破壊的な音と波は前方から押し寄せてくる。
爆心に向かって走っているためだろうか。
衝撃波と爆発音があわさったエネルギーがドップラー効果でさらに凝縮された波動になりそこへ向かって突き進んでいるようで脳髄から背骨を経てそして尾低骨の先端へ突き抜けるような体のふるえをおぼえる。
鼓膜は高周波に反応してキ~ンとふるえている。*(口笛)*
紫色の爆煙とその辺りから舞い上がった爆塵と炭をまいたような黒っぽい破片が前方視界いっぱいに拡散している。
ウインドウグラスの1/6ぐらいを占める大きさになって右手前方を連なって走り続ける2台の大型トレーラートラックの後ろ姿はそんな情景の中でかげろうのようにゆれている。
その煙幕のまんなか辺りから大きくて真っ黒でズダズダニなった分厚い絨毯の様なものが舞い出てきた。
スローモーション映像のように白い路面を物の怪のようなまっ黒な舌で舐めながら道をななめに横切るようにぎこちなく蠢いている。
そしてその全容をさらに明らかにつつこっちへ向かってころがってくるではないか。
そう見えた。*(涙)*
それはズダズダに引き裂かれながらもなお足掻き惰性でななめ前方へ向かってころがり続けるゴムタイヤの化物だった。
高速走行中である自分の車からはその化物が進路をおおい隠すように見えた。
たった今強烈な爆発音と衝撃波に見舞われてからほんの一呼吸のあいだである。
空中に飛び散ったトラックタイヤのゴム片と思われるものがバラバラッとボンネットや屋根そしてウインドウグラスにふりかかってきた。*(驚き)*
急停車する間もない突発的な出来事である。
爆発で飛散した大小ゴム破片とそのほかなのだかわからない破片も路上一面に散乱しておりそこをとっさのハンドル操作で切り抜けつつ走踏する。
それでも幾つかの破片は避け様がなく床下にゴトゴト音をひびかせながら乗り越えていく。
その先にはあの化物がいた。
走行車線と追い越し車線をまたぐように拡がった長さ数メートル大のまっ黒なゴムタイヤの化物がその獰猛さの余韻を残してうす黒い煙をあげながらのたうち蠢いている。
ついさっきまでは何の変哲も無い丸いトラックタイヤであったものだ。
その化物に衝突せぬようさらにスピードを落としながら接触寸前ですぐ傍らをすり抜けることができた。
ゴムの焼ける匂いが鼻をさす。
事故を起こした犯人である大型トレーラートラックとその相棒らしき別の一台は発生した地点から約数百メートル先まで空走してそしてやっと路肩に停車した。
ここに到っていったい何が起きたのかほぼ全容がつかめた。
視れば連なって走っていた大型トレーラートラック(20トンクラス)2台のうち後ろ側1台の後輪が炸裂したのだった。
後輪3軸のダブルタイヤのうち真ん中2車軸目の外輪のタイヤがふき飛んで無残にゆがんだスティ-ル製のリムだけになっていた。
おそらく何かの原因で突然炸裂「バースト」したのだろう。*(びっくり1)*
しかしその炸裂いや爆発のエネルギーはまったくすさまじいの一語に尽きる。
それは至近距離かつ進行方向目前で起きた。
その爆発音と衝撃波は私が運転しているような小型車などいとも簡単に木っ端みじんに吹き飛ばしてしまう威力を持ったものに違いないと実感した。
もし爆発が起きた時不運にもすぐ横の追い越し車線を併走していたとしたらと考えるとぞっとする。
そして道路がもう少し混んでいてあるいは夜間であったら後続車の追突事故も誘発して大惨事になったかも知れない。
*(青ざめ)*
“盛夏の昼下がりセルビア・アウトプット上に散る。”ではまるで様にならないではないか。
きのう雨のアウトセテで遭遇し回避した不注意車による危機を,そして今日はこの思いもよらぬ危機を間一髪で回避したことになる。
不運に遭遇しての幸運だろうか。
