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フランソワ・オゾン監督の2013年作。
キッチュでカラフル、まるで毒入りカクテルのような作風は『まぼろし』『スイミング・プール』で開拓した心理描写へとシフトチェンジし、今やフランス映画界の巨匠とも言うべき貫禄が備わったオゾンだが、初期ファンとしてはその毒気の薄まりが何とも物足りなく映るのである。美人女子高生の援助交際を描く本作も『まぼろし』の焼き直しに過ぎない。
ひと夏のバカンスで処女を失った17歳のイザベルはその後、出会い系サイトで知り合った男達と情事を繰り返す。主演マリーヌ・ヴァクトの痩せすぎた肢体は少女の未熟さを感じさせるが、一度メイクを施せば女の顔へと変わる。イザベルは一向に快楽を得られず、まるで肉体の実感を確かめるように行為を繰り返す。そんな中、年かさの男ジョルジュがセックスの最中に腹上死。驚いたイザベルはその場から逃げ去ってしまう。
オゾンは大胆なセックスシーンをいくつも盛り込むも、イザベルの動機をなかなか明らかにはしない。答えは終幕に登場するオゾン映画のアイコン、シャーロット・ランプリングが持っている。ジョルジュの妻である彼女はイザベルの若さと美しさに過ぎ去った自らの刻(とき)を見出す。自由なセックスを選択できなかった悔恨。イザベルの衝動は刻一刻と若さを失う事への怖れなのか。ベッドに寝そべり、共鳴する2人の姿にこの映画そのものがアリス(ランプリング)の幻視した“あったかも知れない17歳”にも見えた。
果たしてオゾンが語り直すべきモチーフだったのかと疑問は残る。若さと性、秘められた欲望は既に『まぼろし』『スイミング・プール』で語り尽くされており、僕には本作が同工異曲の戯れに映ってしまった。
『17歳』13・仏
監督 フランソワ・オゾン
出演 マリーヌ・ヴァクト、シャーロット・ランプリング
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