長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『スウィート17モンスター』

2019-09-08 | 映画レビュー(す)

ケリー・フレモン・クレイグ監督による本作を見てアイタタタ…と思わない大人はいないだろう。主人公ネイディーンは17歳。周りの気取ったバカ連中とはツルまない。ファッションもスクールライフも我が道を行く女の子だ。そんな彼女の親友は天使のように可愛い幼馴染のクリスタ。ところが彼女は事もあろうにイケメン、筋肉バカの兄貴ダリアンと付き合い始めてしまう。ありえない!!

『スウィート17モンスター』は思春期特有のこじれにこじらせた面倒くさい自意識を描いている。ムカつく兄貴と付き合うなんて許せない。ネイディーンは「私とアニキ、どっちが大事なの?」とまで迫る。そして担任の先生に絡んでは自己憐憫に浸る始末だ。そんな彼女が何より許せないのは何者でもない自分自身なのだろう。そんな暴走女子高生をヘイリー・スタインフェルドが快演。あらゆるギャグをキメていく切れ味の鋭いパフォーマンスは『ジュノ』のエレン・ペイジを彷彿とさせる。

脚本も手掛けたクレイグ監督はそんなネイディーンを取り囲む全ての人に温かい視線を注いでおり、その優しさが心地良い。何不自由ないリア充生活を送っているように見えるアニキにも長男としての責任感があり、母は夫亡き今、女手一つで年頃の子供達を育てる苦労を抱えている。皮肉屋で、とうてい教育熱心には見えない先生はむしろネイディーンと似たこじらせ思春期を送ったクチではないか。演じるウディ・ハレルソンは近年、性格俳優としてますます脂が乗ってきたが、『スリー・ビルボード』や本作で到達した“優しさ”こそがキャリアの円熟ではないだろうか。クリスタ役ヘイリー・ルー・リチャードソン嬢はスタインフェルドが霞むほど可愛らしく、今後のブレイクに期待したい(スタインフェルドはわざとブサイクに演じてます、ハイ)。

しばしば美化されがちな青春時代だが、決して戻りたくないと思えればあなたは心身ともに成長した大人かも?一歩だけ階段を上がる事のできたネイディーンの人生は、映画が終わった所から始まる。


『スウィート17モンスター』16・米
監督 ケリー・フレモン・クレイグ
出演 ヘイリー・スタインフェルド、ウディ・ハレルソン、キーラ・セジウィック、ブレイク・ジェナー、ヘイリー・ルー・リチャードソン
 

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