ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

戸別訪問 ・ ・ ・ !?

2018-10-20 15:01:11 | 出会い
 それは、8月中旬のこと。
自宅に1本の電話がきた。

 同じ自治会で、顔馴染みになった方から、
「頼まれてほしいことがあるんですが・・」。
 そんな言い出しだった。

 その頼み事とは、
 ・市役所が人探しをしている。
 ・私も頼まれたが、他に引き受け手が中々いない。
 ・そんな難しいことではない。
 ・決められた地区の住宅を見て回って、調査を依頼する。
だいだい、そんな内容だった。

 「なぜ私なの?」
そんなことより、
「引き受け手がいない。」ことに心が動いた。
 さほど面倒な仕事でもないように思えたので、
「私でもできるのなら・・。」
と、お引き受けした。

 数日後、市役所の担当から、
依頼文が届き、一緒に手続き書類の提出が求められた。
 顔写真と共に必要な記載をし、返送した。

 それにしても、久しぶりに目にした行政の文書は、
分かりやすいようで分かりにくいと、感じた。

 10日程置いて、仕事内容の説明会があった。
5年に1度、全国一斉の統計調査だとか。
 市から委託を受けた50人を越える調査員が集まっていた。

 説明は、VTRとパワーポイントを使い、
しっかりと事前準備がされ、行き届いたものだった。
 後は、その場で配られた大小4種類のマニュアルに目を通せば、
理解できると思った。

 今、振り返ると、難しい事は何一つなかった。
しかし、未経験による不安は、年令に関係なかった。
 
 説明会と、マニュアルの読み取りで仕事のおおよそは分かった。
なのに、それが正しい理解かどうか、確信が持てなかった。

 それでも、まず第1ステップが始まった。
調査のお知らせを記したチラシを、
担当地区約150軒の自宅郵便受けに投函するのだ。

 調査員であることを証明する顔写真入りの名札を下げて、
一軒一軒の自宅に、チラシを配布する。

 私は、自宅からやや離れた地区の担当だった。
担当地区には、空き家もあった。アパートもあった。
建築中の住居も、二世帯住宅も、長屋も、いろいろだった。

 あるお宅では、お主人が庭の手入れをしていた。
名札を示しながら、チラシを手渡しした。
 調査は、全世帯ではなく、数軒に1軒の抽出調査だと伝えた。

 「じゃ、当たらないといいけど・・」
「そうですね。でも、当たった時はよろしくお願いします。」
 「その時は、仕方ないよ・・。」
 何気ないやり取りだが、
私が知っている伊達の人と同じ空気感にホッとした。 

 そして、また1人。
 「5年に1度だったか。
ウチは、この前もその前もやったよ。
あれって、どうやって決めてるの。」
 「抽出方法まで、私たちに説明がないので・・」
口ごもる私に、
「いいんだ。いいんだ。
ちょっと言ってみただけだから・・。」

 「案ずるより・・・」だ。
第1ステップは、そんな人の良さに触れながら、
順調にクリアーした。
 
 それから、約2週間後、
市役所の担当から送られた書類には、
30数軒の抽出家屋が明示されていた。

 第2ステップへ進んだ。
抽出されたお宅を戸別訪問するのだ。
 そして、自宅と土地の統計調査をお願いする段取りだ。

 調査票の質問事項に回答する方法と、
インターネットで応じる方法があった。
 統計調査の趣旨と一緒に、調査方法を説明する。

 突然の訪問である。
できるだけ手短で分かりやすい説明を心がけた。

 まずは、訪問宅のインターホンを押す。
応答があると、胸の名札をかざして言う。

 「こんにちは、私は、
国が行っております住宅と土地の統計調査の調査員、
塚原と申します。
 本日は、その調査のお願いに伺いました。」
マニュアル通りを少し明るい口調で伝える。

 「はーい!」
すぐに玄関扉を開けてくれるお宅もある。

 インターホン越しに説明を求め、
「抽出なら、他の家にお願いして・・」
と、言うお宅もある。
 それでも、丁寧に説明すると、
調査票を受け取り、回答を約束してくれた。

