長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ブラック・クランズマン』

2019-04-28 | 映画レビュー(ふ)

近年、精彩を欠いていたスパイク・リー監督(何が悲しくて『オールド・ボーイ』のリメイクなんか撮ったんだ)の大復活作だ。カンヌ映画祭ではグランプリを獲得、アカデミー賞では主要6部門にノミネートされ見事、脚色賞で自身初のオスカー獲得となった(名誉賞をOscar so Whiteに反発してボイコットした過去がある)。プレゼンターを務める盟友サミュエル・L・ジャクソンからオスカーを受け取った場面は今年のハイライトであった。

怒りがたぎってこそスパイク・リーである。1970年代に黒人警官ロン・ストールワースが白人至上主義団体KKKに潜入した仰天実話を映画化した本作は警察モノとして間口は広いが、内に秘めた怒りは猛々しく、明らかにトランプへのカウンターを意図している。黒人達が「ブラックパワー!」とその権利を声高に訴えた時代、白人至上主義を叫ぶレッドネック達は滑稽な連中であり、劇中でもそんな彼らが政権中枢に潜り込めるワケがないと一笑に付されるが、現実はむしろ全くの逆だ。投票率の低下という民主主義の怠慢が「アメリカを再び偉大にする」「アメリカファースト」とのたまう大統領を誕生させてしまった。

そんなストレートなメッセージを彩るリーの自由闊達な演出は全く老いる事がない。映画はサスペンス、コメディはもちろん、ミュージカルやドキュメンタリーといったあらゆるジャンルを横断し、さらにはブラックスプロイテーションへの批評も盛り込まれる。主演に盟友デンゼル・ワシントンの息子ジョン・デイヴィッド・ワシントン(声がそっくり!)を迎え、アメリカ中の鬼才監督に重用されるアダム・ドライバーともJoin。『スパイダーマン/ホームカミング』でもフレッシュだったローラ・ハリアーちゃんにアフロと眼鏡を付けさせ、70年代ブラックビューティーを再現する抜かりのなさで実に若々しい座組ではないか。

エンドロールでは近年、アメリカ各地で発生した白人至上主義団体とカウンターの衝突映像を盛り込み、映画と現実が地続きである事を突きつける。リーの映画は映画館だけでは終わらない。憎悪に居場所はないと謳い、そしてオスカー授賞式では2020年の選挙に向けて「ドゥ・ザ・ライトシング!」とぶち上げた。この過剰なまでのパワーこそ、スパイク・リーである。

 

『ブラック・クランズマン』18・米

監督 スパイク・リー

出演 ジョン・デイヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、トファー・グレイス、コーリー・ホーキンズ、ヤスペル・ペーコネン、ポール・ウォルター・ハウザー、ライアン・エッゴールド

 

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