今日は汗ばむ背筋を凍りつきそうな冷や汗がすすっと流れ落ちていった。
白昼化物に出会ったような衝撃で頭の中は急速冷凍庫の冷気の中に飛び込んだように真っ白けかつ当然顔面蒼白の極である。*(青ざめ)**(青ざめ)*
とにかく無事であった事をただただ感謝するだけで,そういう場面に否応無く出演させられてしまったその憤りや怒りをだれかに投げつけるエネルギーはもう残っていなかった。
バルカン半島の旅はどうもアドレナリンの消耗が激しいようだ。
ただ思い起こせば程度の差はあるが今までもにかなりヤバイ場面に直面したことが数多くあった。
いずれも結果だけを見れば大事に至らずにすんだという事か。
今回もそのひとつになった。*(いっぷく)*
すこしの間徐行しながらバックミラーで走り抜けてきた現場を振り返った。
それから思い出したようにあらためて車の中を幾度か見まわしてみた。
そしてまた外の風景に視点を移した。
穏やかで抜けるような蒼穹と単調な白いアウトバーンの路面がゆるやかな丘陵地に延びている。
今起きたことはまったくの白昼夢だったとしか思えなかった。
あのトラックの運転手達が路上に散乱したタイヤ片の後始末と後続車への適切な対処をするはずだと勝手に判断し,また後方視界には後続の車がまったくみえないことを確かめてからやっとそこを後にした。
コカ二の料金所をすぎてからいつの間にかアウトバーン区間が終わりになって対面交通道路に切り替わった。
この道路番号はM1から只の国道1=E75に変わったが,相変わらずモラヴァ川のながれに沿って延々と続いている。
助手席に拡げた地図でマケドニアに入る国境に近づいているのを確かめながら沿道のガソリンスタンドを探しはじめる。
今朝クロアチア側のガソリンスタンドで一度給油していたので今タンクの目盛りは1/4の所を指している。
このままでもまだ250Km以上走れるはずだ。*(車)*
ただマケドニアへ入るまでに財布の中に残っているセルビアのディナールを使い切ってしまいたいのだ。
セルビアを出て他の国へではただの木の葉になってしまうからである。
こんな些末なことからもバルカン諸国の複雑で微妙な政治・経済関係がうかがえる。*(お金)**(進入禁止)*
最初に飛び込んだスタンドではEURO 95(無鉛ガス)がなかった。
次に立ち寄った真新しい建物の大きなスタンドではちょうど手持ち1310ディナール分(=16.6L)だけ入れてもらいセルビア・ディナールは2~3枚のコインを残してすっかりすっきりと使い切った。
スタンドの大兄いの親切な対応が快かった。
これで思い残すことなく後ろ髪ひかれずに?マケドニアへ行けるのだ。
すこしおかしな理由ですがすがしい気分になった。*(グッド)**(ニヤ)*
これからもうわずかの距離にある国境へ向かうためだろうか,同じスタンドで
家族連れらしき一行の車達が5~6台給油していた。
それからそのスタンドの出口付近に派手で遠くからでも目立つ白い小型車が止まっていた。その車に寄りかかりながらスピードガンで取締りに精勤中の警察官たちであった。
こういうことをしている彼らは庶民の敵である。*(ジロ)**(最低)*
彼らのようすを流し見ながらそのガソリンスタンドを後にした。
同じ庶民なかま意識もあってすこし先で対向車線を走ってくる車たちへパッシングライトでスピード取締りがいることを知らせてやる。さらに走りながらパッシングライトサインを送り続ける。
こういうサインはお互い様なのである。実際そのサインに助けられることもけっこう多いのだ。*(チョキ)**(ニヤ)*
そして20分ほど走るとめざす国境のゲートが見えてきた。
まだバルカンの夏陽が高みから照りつけている午後4時半であった。*(晴れ)**(時計)*
