殺人ウィルスによる世界滅亡を予見したコミック“ユートピア”を巡って、オタク達が悪の組織に立ち向かう…なんだか浦沢直樹の漫画みたいなプロットだが、原作は2013年の英国産同名TVドラマ。2020年に“ウィルスによるパンデミック”を描いただけでもリメイクとしては地の利を得たと言っていいだろう。ショーランナーを務めるのは何と『ゴーン・ガール』『シャープ・オブジェクツ』の原作者ギリアン・フリンだ。
所謂“厭ミス”の女王でもあるフリンならではのストーリー展開を期待する所だが、意外や正攻法のエンターテイメント娯楽作になっていて驚いた。引きの強いクリフハンガーと、ハードなバイオレンス描写は今やPeakTVのトレードマークの1つ。それだけに全てがこちらの予測値、期待値を上回ることなく、何とも生煮えなまま全8話を終えてしまっている。サスペンスやドンデン返しも大事だが、何よりキャラクターに魅力がないのが致命的だ。シーズン2への「続く」で引っ張っるが、製作のAmazonは早々に打ち切りを発表した。
唯一の見所は実在するコミックヒロイン、ジェシカ・ハイドに扮したサッシャ・レインだろう。アフリカ系アメリカ人の父と、マオリの血を引くニュージーランド人の母との間に生まれた彼女のコスモポリタンなルックスは、新たな時代のヒロイン像に相応しい。甘っちょろさがなく、アクションも様になっている。彼女を主演スターとして成長させる意味でも本作の不発は何とも残念だ。もっとも、マーヴェルがディズニープラスで配信するスピンオフドラマ『ロキ』の出演も決まっており、彼女がメジャーになるのは時間の問題だろう。サッシャ・レインを紹介しただけでも、本作はムダではなかった。いずれそんな評価が下ると願いたい。
『ユートピア』20・米
製作 ギリアン・フリン
出演 サッシャ・レイン、ジョン・キューザック、レイン・ウィルソン
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