を放し、おちんちんの根元を親指と人差し指で支えた。
何人もの人におちんちんをいじられながら、今日はまだ一度も射精をしていなかった。そんなこともあって、おちんちんは感じやすくなっていた。ついさっきもY美に扱かれたけど、勃起させられただけで精液を出すまでには至らなかった。今は小さな女の子が興味本位でおちんちんをつまんでは、ためつすがめつ眺めている。女の子の吐く息がかかるのも感じられるほど、顔がおちんちんの間近にあった。
「ねえ、何か硬くなってきたよ。大きくなってきたよ」
無邪気に驚きの声を上げる女の子の前で、僕は顔から火が出るほどの羞恥に身をくねらせた。女の子が指の疲れを覚えておちんちんを持ち替える度に新たな刺激を加えられる。言い付けられた気をつけの姿勢を崩すことができないのは、女の人の命令を守らなければならないとしか考えられなくなっている僕の精神的な傾向に問題があるとして、恥ずかしいのはその姿勢のまま、おちんちん大きくさせてしまったことだった。
昂進する快楽にじっと耐える。いつまで我慢できるか分からないけど、こんな小さな女の子の前で精液を出してしまうのだけは回避しなければならないと思った。ふと下を見ると、女の子の目に涙がいっぱい溜まっていた。おちんちんから手を放して立ち上がる。両膝ががくがくと震えていた。
「やだ。こんなの、気持ち悪い」
勃起してしまい、下腹部にぴったりとくっ付いたおちんちんからさっと目を逸らして、女の子が叫んだ。その声を聞いて、若い男の人が公園に駆け込んできた。
「お兄さん、怖い」
「家に戻りなさい。こんな遅い時間に何してんだ」
がっしりした体格の若い男の人が女の子を叱って、抱き抱えると、僕から離れた場所に女の子を連れて行って、女の子から話を聞いた。お兄さんは、女の子の言うことを神妙な顔つきで聞き、頷く。女の子を公園に繋がる庭から家に戻すと、大股で僕に近づいた。
「お前、うちの妹に何したんだよ」
街灯の光にお兄さんの怒りの相が浮かび上がった。僕はおちんちんを手で隠したが、大きくなっていることはお兄さんにばれているようだった。いきなりお兄さんの膝が僕の脇腹に入った。お兄さんの肘が背中に振り降ろされ、たちまち黒い土の上に倒されてしまった。続いてお尻や背中、腹を蹴られた。執拗な暴行は僕に弁解の余地を与えてくれなかった。呻き声を漏らしつつ許しを乞う。が、お兄さんは聞く耳を持たないとばかり、一気に爆発させた怒りの感情の赴くままに僕を蹴り、殴った。
地面にくの字になって横たわる僕にお兄さんが質問を浴びせた。僕が変質者で妹に性的ないたずらをしたものと思っていたらしい。あの小さな女の子がそのように話したのであれば、随分と酷い嘘だと思った。尤もおちんちんを勃起させた素っ裸では、疑われても仕方なかった。事情を説明すると、お兄さんは隅から隅まで信じたとは思えなかったが、少なくとも妹に精神的な外傷を与えるような仕打ちを意図したものではないことだけは信じてくれたようだった。
体に付着した土や砂をはたいて僕を立ち上がらせたお兄さんは、庭から自転車を持ち出して、僕を送ると言い出した。有無を言わせない口調だった。女の人が買い物に使用するような、重心の低い自転車の荷台に跨いでお尻を下ろすと、ペダルを漕ぎ始めた。
軽快に走り出した自転車は、しかし僕の感覚とは異なる方向に向かった。念のために行き先をもう一度告げても「いいから黙ってろ」としか返さない。それが僕の目的地への近道であれば良い。しかし、この辺の地理に詳しくないのであまり自信はないけど、どうも逆方向の気がしてならなかった。不安に駆られる僕を無視して自転車はぐんぐんと速度を上げ、もはや飛び降りることは叶わなくなった。
自転車は次第に町の中心部に近づき、ついには繁華街に差しかかった。繁華街は、夜の八時を過ぎた頃で非常な賑わいを呈していた。お兄さんは繁華街では「人が多くて危ないから」という理由で自転車を引いて歩いた。
よく警察に呼び止められなかったと思う。酔っ払いやコンパ帰りの学生の群れに何度も取り囲まれた。その度に僕がなぜ素っ裸なのか問われたが、お兄さんは、僕があるトラブルに巻き込まれて身に着けていた物を一切無くしてしまったから自分が親切心から送り届けているのだと、語った。皆が皆、お兄さんの親切心を褒めた。その間、僕はお尻を撫でられたり背中を叩かれたり、荷台の隙間に隠していたおちんちんを覗かれたりした。
学生の集団に自転車から降ろされたこともあった。両手を高く上げさせられた僕の体を酔っ払った女の人たちがぺたぺたと触った。
自転車の荷台の上で素っ裸の身を硬くして、不特定多数の人の好奇の視線にさらされる恥ずかしさに耐える僕にとって、お兄さんの自転車を引く速度はかたつむり並みに遅かったし、繁華街は絶望的に長かった。
繁華街を抜けると再び自転車が走り出した。目的地からは遠のくばかりだった。
全裸で遠くから自力で帰宅しなければならない。いいシチュですね!
希望としてはやはり女子高生の集団の中を歩かねばならなくなり、変態と言われてしまうなどがあってほしいです
なんか、ちょっと気になります。
また、来ますね^^
この後どこに連れていかれるのか、すごく気になります。
無理をされずにマイペースでお願いします。
いつもありがとうございます。
心より御礼申し上げます。
Gio様
おかげさまでマイペースでやらせていただいています。あたたかいお心遣いに感謝しています。
なんとか更新しました。
この後、山の中を放浪する予定です。
森元さま
また来てくださいね。
KK様
僕は女子高生の集団の中を歩かされます。そのうちに、です。気長にお待ちいただければ幸いです。
X様
コメントありがとうございます。
たぶんご希望にかなり近い展開になるかと思います。なかなか更新できませんが、末永くお付き合いくださいませ。