爆心に向かって走っているためだろうか。
衝撃波と爆発音があわさったエネルギーがドップラー効果でさらに凝縮された波動になりそこへ向かって突き進んでいるようで脳髄から背骨を経てそして尾低骨の先端へ突き抜けるような体のふるえをおぼえる。
鼓膜は高周波に反応してキ~ンとふるえている。*(口笛)*
紫色の爆煙とその辺りから舞い上がった爆塵と炭をまいたような黒っぽい破片が前方視界いっぱいに拡散している。
ウインドウグラスの1/6ぐらいを占める大きさになって右手前方を連なって走り続ける2台の大型トレーラートラックの後ろ姿はそんな情景の中でかげろうのようにゆれている。
その煙幕のまんなか辺りから大きくて真っ黒でズダズダニなった分厚い絨毯の様なものが舞い出てきた。
スローモーション映像のように白い路面を物の怪のようなまっ黒な舌で舐めながら道をななめに横切るようにぎこちなく蠢いている。
そしてその全容をさらに明らかにつつこっちへ向かってころがってくるではないか。
そう見えた。*(涙)*
それはズダズダに引き裂かれながらもなお足掻き惰性でななめ前方へ向かってころがり続けるゴムタイヤの化物だった。
高速走行中である自分の車からはその化物が進路をおおい隠すように見えた。
たった今強烈な爆発音と衝撃波に見舞われてからほんの一呼吸のあいだである。
空中に飛び散ったトラックタイヤのゴム片と思われるものがバラバラッとボンネットや屋根そしてウインドウグラスにふりかかってきた。*(驚き)*
急停車する間もない突発的な出来事である。
爆発で飛散した大小ゴム破片とそのほかなのだかわからない破片も路上一面に散乱しておりそこをとっさのハンドル操作で切り抜けつつ走踏する。
それでも幾つかの破片は避け様がなく床下にゴトゴト音をひびかせながら乗り越えていく。
その先にはあの化物がいた。
走行車線と追い越し車線をまたぐように拡がった長さ数メートル大のまっ黒なゴムタイヤの化物がその獰猛さの余韻を残してうす黒い煙をあげながらのたうち蠢いている。
ついさっきまでは何の変哲も無い丸いトラックタイヤであったものだ。
その化物に衝突せぬようさらにスピードを落としながら接触寸前ですぐ傍らをすり抜けることができた。
ゴムの焼ける匂いが鼻をさす。
事故を起こした犯人である大型トレーラートラックとその相棒らしき別の一台は発生した地点から約数百メートル先まで空走してそしてやっと路肩に停車した。
ここに到っていったい何が起きたのかほぼ全容がつかめた。
視れば連なって走っていた大型トレーラートラック(20トンクラス)2台のうち後ろ側1台の後輪が炸裂したのだった。
後輪3軸のダブルタイヤのうち真ん中2車軸目の外輪のタイヤがふき飛んで無残にゆがんだスティ-ル製のリムだけになっていた。
おそらく何かの原因で突然炸裂「バースト」したのだろう。*(びっくり1)*
しかしその炸裂いや爆発のエネルギーはまったくすさまじいの一語に尽きる。
それは至近距離かつ進行方向目前で起きた。
その爆発音と衝撃波は私が運転しているような小型車などいとも簡単に木っ端みじんに吹き飛ばしてしまう威力を持ったものに違いないと実感した。
もし爆発が起きた時不運にもすぐ横の追い越し車線を併走していたとしたらと考えるとぞっとする。
そして道路がもう少し混んでいてあるいは夜間であったら後続車の追突事故も誘発して大惨事になったかも知れない。
*(青ざめ)*
“盛夏の昼下がりセルビア・アウトプット上に散る。”ではまるで様にならないではないか。
きのう雨のアウトセテで遭遇し回避した不注意車による危機を,そして今日はこの思いもよらぬ危機を間一髪で回避したことになる。
不運に遭遇しての幸運だろうか。
