日曜は舞台「時子さんのトキ」大楽でした。何より無事に幕が下りたことが目出度い
おめでとうございます、そしてお疲れさまでした。
お久しぶりのサンケイホールブリーゼ。お久しぶりすぎて行きも帰りも、迷いそうになりました
梅田の地下街はただでさえダンジョンなのに、あちこちで工事してるんだもの
おかげでヒヤッとしました
大阪公演があるだけで有難いことです(特に今はこんなご時世ですし)が、
割と人気のある公演でも、土日の二日間しかないことが多いので、通いたくても通えないんですよね~
一回観れたらいい方、なのが外の舞台のツライところです
まさか初・生拡樹くんが、現代劇のストレートプレイになるとは思ってもみませんでした
バリバリ現代、まさに今、コロナ下の日本が舞台でした
観るまではちょっとビクビクしてたんですけどね。グサグサと抉ってきて立ち直れなくなるんじゃないかって
でもなんというか、一種のお伽噺のようなお話でした。
観た後に余韻が残って、色々な解釈が出来る作品は大好きです「演劇観た」っていう満足感があります
まとまりのない感想を下に(いつもだけど)ネタバレありますよ。
一体どんな救いようのないゲス拡樹が出てくるかと思ってましたが、ゲスというほどじゃなかったです
っていうか、出てくる人みんな「白」じゃない。一方的に悪い人はいなくて、黒でもない白でもない、ごく普通の人たちでした。
それだけにちょっとした思い込み、すれ違いから、悪い方へ転がってしまうのが、人生と言えば人生なんですよね
離婚して最愛の息子の登喜と別れ、日々疎遠になっていく時子さん。
自分の存在の意味が揺らいでいる中、翔真を気に掛け応援することが救いになっていたのかなと思います。
路上で歌う翔真にとっては初めは応援してくれるただのおばさん、だったかもしれない
お節介な近所のおばさんみたいな感じで、気兼ねなく世間話ができる人。
お金を借りることになっても、金ヅルと思ってたわけではなくて、
いつかちゃんと返さなきゃと思ってるし、返せないことに後ろめたさも感じている。
本当は4年前、北海道の実家(農家)が台風被害にあったのを知って、夢をあきらめて帰ろうとした時に、帰るべきだったんでしょう。
でもそれを強く引き留めたのが時子さんで、実家の借金を肩代わりしてくれたことから、
翔真もそれに甘え、受け入れてしまう。
時子さんとしてはただ翔真にいてほしかった。それが生き甲斐になっていたから。
(なんだかヅカオタとかドルオタとかのオタクを思い出しますね例外はありますが、基本的には無償の愛だし)
翔真はそんな時子さんにキスしようとするんです
時子さんに大きな借りをつくってしまって、でも期待に応えることも出来ないし、他にできることを思いつけなかったんでしょう
それはそれでズルイんですが
それに対して時子さんは激しく拒絶します。「そんなつもりじゃない!」
時子さんにとっては、息子に出来ないことをやってあげたかった、っていうのが強かったのでしょう。
でもホントにそうかな?ホントはちょっと嬉しい気持ちもあったりして
そんな自分の気持ちに気が付いて、狼狽えたのかも
時子さんがもう少し若ければ、翔真と男女の関係になったかもしれない。
それを拒否したのは、自分は若い男を金で自由にするような人間ではない、という人としての最低限の誇りだったかも。
金を出さなければ男に抱いても貰えない哀れな女、とみられるのは、誰だって腹が立ちますよね
それが翔真だったらなおのことです。翔真のバカ
そしてもしこの時、男女関係になっていたら、二人の関係性は全く別の物になっていたのでは。
それまでは対等に近い関係でしたが、年上で援助している分、少しだけ時子さんの方が上、というか翔真に遠慮がありました。
でも関係を持ってしまったら、翔真は完全にヒモ化したのではないでしょうか
そして時子さんは年下の男に捨てられまいと必死に貢ぎ続ける、可哀想なオバサンになって
