(1)コロナ社会では変な話もある。政府は企業に対してコロナ感染防止対策のため人混み、人出をできるだけ減らすため、テレワーク、オンライン活用をすすめていながら、足元の国会審議に対しては議員のリモートによるオンライン参加、審議には慎重な姿勢を示している。
(2)野党からは「オンライン出席を(憲法)解釈で含めれば、すぐに実現できる」(報道)と前向きだが、自民党からは「国会オンラインの実現には憲法改正が必要な可能性がある」(同)と慎重な姿勢が目立ち、実現には向かわない。
憲法改正論議となれば手続論から国民投票まで時間がかかりとてもコロナ事情から時間はない。政府が民間企業にはテレワーク、オンラインの積極活用を求めている立場からは、他に方法論がないのかオンライン実現に取り組む姿勢に問題があるようにも思える。
(3)憲法56条には衆参各院の「総議員の3分の1以上の『出席』」を定足数とする規定があり、定足数に達しないと国会開催が無効となる。議員の「出席」については憲法学者の間でも意見が一致していないといわれて、自民党のように国会のオンライン出席には憲法改正が必要との意見があるが国民民主党の玉木代表は国会代表質問で衆院規則改正でオンライン審議を可能にする提案もして改正協力を求めている。
(4)憲法解釈を巡っては安倍元首相が独自の解釈判断で多くの憲法学者が憲法違反とする中で集団的自衛権の行使を数の力で決定したいきさつもあり、国の基本法をないがしろにはできないがコロナ社会で国会だけが浮いているやっかいな問題になっている。
(5)国会審議は選挙による国民の負託を受けた国会議員だけが「出席」して審議、決定できるものであり、オンライン審議となれば国会本会議場に居ない分、議員本人以外の作用、副作用も考えられて、国会に「出席」しない特別な議員が有利に配慮される可能性は否定できない。
(6)国会本会議場に居て、審議し、自らの意思で判断、決定する国民の目に見える行動が正当性を示すものであり、憲法が議員の権利を定める、保障するところでもある。国家議員がやむを得ずに国会審議を欠席する場合は国会議長に届け出る。
(7)国民から負託された議員の権利をどう保障するのかの問題だが、憲法が規定する国会「出席」は国会開催の充足数の問題であり、届け出た欠席議員の意思、決定権は議員の個別の権利義務関係とみればその方法論はいくつか考えられる。
(8)オンライン参加の資格を厳格にして適用し、必要な議員には現行規定で実施できるようにすることも国会、議員の国民に対する責任と義務だ。もちろん国会本会議場に「出席」して議論し、審議して決定することが国会議員の使命であり責務であることには変わりはない。