音楽の森とタイニーハウス

茨城県山間部のログハウス&音楽研修施設

会津の角鉈とその特徴

2021-05-05 | 山林の道具と打ち刃物
まずは「重信」の鉈。
といっても刻印が薄く判読が難しいので、とりあえず形状と製法、
もう一本持っている「重道」との比較で、会津鍛冶と推測されます。

全体重量(563g、150匁)
使用痕など情報量が多く、素晴らしく味のある鉈です。

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会津鍛冶と鉈

2021-05-05 | 山林の道具と打ち刃物
会津手語り 鍛冶屋編 職人に語られし幻の鍛冶

発売日:2018/12/25
出版社: 歴史春秋出版

【目次】「BOOK」データベースより
巻頭グラビア 会津鍛冶巡りー会津の歴史とともに読み解く
第1章 消えた会津鍛冶の系譜/第2章 地域で変わる鉈の形
第3章 会津の鋸鍛冶/第4章 鑿の形/第5章 包丁いろいろ
第6章 桑切り包丁/第7章 達沢に残された釿

【著者情報】
赤沼博志(アカヌマヒロシ)
1959年福島県旧塩川町生まれ。
福島県立若松商業高等学校。東京写真専門学校。

会津鍛冶の記録として歴史に残る労作です。
こういった民具の記録はあと1世代が過ぎれば忘却の彼方となり、残された道具類も
朽ち果ててしまいます。オークションや露店で見かけるものの中に、こういった文化財
ともいえる逸品が紛れていますが、残念なことにほとんどのものは全くの古道具扱いです。

こちらの手元には上記のムックでも紹介されている会津鍛冶の「重道」(たぶん4代目)
の鉈(後日アップします)、そして続けて紹介する「重信」(製作者が不明です)鉈が
あります。

鉈の形状から探る「カムイ伝」の舞台

2021-01-23 | 山林の道具と打ち刃物


カムイ伝全集【第一部】(小学館)から「カムイ」(C)白土三平

緊急事態宣言のなか大人しく「カムイ伝」を読む。
ご存じのように巨匠=白土三平の代表作ですが、数十年ぶりに細かく見ると
いろいろと気づくところが多い。

巨匠は人物の姿勢や動きの描写力は葛飾北斎以上であり、デッサン力は
手塚治虫を凌ぐと思います。そういった見方を中心にストーリーを追うのは
当然ですが、よく見ると画面に登場する「小道具」も大変に凝っています。



たとえば、この第二巻に出てくる正助の父親ダンズリが、何気なく薪割りをしている
(ブッシュクラフト)場面ですが、この特徴的な鉈はどこの地方なのか?

良く知られているように、日本の各地で使われている鉈は、その地方独特の形状が
ありますが、この鉈のシェイプは越中、あるいは越前の形状に近いと思います。
つまり「カムイ伝」の舞台は能登半島、石川、富山、福井県、あるいは新潟あたり
に絞られるかもしれません。



越中鉈といえば「泊鉈=とまりなた」と呼ばれるもので、上記の写真の形。
※これは自分が持っているものですが、有名な大久保さんの製作ではありません。

三平巨匠がどうやってこの鉈のシェイプを盛り込んだのか?よくわからりませんが、
普通は「鉈」と言ったら秋田鉈のような角鉈を描いてしまうはずです。

この微妙なカーブを持った嘴(くちばし)付の鉈を描くのは、相当に刃物オタクで
あることが類推されるがどうなんでしょうか? 今後も興味は尽きません。

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ブッシュクラフトに草刈はない!?

2021-01-15 | 山林の道具と打ち刃物
                       ※TeravaSkrama、スクラマ200


◎ブッシュクラフトに草刈はない!?

