いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

言葉の重さと軽さ。 weight and slight of speech

2010-12-27 19:39:13 | 日記
 (1)政治家の言葉が軽くなった(slight of speech)のは、日本だけでなく米国も同じだ。
 オバマ大統領が「チェンジ」を掲げてスタートした米国社会は、失業率が2ケタ前後を行
ったり来たりの景気悪化、国内経済が回復せずに、医療保険新制度の導入を目指して
イデオロギーの違いから国民負担の増加に米国民の賛同も得られずに、中間選挙では
共和党に大敗して、すっかり有言不実行の大統領になってしまった。

 国民の支持を背景にした力強い米国外交が出来ないので、G8,G20の先進国会議で
も米国の立場は軽んじられて韓国との貿易協定交渉も不発に終わって(後に両国は合意)
米国内では唯一の国際的覇権リーダー国としての地位の地盤低下に批判が集中した。
 しかし、日本のリーダーと違ってオバマ大統領はその後政治姿勢を転換して、議会運営
で共和党に歩み寄って法案を数多く成立させている。

 (2)ロシアとの新戦略兵器削減条約も、共和党の協力が得られずに議会批准が難航して
いたがようやく批准承認されて、核兵器のない世界に向けて一歩前進したかに思われてい
た。ところが、この新戦略兵器削減条約には、「戦術核」が対象外として含まれていないこ
とを共和党から指摘、問題視されて押される形で来年、ロシアとの同削減交渉に乗り出すこ
とになった。

 オバマ大統領は、昨年5月のプラハでの「核兵器のない世界」宣言で実績のともなわない
ノーベル平和賞を授賞した。それほど重い発言(weight of speech)は、世界平和に向けた
強いメッセージではあったがロシアとの戦略兵器削減では核心となる「戦術核」を除外して
いたことになり、共和党の指摘、問題視で同削減交渉に押される形で乗り出すとは、ノーベ
ル平和賞への重い「発言」にも、軽さ(slight)が伺えてきた。

 そもそも核兵器(戦術核)削減協定も、米国保有の核兵器有効期限期限切れ廃棄対策と
の同調とも言われて、また戦術核では米国の10倍は保有すると言われるロシア戦力削減
が戦略目的とも見られている。
 さらに戦術核の削減の代償として、通常兵器の近代化を進めて戦力維持、均衡を保つ政
策を打出しており、オバマ大統領の「核兵器のない世界」による世界平和志向も発信もどう
も中身は軽い。

 (3)オバマ大統領自身が、「核兵器のない世界」の実現は自身が生存中には不可能だろう
という問題意識ではあるが、ノーベル平和賞授賞という先行投資もあって世界平和への期待
感を持たせた発言の重み(weight)、意義は大きい。

 しかしその発言の重さとは反比例する沖縄米軍基地移設問題での米国政府の沖縄固執の
軍事戦略だった。日本政府の当初の「県外、国外」移設にも、また沖縄県民の米軍基地負担
集中への反対の動きにもまったく配慮も見られない米国政府の沖縄固執の政治、軍事姿勢
には、パラドックス(paradox)としてのオバマ大統領の核兵器のない世界、平和志向の発言
の軽さだった。

 (4)政治家の言葉は、国の政治の安定性、経済動向に直接反映されてそれが国民生活に直
結して影響力を波及させる。昨今の余りの言葉の軽さの連続に社会も慣れ切って、政治家の
言葉の力も影響力を失ってきてはいるが(それはそれで問題)、米国大統領の言葉の軽さは
規格のグレードが違う。
 沖縄問題で、世界の覇権リーダー国のオバマ大統領の核兵器のない世界、平和への言葉
の重さの「先行投資」を期待したい気分だ。

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