 「すみません。もしも変な人ならと、
失礼な口の利き方をして・・・」
 帰り際に、そんな言葉をくれた主婦もした。

 そして、庭でご主人にチラシを渡したお宅も抽出されていた。
インターホンを押し、名札をかざすなり、
突然、聞き覚えのある声が、
 「あれ、ウチ、当たり。そうか、玄関、入って。」
私を快く迎えてくれた。

 一通り調査方法を説明し終えると、
「あれから少し間があったから、
ウチは当たらなかったと思っていたよ。」
 私は、小さく頭を下げた。
「いいんだよ、やり方がわかったから、大丈夫。
ご苦労さんです。」
 笑顔で、見送ってくれた。

 突然の訪問なのに、好意的なお宅が多かった。
初めてのお宅ばかり、そこへの戸別訪問である。

 引き受けたことと言えども、若干気が重かった。
各家の反応が、予測できなかった。
 その分、気を張って、インターホンを押した。
だが、意外だった。
 親しみある応対に、私の気持ちは、軽くなっていった。

 しかし、その日は、おおよそ半数のお宅が留守のようで、
反応がなかった。

 翌日は、休日だ。
午前と午後、2回訪問しようと決めた。
 留守のお宅には、市が用意した訪問の趣旨を書いた置き手紙を、
郵便受けに差し入れることにした。
 その日を終えて、残りが7軒になった。

 次の日、9時前をねらって、訪問してみた。
どこのお宅も、置き手紙が郵便受けにそのままになっていた。

 留守が続いているのか、それとも調査への非協力の意思表示なのか。
ここでも未経験が、不安を駆り立てた。

 それでも、夕方、やや遅い時間帯に再訪問をした。
4軒のお宅が、応対してくれた。

 気をもむことはなかった。
たまたま留守の時に、私が訪ねただけだった。
 「締め切り日までに、回答します。」
どこでも、快諾してくれた。

 また次の日、今度は昼時に、
残りの3軒を訪ねてみた。
 1軒目は、インターホンに応答があった。
「すみません。旅行から今朝帰ったので・・。」
 ホッとしながら、調査依頼をした。 

 2軒目は、2度、3度とインターホンを押してもダメだった。
あきらめかけた時、弱々しい声で、「ハイ」と聞こえた。
 私は、マニュアル通りの自己紹介をした。

 すると、「2日前から、妻も私も、風邪で伏せてまして・・。」
一緒に、咳き込む声も聞こえてきた。

 「じゃ、後日また伺わせて下さい。」
そう言う私に、ご主人は「短い時間で済むなら・・」と、
応じてくれた。

 私は、玄関先で、本当に手短に説明し、調査票を渡した。
そして、期日までに郵送してくれる返事を頂き、玄関のノブを握った。
 その時だ。
奥の間に居らしたのか、奥さんの声が飛んできた。
 「あのう、お帰りになりましたら、
必ずうがいをしてくださいね。
 風邪移ったら大変ですから。」
「わかりました。ありがとうございます。」
 玄関戸を閉めながら、私はぬくまっていた。

 残りの1軒だが、その後もくり返し訪ねてみたが、応答がなかった。
仕方なく、手書きの手紙を添えて関係書類を郵便受けに入れた。
 後日、分かったが、そのお宅も期日までに、調査回答を返送してくれた。

 最後の第3ステップは、
期日までに回答のなかったお宅への再訪問だった。
 「今からでも、お願いします。」
4軒ほど訪ねた。
 どこも、ちょっとした手違いで、すぐに応じてくれた。

 結びになるが、古い話だ。
大学に入学してすぐ、家庭教師のアルバイトをしようと、
学校周辺を、1人で戸別訪問した経験がある。
 それ以来の『戸別訪問』だった。

 “少しの不安感と緊張感を秘めながら”は当時と同じだった。
しかし、今回は、初対面ばかりなのに、
親しみや温もり、そして誠意に出会えた。
 貴重な経験になった。



 
ご近所のお花畑 マリーゴールドがずっと花盛り 

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