近頃はキャンプブームらしいですが、そのなかでよく聞く
「ブッシュクラフト=Bushcraft」なる言葉。
最近になってその言葉や定義を知りました。

これは贅沢さ(安全度順)に並べると....グランキャンピング(リゾートテント泊)~
普通のファミリーキャンプ~ソロキャンプ(一人用テントで小さな焚火=野外焼き鳥屋??)
~ブッシュクラフトキャンプ(泊らなくてもなんか作ればOKか?)~サバイバルキャンプ
(探検のプロ=死を覚悟)っていう感じでしょうか。

自己生存確認の一端として極限状態を演出するのは、もちろんアリだと思いますが、
それとは違うようです。

ところで…いったいこの「クラフト」をどこでやるんでしょう?

野宿さえも難しい日本で、勝手にテントを張って、拾った枝で直火で焚火するの??
そこらの木を切り倒す?(他人の土地の木々です)…日本の国土は無法地帯ではありません。

神社の「お焚き上げ」でさえも規制されるご時世ですので、森の中で焚火はできません。
また山林は「森林法」や「自然公園法(国立公園、国定公園および都道府県立自然公園)」
によって厳しく開発や伐採を規制されていることが多く、様々な行為が禁止されています。

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シェルターは自己所有の山林なので、取得した15年前から森林整備としての
「ブッシュクラフト?」は散々やってきました。「この戦いは一生続くんだね」
隣のご主人ともよく話していましたが、そのご主人も病に倒れました。

何が言いたいかというと、自分らがやっている森林整備でのチョッピングや間伐は
あくまで生活のため、生存のための行為で、楽しみではありません。鉈鎌などは
数多く所有していますが、コレクションではありません。
道具としての魅力はもちろんありますが、あくまで実用です。

ですので、ブッシュクラフトのような山と親和性を求める形でなく、無限に拡大する森林
の木々や草、倒木を制圧「サプレッション=Suppression」するのが森林生活なのです。

YouTubeのブッシュクラフト映像にちょっと違和感があるのは、まず絶対にやらなくては
ならないことが「省略」されていることです。

それはキャンプする時に平地を確保する際に必要な「草刈」です。
とにかく草刈ほど過酷でつまらないものはありません。

これが省かれているのが「営業キャンプ場」ということでしょう。
だれかが歯を食いしばって、エンジン刈払い機で仕事をしているのです。
※刈払い機もかなり危険なツールですが、家では「殺人マシーン」とか
「かっとび(カット)道具」なんて呼んでます。

これこそサバイバルに近い危険度があってスリル満点なのに、そういった
デンジャラス過程の省略がある。つまり「ブッシュなしクラフト」が
いまの流行なわけであって、やっぱりどこまでいっても安全担保のレジャー
&アクティビティーということになるでしょう。

※写真は最近買ったカッコいい下田鉈とナイフ(TeravaSkrama、スクラマ200)
これは鑑賞用です(えっ!いままでの話はどこに....??)




森林整備用品-その1

2011-10-30 | 山林の道具と打ち刃物
ログ裏の森林整備に使っている道具類。
今回は鉈(ナタ)類の紹介。

上の横置きのモノは「鉈鎌=なたがま」文字通りナタとカマの
ハイブリッドで、ツル類を切るのが得意。しかしけっこう危険な
道具で、長さが中途半端なので加速して振り下ろすと先端の刃が
自分のひざ頭に当たる。昔の農民は武器にも使用していたらしく、
ほとんど殺人ウエポン。滑ると怖いので自転車用のゴムチューブを
細く切って巻きつけている。

縦置き左から「泊鉈=とまりなた」先日紹介済み。森林作業では
不可欠なもので、最強かつ最適な道具。長い間に進化しこのような
形状に至っていると思う。重量と刃のアールが微妙にマッチング
して、かなりの太さの灌木が一振りでズバッと切れる。振りかざすと
やる気満々となるわけだが、先端の形状もあって不安は少ない。

