長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『このサイテーな世界の終わり』

2020-08-08 | 海外ドラマ(こ)

 ジェームズは自身をサイコパスと自覚している高校生。いつか人を殺してみたいという願望を秘めており、既に猫では実証済みだ(!)。幼少期に母の自殺を目撃して以来、父親とは完全にディスコミュニケーション状態にある。
 そんな彼が転校生のアリッサに声をかけられる。彼女は母親がクソ野郎と再婚した事で人生に幻滅し、破滅願望を抱いている。ひょんな事から2人は家出をする事になり…。

 『このサイテーな世界の終わり』(原題The End of the F***ing World)はそんな危うい設定から始まるロードムービーだ。第3話、いよいよ事件が起こり、家出は逃避行へと変容していく。2人は決してお目にかかりたくないメンドクサイ若者達だが、続く『ノット・オーケー』を手掛けたジョナサン・エントウィッスルは愛さずにはいられないキュートな人物として描いており、やがてドラマはピュアなラブストーリーへと昇華されていく。

 本作は1話30分弱のフォーマットを活かした語りの巧さが映える。思いがけぬ人物ボニーから始まるシーズン2第1話25分の密度と、シーズン1後のアリッサを描いた第2話の19分は共にモノローグでそれまでを時系列順に見せていくが、密度の濃さは同じでも物語の性格がまるで違うのが面白い。シーズン2はボニーによって異様な緊張感を得ており、本作で数々の賞にノミネートされたナオミ・アッキーの怪演は見所だ。彼女が『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で元ストームトルーパーを演じていた若手女優と聞いて驚愕。ますます評価が下がるスター・ウォーズEP9よ…。

 シーズン2第7話が傑出していた。人里離れた夜のダイナーを映した映像美はコーエン兄弟作品を思わせ、ユーモアと暴力、そしてヒューマニズムがたった25分の中に混在し、最後には多幸感が広がる。短い尺の中に豊かな広がりを持つ30分ドラマの魅力を再確認させられたシリーズだ。


『このサイテーな世界の終わり』17~19・英
監督 ジョナサン・エントウィッスル
出演 ジェシカ・バーデン、アレックス・ロウザー、ナオミ・アッキー

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