絶海の孤島でサバイバル生活を送る遭難者ポール・ダノ。ついに食糧も尽き、絶望に駆られて首を吊ろうとしたその時、目の前に土座衛門ダニエル・ラドクリフが漂着する。この死体はオナラ(死体の腐敗ガス)を使ってモーターボート代わりになったり、口からウォーターサーバーの如く真水を吐いたり、さらにはお喋りもできる十徳ナイフ(=スイス・アーミー・ナイフ)のような死体、“スイス・アーミー・マン”だった!ホントにそういう映画なんだってば!
こうして書いていてもどうかしてるとしか思えないプロットで、映画の大半は「いったい何を見ているんだオレは…」という戸惑いが拭えない。ダノはもちろんのこと、ハリー・ポッターことダニエル・ラドクリフが水死体を楽し気に演じており、一種のバディムービー、ブロマンス映画として成立している(中盤、どんどん倒錯していく)。
ラドクリフは『ハリー・ポッター』以後、精力的な役選びをしており、今や90年代のジョニー・デップを思わせるキャリア形成である。今後は創造的パートナーシップを築ける映画作家との出会いがキャリア発展のカギになっていくだろう。
この手の映画は得てして道徳的な着地を見せるものだが、本作は感動的なまでの開き直りを見せている。キモくたっていいじゃない!と。
『スイス・アーミー・マン』16・米
監督 ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン
出演 ポール・ダノ、ダニエル・ラドクリフ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド
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