今日は汗ばむ背筋を凍りつきそうな冷や汗がすすっと流れ落ちていった。
白昼化物に出会ったような衝撃で頭の中は急速冷凍庫の冷気の中に飛び込んだように真っ白けかつ当然顔面蒼白の極である。*(青ざめ)**(青ざめ)*
とにかく無事であった事をただただ感謝するだけで,そういう場面に否応無く出演させられてしまったその憤りや怒りをだれかに投げつけるエネルギーはもう残っていなかった。
バルカン半島の旅はどうもアドレナリンの消耗が激しいようだ。
ただ思い起こせば程度の差はあるが今までもにかなりヤバイ場面に直面したことが数多くあった。
いずれも結果だけを見れば大事に至らずにすんだという事か。
今回もそのひとつになった。*(いっぷく)*
すこしの間徐行しながらバックミラーで走り抜けてきた現場を振り返った。
それから思い出したようにあらためて車の中を幾度か見まわしてみた。
そしてまた外の風景に視点を移した。
穏やかで抜けるような蒼穹と単調な白いアウトバーンの路面がゆるやかな丘陵地に延びている。
今起きたことはまったくの白昼夢だったとしか思えなかった。
あのトラックの運転手達が路上に散乱したタイヤ片の後始末と後続車への適切な対処をするはずだと勝手に判断し,また後方視界には後続の車がまったくみえないことを確かめてからやっとそこを後にした。
コカ二の料金所をすぎてからいつの間にかアウトバーン区間が終わりになって対面交通道路に切り替わった。
この道路番号はM1から只の国道1=E75に変わったが,相変わらずモラヴァ川のながれに沿って延々と続いている。
助手席に拡げた地図でマケドニアに入る国境に近づいているのを確かめながら沿道のガソリンスタンドを探しはじめる。
今朝クロアチア側のガソリンスタンドで一度給油していたので今タンクの目盛りは1/4の所を指している。
このままでもまだ250Km以上走れるはずだ。*(車)*
ただマケドニアへ入るまでに財布の中に残っているセルビアのディナールを使い切ってしまいたいのだ。
セルビアを出て他の国へではただの木の葉になってしまうからである。
こんな些末なことからもバルカン諸国の複雑で微妙な政治・経済関係がうかがえる。*(お金)**(進入禁止)*
最初に飛び込んだスタンドではEURO 95(無鉛ガス)がなかった。
次に立ち寄った真新しい建物の大きなスタンドではちょうど手持ち1310ディナール分(=16.6L)だけ入れてもらいセルビア・ディナールは2~3枚のコインを残してすっかりすっきりと使い切った。
スタンドの大兄いの親切な対応が快かった。
これで思い残すことなく後ろ髪ひかれずに?マケドニアへ行けるのだ。
すこしおかしな理由ですがすがしい気分になった。*(グッド)**(ニヤ)*
これからもうわずかの距離にある国境へ向かうためだろうか,同じスタンドで
家族連れらしき一行の車達が5~6台給油していた。
それからそのスタンドの出口付近に派手で遠くからでも目立つ白い小型車が止まっていた。その車に寄りかかりながらスピードガンで取締りに精勤中の警察官たちであった。
こういうことをしている彼らは庶民の敵である。*(ジロ)**(最低)*
彼らのようすを流し見ながらそのガソリンスタンドを後にした。
同じ庶民なかま意識もあってすこし先で対向車線を走ってくる車たちへパッシングライトでスピード取締りがいることを知らせてやる。さらに走りながらパッシングライトサインを送り続ける。
こういうサインはお互い様なのである。実際そのサインに助けられることもけっこう多いのだ。*(チョキ)**(ニヤ)*
そして20分ほど走るとめざす国境のゲートが見えてきた。
まだバルカンの夏陽が高みから照りつけている午後4時半であった。*(晴れ)**(時計)*