(1)直近のNHK世論調査での岸田内閣支持率が59%と自らの内閣の最高を記録した。国会終盤での野党立憲民主党提出の内閣不信任案が否決されて、野党の足並みの乱れ、悪さが浮き上がってパラドックス(paradox)として岸田内閣への支持率が高まったか、あるいは防衛力強化、防衛費増強を打ち出したことに国際情勢の変化、脅威に保守志向の国民性が反応したのか理由はあまりよくわからない。
(2)世の中は相次ぐ歯止めのない物価上昇に夏の電力不足と国民生活を圧迫する要件が続いており岸田内閣への批判、不満も多いとみられるが、何しろ安倍元首相、菅前首相には問題も多くそれに比べれば岸田首相の身辺には問題もなく、国会論戦もあたりさわりのない凡戦続きで力不足野党に助けられての一見安定しているように見えるところが岸田内閣支持率の最高に出たのか。
(3)岸田首相は欧米諸国が8%強物価上昇しているのに比べ、日本は2.1%と比較低い上昇率に抑えられているのは岸田内閣の経済対策の効果があらわれていると胸を張った。野党は国会審議ではこれは政府の経済対策の効果ではなく企業の努力だと批判した。
企業の中には石油、輸入原材料高騰を経済自衛能力の高い国民性を考慮して素直に消費者物価に反映、転嫁できないとの声もありそういうことも背景にはあるが、ただ岸田首相の経済対策の効果発言は自民党政権、特に安倍元首相が多用してきた都合のいいデータだけをとらえて「効果」を示す手法がみえる。
(4)岸田首相も新しい資本主義、成長と分配の好循環は骨太の方針では成長論中心のアベノミクス回帰がはっきりしてきて、物価上昇率に対しては欧米の8%強上昇、超インフレ傾向は「労働賃金」が高い経済基盤があり、比較世界的に労働賃金が低い、低ランクにある日本の経済事情との基本的な違いがある。
(5)労働賃金が低い日本では企業努力というより企業が容易に輸入原材料高騰を物価に上乗せ転嫁できない事情があり、それでも13年ぶりの2.1%の物価上昇を招いたということは世界的なインフレ、物価高騰社会の影響であり、日本が岸田内閣の経済対策が効果を上げているエビデンス(evidence)にはならない。
(6)経済基盤、賃金格差の背景を考慮せずに単純に「数値」だけを比較して自らの経済対策の効果を言うのは、趣旨は違うが黒田総裁の問題発言と同じで国民感情、意識とはかけ離れている。