先日書いた土井善晴著「一汁一菜でよいという提案」に続いて、
この提案に至るまでを書いた、土井氏の自伝的な本、
「一汁一菜でよいと至るまで」(土井善晴著・新潮新書)
を読みました。
これがまたいい本でねえ、
ちょっと読み始めたらもう一気に最後まで、という感じでした。
一流の人ってやっぱり違うのね、というのが最初に感じた印象です。
土井善晴氏は料理研究家の土井勝氏のご子息です。
私がまだ子どもだった頃、NHKの「きょうの料理」に出演していた土井勝氏のことはよく覚えています。
大阪弁で語るやさしくて面白いおじさんという印象でした。
土井善晴氏もまた土井勝氏によく似たやさしくて面白い人です。
でも、彼の人生に一貫して流れているのは一流を目指すという真摯な姿勢でしょう。
フランスに留学してフランス料理を学び、帰国してからは「味吉兆」で和食の髄を学び、一流の料理人になるのですが、その彼が行き着いたのが、
家庭料理だったということ。
父親がこだわった「おふくろの味」に行き着いたというのは、自然の成り行きだったのかもしれません。
しかし、そこに行き着くまでに、一流を極めるという姿勢。
フランス料理と日本料理の違いは、「自我の発露」と「他者に委ねる」の違いであるとか、
懐石料理の極意とは、雑味を徹底して取り除き「澄ませる」「きれいである」を大事にする。それは日常から離れた非日常の世界に入るためであり、日本には古来こうしたあの世とこの世を繋げる「澄ませる」という文化があるのだとか・・
それが「ケ・ハレ」という思想に繋がり、家庭料理の美しさに行き着いて、
「一汁一菜でよい」という発想が生まれるわけです。
非常に哲学的な熟慮された思想がやさしい口調で語られます。
だからこそ、彼の「一汁一菜」は説得力を持つのですね。
「一汁一菜でよい」というのは、家事を楽にしようとか、手抜き料理をしようという発想とは真逆のところから来ているのです。
この本を読んでいると、まるで土井善晴氏が隣でしゃべっているかのような親しみを覚えます。
それでいて、内容は濃くどこまでも深い。
何度も繰り返し読んで、座右の書にしたい一冊です。
是非手に取って読んでみてください。
超々お勧めです!!
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