児童文学作家・斉藤洋さんを知ったのは、
17年も前・1997年11月のことでした。
その日、江戸川区の小学校を会場に、
第34回東京都小学校児童文化研究発表大会が行われました。
斉藤先生は、その記念講演で『このごろ思うこと』と題して、
軽妙な語りで、500人を超える参加者を魅了しました。
先生は、1986年に講談社児童文学新人賞に輝いた『ルドルフとイッパイアッテナ』の
創作課程やその作品のエピソードを、面白おかしく話され、
会場はしばしば大きな笑いに包まれました。
しかし、大変残念なことに、当時の私はこの作品を知りませんでした。
従って、先生のお話を十分にくみ取ることができず、
悔しい思いをしました。
翌日、早速買い求め、久しぶりに時間を忘れ、その本を読みました。
この物語は、元飼い猫の小さな黒ねこ・ルドルフと
体の大きな野良猫・イッパイアッテナのお話なのですが、
まず何とも、ふたりの出会いがいいのです。
飼い猫だったルドルフは、当然のごとく名を名乗ります。
「ぼくはルドルフ。あなたの名前は。」と。
そこで、大きなねこは野良猫ゆえ、
あっちではデカと言われ、
こっちではボスと言われ、
むこうではトラと言われるので、
「おれの名前は、いっぱいあってな・・」
と、答えるのです。
するとルドルフは、
「イッパイアッテナさんですか。」
と、応じるのです。
以来ふたりは、「ルドルフ」「イッパイアッテナ」
と、呼び合うのです。
私は、ふたりのこんな出会いのやりとりを読み、
それだけでこの作品に惹かれました。
ルドルフのなんとも飼い猫らしい無垢でまっすぐな性格。
そして、イッパイアッテナの思慮深くて落ち着いた雰囲気。
二匹の猫の見事な描写に、私はまず脱帽させられました。
さて、この物語は、ルドルフが飼われていた家に帰ることを中心に
展開していくのですが、
私はその中である場面に大きく心を動かされました。
あわてて跳び乗ったトラックの荷台でルドルフは気を失い、
一晩かけて東京に着き、とある下町でイッパイアッテナに出会います。
ルドルフは何から何までイッパイアッテナの世話になります。
しかし、ルドルフは、自分をかわいがってくれた
リエちゃんやロープウェイのおねえさんに会いたいのです。
一晩もトラックに揺られるほど、遠く離れたルドルフのいた町は
どこなのか、なかなか分かりません。
ところが、ある日、テレビから流れる町の映像を偶然見て、
その見慣れた風景からルドルフの町が、
岐阜であることを突き止めます。
すぐにでも戻りたいと思うのですが、
その手段がないのです。
電車を乗り継ぐのは難しいし、
トラックの荷台に隠れて跳び乗っても岐阜に行けるとは限りません。
帰る先が分かっても、帰れないのです。
ルドルフはイッパイアッテナや
東京で知り合ったねこ達にやさしく励まされます。
そして、ルドルフは失意の中でこう思うのです。
『いざとなったら、歩いてだって帰れる。
歩いてなんて帰れやしないって思うから、ほんとうに帰れなくなるんだ。
かならず帰るっていう気持ちさえあれば、
どんなことをしたって帰ることができるんだ。』、と。
物語の中でいきづく言葉の力強さに、私は酔ってしまいました。
そして、この物語を読んだ日本中の沢山の子ども達が、
私と同じ言葉や、私とは違う様々な場面で
ルドルフやイッパイアッテナの言動に、
自分を重ね、勇気づけられたと思います。
私に、児童文学・物語の素晴らしさを強く印象づけてくれた一冊です。
斉藤洋さんのルドルフシリーズは現在、全4作が出版されています。
どれも、輝いています。
晴れた日 伊達漁港からの東山
17年も前・1997年11月のことでした。
その日、江戸川区の小学校を会場に、
第34回東京都小学校児童文化研究発表大会が行われました。
斉藤先生は、その記念講演で『このごろ思うこと』と題して、
軽妙な語りで、500人を超える参加者を魅了しました。
先生は、1986年に講談社児童文学新人賞に輝いた『ルドルフとイッパイアッテナ』の
創作課程やその作品のエピソードを、面白おかしく話され、
会場はしばしば大きな笑いに包まれました。
しかし、大変残念なことに、当時の私はこの作品を知りませんでした。
従って、先生のお話を十分にくみ取ることができず、
悔しい思いをしました。
翌日、早速買い求め、久しぶりに時間を忘れ、その本を読みました。
この物語は、元飼い猫の小さな黒ねこ・ルドルフと
体の大きな野良猫・イッパイアッテナのお話なのですが、
まず何とも、ふたりの出会いがいいのです。
飼い猫だったルドルフは、当然のごとく名を名乗ります。
「ぼくはルドルフ。あなたの名前は。」と。
そこで、大きなねこは野良猫ゆえ、
あっちではデカと言われ、
こっちではボスと言われ、
むこうではトラと言われるので、
「おれの名前は、いっぱいあってな・・」
と、答えるのです。
するとルドルフは、
「イッパイアッテナさんですか。」
と、応じるのです。
以来ふたりは、「ルドルフ」「イッパイアッテナ」
と、呼び合うのです。
私は、ふたりのこんな出会いのやりとりを読み、
それだけでこの作品に惹かれました。
ルドルフのなんとも飼い猫らしい無垢でまっすぐな性格。
そして、イッパイアッテナの思慮深くて落ち着いた雰囲気。
二匹の猫の見事な描写に、私はまず脱帽させられました。
さて、この物語は、ルドルフが飼われていた家に帰ることを中心に
展開していくのですが、
私はその中である場面に大きく心を動かされました。
あわてて跳び乗ったトラックの荷台でルドルフは気を失い、
一晩かけて東京に着き、とある下町でイッパイアッテナに出会います。
ルドルフは何から何までイッパイアッテナの世話になります。
しかし、ルドルフは、自分をかわいがってくれた
リエちゃんやロープウェイのおねえさんに会いたいのです。
一晩もトラックに揺られるほど、遠く離れたルドルフのいた町は
どこなのか、なかなか分かりません。
ところが、ある日、テレビから流れる町の映像を偶然見て、
その見慣れた風景からルドルフの町が、
岐阜であることを突き止めます。
すぐにでも戻りたいと思うのですが、
その手段がないのです。
電車を乗り継ぐのは難しいし、
トラックの荷台に隠れて跳び乗っても岐阜に行けるとは限りません。
帰る先が分かっても、帰れないのです。
ルドルフはイッパイアッテナや
東京で知り合ったねこ達にやさしく励まされます。
そして、ルドルフは失意の中でこう思うのです。
『いざとなったら、歩いてだって帰れる。
歩いてなんて帰れやしないって思うから、ほんとうに帰れなくなるんだ。
かならず帰るっていう気持ちさえあれば、
どんなことをしたって帰ることができるんだ。』、と。
物語の中でいきづく言葉の力強さに、私は酔ってしまいました。
そして、この物語を読んだ日本中の沢山の子ども達が、
私と同じ言葉や、私とは違う様々な場面で
ルドルフやイッパイアッテナの言動に、
自分を重ね、勇気づけられたと思います。
私に、児童文学・物語の素晴らしさを強く印象づけてくれた一冊です。
斉藤洋さんのルドルフシリーズは現在、全4作が出版されています。
どれも、輝いています。
晴れた日 伊達漁港からの東山
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