2番目は両刃の「腰鉈」よくある形状だがまだテスト中。ヒノキの
枝打ちで使用してみたいが、ちょっと馴染めないかも。

その右は「うなぎ鉈」これも鉈鎌の仲間だが、携行に便利なので
後述の手鋸(のこぎり)とペアにして鞘=ケースに差し、腰に下げて
山を歩いている。山林関係の方々は「二丁差し」と呼んでいる形態。
先端の曲がり刃がツル切りにたいへん便利。

次は片刃の古い鉈。岩間の栗の家骨董市で購入。トップヘビーで
刃渡りも短め。バランスがよい鉈です。切り倒した木の枝払いに
使ってますが、鋼が硬く俗に言う「蛤刃」なので、思ったように
研げないことが難点。地元の打刃物店に研いでもらう予定。

一番右は「手鋸」ようするに携帯用の鋸で柄の部分が曲がっている
ことが特徴。特に高価なものではないが良く切れる。

※このような伝統的打刃物でも不用意に車に積んでおくと
銃刀法違反になるらしい。よって山小屋常設です。

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■刃物考

そういえば子供の頃は薪風呂だった。ナタで薪を割っていた。
刃が長方形の関東ナタ(東型)だった。当時はいたって日常的なことで
気軽に木片を割いていた。いま都会でナタを振り回したら即逮捕になる
わけで、子供たちも危険だという理由からほとんど刃物を持ったことが
無いという。なにか大切な感覚が失われているような気がしてならない。

山中で刃物を使っていると程よい緊張感があって野生の血が騒ぐ。
と同時に不思議な冷静さが自分を包みこんでいく。山林は常に危険と
隣り合わせなので、刃物を持つとますます感覚がますます鋭敏になってくる。
よく切れる刃物を手にすることは、オルタードステイツ(変性意識)への
入り口であり、生命力を鼓舞するある種の媒体とも考えられる。

都会のナイフマニアも日本刀フリークもそのような感覚を得るため
刃物を収集し愛でる。それで何かを切る必要はない。夜中にナイフを
手にし自分の意識を高揚させる。おのれの命を再確認しているわけだ。

普通の人が唐突に刃物を手にした際、こういった感覚に加えて攻撃性が
目覚めてしまうこともある。例の連続無差別事件も幼少期に刃物を十分に
扱った経験がないため、いったん刃物を持たせると意識コントロールが
制御不能となり、生活用品としてのそれが凶器となってしまう。

そういった意味でも日常的に刃物を使う生活を取り戻す必要があるのでは
ないだろうか。料理の包丁よりもう少しワイルドな刃物使いができる場所
が欲しい。もちろん大人にも子供にも必要だ。キッザニアにも「林業」や
「森林ボランティア」があっても良いだろう。

以前通っていた大学の授業で、鹿島神流の武道実技を取っていた。ある日先生
が学生たちの前で日本刀の抜刀を演武するという。学生たちは興味本位で
すこしざわついていた。やがてその刀身がぬらりと腰から抜かれた刹那、まったく
無言になった。至近距離で抜かれた日本刀を前に、みな一瞬にして「死」
を意識した。生まれて初めてのことで隙をつかれたように息をのんだ。
それを感じ取った先生は、その微妙な静寂のなかで押し殺したようにこう言った。

“みなさん… これが 『真剣にやる』 ということです”


泊鉈(とまりなた)

2011-08-26 | 山林の道具と打ち刃物
富山周辺で使用される林業用の鉈。「越中なた」とも呼ばれるが、長野あたり
でもよく使われるらしい。他のスタイルもいろいろと試してみているが、泊鉈は
切れ味、使い勝手ともに最強で、手にもよく馴染む。先端の「くちばし」が便利で、
切った枝を引き寄せたり、地面を叩いた時に刃こぼれしないように工夫されている。
ちなみに「ひぐらしのなく頃に」というアニメの主人公、竜宮レナが手に持っている
ナタがこの「くちばし付き」タイプらしい。