二人ともどんどん荒んでいってしまった気がします
時子さんが、踏みとどまってくれて良かった
他人から見ればどうあれ、二人にとっての8年間は黒歴史ではなく、お伽噺の世界に迷い込んだような優しい時間だった気がします
二人にとって必要な時間だったのかな。ちょっと長すぎたかもしれませんが
結局二人の関係はコロナ下の影響もあって、破綻するわけですが、それで良かったのではと思います。
NPO法人の人に「この人をクズにしてるのはあなたですよ」とまで言われちゃいましたからね。
それは確かにその通りかも
翔真も限界点に来てたんじゃないでしょうか。サラ金にまで手を出すようになってましたから。
そのまま行ってたら取り返しの付かない悲劇に行き着いたかもしれません。
翔真はゲスというより優柔不断で甘えたで弱い、つまりは情けない人間。
なので翔真に帰る場所があって良かったな~、とホッとしました
これが身寄りもなくて、頼る人も他にいないとかだと、本気で闇堕ちしたかもしれませんから
私自身は時子さんでもあり、翔真でもあります。つまりは、ただの人なのでどちらの気持ちもわかります。
離婚してからの8年間、時子さん以外の人のお衣装が、みんなほぼ白でした。多少の濃淡はありましたけど。
それは時子さんの心情を表してたんだろうな、と思います。
離婚して、付いてくると思っていた息子は夫の元に残り、働き始めれば無責任で悪意のある噂を立てられ。
どんどん心が閉じて孤独になっていく。世界から彩が無くなっていくもの無理ないのでは。
帰りの電車の中で、そんなことを考えてたら、危うく泣きそうになりました
でも翔真が故郷に戻ったあと、大学生の登喜と会うシーンでは、登喜の衣装も色のある、普通の衣装になっています。
そこでずっと聞けなかったことを聞くのですが、その答がまあスゴイ
いや子どもって、予想もつかないようなことを考えるものだなと思いました。
ピュアで損得抜き、なんですよね。でもそのために時子さんは長い間苦しんでいたんですが
時子さんってお母さんとしても普通のお母さんでした。
子どものためによかれと思って、常に先回り先回りして、そして口うるさい
一歩間違うといわゆる毒親ですもしかしたら登喜が翔真のようになっていた可能性もあります。
思春期の子ども、特に男の子は照れもあるのか、そういう母親をすごく嫌がりますよね。
離婚した後、時々会っても、なんか無愛想でウザがるし、すぐ帰っちゃうし、嫌っているのかと観ていた私も思いました
娘との関係も難しいけど、息子との関係も難しい
それで話を元に戻して、登喜が父親の方に残った理由は「二度と会えなくなるかもしれないから」
そして母とは「絶対に切れない自信があったから」すごい発想
子どもにとってはどちらも親、特別なんですね。
たとえ家に寄りつかなくなり、会えば母親に暴力をふるったりする父親でも。
時子さんはそれを聞いて笑います。脱力したでしょうね、もう笑うしかない
もっと早く聞いていれば、苦しまなくても良かったのに。でもそれが人生なのかな。
翔真はいなくなったし、息子はもう大人だし、これからの時子さんは、どう生きていくんだろう、と考えさせられる作品でした
出演者の皆さんそれぞれ上手くて味があって、楽しい笑いの場面もたくさんあったので、重くはなかったです。
中でも小学生時代の登喜を演じた矢部さん。
中学生以降は拡樹くんなので、このキャスティングどやねんって思いましたが
もう動きがまさに小学生の男の子で、笑わせてもらいました。
不思議と違和感ないものなんだなぁ、ビックリです。どこかで動きを合わせてたのかもしれません。
2階の後ろ目で観てたのですが、1回しか観ないので早々にオペラを使うのを諦めました
なので細かい動きや表情はよく見えなかったので、わからなかったことが沢山あったかもしれません。
これはもう配信か円盤で見るしかないですね