電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

この「冬の旅」はスゴイ!〜イアン・ボストリッジのテノールでシューベルト「冬の旅」を聴く

2025年02月27日 06時00分56秒 | -オペラ・声楽
冬の寒さの中で、シューベルトの歌曲集「冬の旅」の絶望に想いを寄せ(*1)、聴きなれたヘルマン・プライの歌唱とは別の、現代の歌い手による同曲を聴いてみたいと思い立ちました。現代らしく Google で「Schubert Winterreise」で検索し、動画を指定すると、トップに出てきたのがイアン・ボストリッジのテノールによる「冬の旅」のライブコンサートの動画(2016年、ユトレヒト、オランダ)です。

Schubert: 'Winterreise' - Ian Bostridge - Live concert HD

歌っているイアン・ボストリッジというテノール歌手は、ぱっと見では映画の暗号ものに登場する、天才だが風変わりな数学者の役柄が似合いそうな雰囲気(^o^;)ですが、歌は素晴らしい! ほんとに素晴らしい。ここ数日、この動画を何度も聴いています。声質はやわらかいですが、表現は劇的な強さがあります。YouTube のコメント中にはステージマナーに対して批判的な意見も見られるようですが、あまり賛成はできません。もしかすると彼は歌いながら次第に酒に酔っていく青年の姿を表現しているのかもしれない。またサスキア・ジョルジーニというピアニストの伴奏も素晴らしい。非常に深められた表現に、聴き惚れてしまいます。

当方、素人音楽愛好家ですので、イアン・ボストリッジ(*2)というテノール歌手については全く知りませんでした。Wikipedia 等で調べてみて驚きました。歌手としてのプロデビューはずいぶん遅咲きで、なんと27歳のときだったとか。それまではオックスフォードやケンブリッジで英国近代史を専攻し、科学哲学の修士号、歴史学の博士号を取得した学究の道を歩んでいたらしい。なるほど、歴史学者としての裏付けのある知的なとらえ方を背景としつつ、シューベルトの歌が内包するドラマが、時に伸びやかに時に劇的に、深みをもって表現されます。現代の「冬の旅」として共感し説得力を感じるのも納得です。


※本記事の見出し画像は2008年2月の撮影で、雪の中のカモたちです。



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