ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

D I A R Y 6月

2023-07-01 12:46:13 | つぶやき
  6月 某日 ①
 朝食の準備前に家内はノートパソコンへ向かう。
週1回コーラスサークルで使用する会場を予約するためだ。

 以前は、1日に会場受付まで出向き、予約するシステムだったが、
今は、WEB予約に変わった。
 その環境があり操作ができる家内に、役割がまわってきた。

 予約できないと別の会場の当てがない。
少しでも早く予約しなくてはならない。
 
 月初めの朝、私は無事予約が済むよう、
少しだけ気にかけながら、洗面台に立つ。
 しばらくして、予約完了を知らせる返信メールの着信音が鳴る。
私までホッとする。

  6月 某日 ②
 50回目の結婚記念日だった。
世間では金婚式と言うらしいが、
息子2人は全く興味も関心もないらしい。
 LINEメールすら来ない。
想定内のことだ。

 夜は、イタリアンレストランを予約してあった。
白ワインで乾杯し、2人だけでお祝い。
 学生時代に知り合ってからの長い長い付き合いである。
どっちが先に逝くかは分からないが、
後10年は健康で過ごせたらいいと願う。

 さてさてどうなることか、先々のことは分からない。
だからこそ、今を大事に過ごしたい。
 家内には、そう伝えた。

 コース料理で出された「桜エビとアスパラのペペロンチーノ」と、
「マルゲリータピザ」が美味しかった。
 でも、前菜からデザートまで完食するのが大変。
2人とも「満腹!」以上。
 そろそろ高齢者用コースと言うメニューがあってほしい・・。
   
  6月 某日 ③  
 5月に自治会長名で市役所に、3つの要望書を提出した。
そのうちの2つは、地域内の舗装道路に関するもので、
センターラインの再塗装と経年劣化による陥没などの路面補修が主な内容だった。
 その要望箇所について市役所の担当課職員が調査に来た。

 約束の時間に、3名で市の車を自宅前に横付けした。
当初はこちらも3名が調査に同行する予定だったが、
あの人にもこの人にもと声をかけたりして5名になった。
 計8名で2時間余りをかけ、地域内の道路を歩き回った。

 現職の頃、学校施設の現地調査と言うのがあった。
校長時代の私は、教育委員会の職員に同行し、
校舎や敷地内をくまなく見て回り、修繕の必要箇所を確認した。
 その時、修繕の重要性や緊急性についての職員の認識が、
その後の計画に大きく影響した。

 その経験を行かし、私は市の職員が道路の実際を見て、
危険性や緊急性に少しでも多くの箇所で気づくようにと心がけ、
声かけしようとした。
   
 しかし、同行したメンバーは違った。
歩く先々で、道路の不備、劣化、凹凸などを次々と遠慮なく指摘した。
 「ここも直してほしい」「ここは年々凹みがひどくなる」
「あっちもひどいがここもひどい」と、職員に言う。
 職員は防戦一方になった。
表情は曇るばかりだった。
 途中からは、苦情を聞きながら無言で歩き回るだけに。

 「道路状況がよく分かった。
それじゃ、最初にあの道とここの道の路面修理をしよう。
 その後で、あそこの道にとりかかろう」。
道路調査を通し、職員のそんなプランニングと意欲に期待した。
 しかし、3人の思いは大きくかけ離れたもののように思えた。

 だから、別れ際にそっと伝えた。
「いろいろと勝手な思いで、勝手な注文を言いました。
 すみません。
皆さんが現状を見て、感じたことが一番ですから、
どうぞ、 その判断でできるところからよろしくお願いします」。
 「わかりました」と応じた職員の表情が、
少しだけ明るくなった気がした。

  6月 某日 ④ 
 グリーン回りのアプローチショットが思うようにできない。
それが原因で、スコアーもよくない。

 近所に鳥かごのような小さなゴルフ練習場がある。
早起きして、1人でショートアイアンだけを持って、
練習に行ったこともあった。
 しかし、調子は戻らず、思うようにボールは飛ばなかった。

 不調のまま、コースに行く。
やはりグリーン回りでトラブルをくり返す。

 このままじゃ益々自信を失うばかりだ。
家内に同行を頼み、
今朝、早起きして再び鳥かごのような練習場へ行く。

 何度打ってもボールが思うように上がらない。  
いらいらして打つと、遂にはシャンクして斜めに飛んでいった。
 家内が横でクラブを振る。
狙ったところにボールが飛んでいく。
 特段、私のスイングとちがうところはない。

 若干、投げやりになり、右手だけでクラブを握り、
ボールを打った。
 ビックリした。
イメージしていた軌道をえがいて、ボールが飛んでいった。
 まさかと、もう一度右手だけで・・・、同じように飛ぶ。

 「右手だけで打つ感じで、振るといいかも」。
家内からもアドバイスが。

 不調の原因が分かった。
左手が強すぎたのだ。
 もっと右手を使って、スイングすればいいのだ。
そのことに気をつけて、打ってみた。
 「見違えた! 見違えた!」。

  6月 某日 ⑤
 2日前に、市役所から電話があった。
私の自治会を対象に、新しい取り組みを始めるという。
 事前に会長に、その内容を知らせたいと言う趣旨だった。

 自宅へ訪問するとのことだったが、
私が市役所へ伺うと申し出た。

 約束の時間に、担当課のカウンターへ行く。
会議室へ案内された。
 若い女性の担当者から説明を受けた。

 65歳以上の住民を対象に健康教室的な取り組みを行うと言う。
そのために募集案内を郵送するとか。
 もしそのことで会長さんに問い合わせがあった場合は応じてほしい。
そんな内容だった。

 健康なまま長生きすることは、
市民一人一人の願いである。
 同時に、市の医療財源上も大きな課題に違いなかった。
私は、若い担当者の説明と要望に二つ返事で応じた。

 最後に、担当者が新たな印刷物と封筒を差し出した。
「ついでで申し訳ありません。
本来なら郵送すべきですが、これは会長さんご夫妻宛の
募集案内です」。
 手にとると、私と家内宛てになっていた。

 思わず声が大きくなった。
「そっか! 当然か! 65歳以上だもんね。
私たちだって対象者なんだ」。
 そう言いながら、急に心が沈んだ。

 帰り際、背が丸まっていないかと気にしながら、
庁内を進んだ。

  6月 某日 ⑥
 庭のジューンベリーが、
赤紫色の実におおわれ始めている。
 朝と夕に30分程度、実の収穫作業を始めた。

 早々、車を止め「大変だね!」と声をかけてくれた方がいた。
「今年も、この実を採る時季がきました」と答えながら、
いつの間にか春が駆け抜けていってしまったことを、
惜しんでいた。




   ジューンベリーの実 収穫の時

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