尽きない議論
これまで何度も繰り返されてきた野良猫へのエサやり議論。今でもGoogleやYahooで「野良猫x餌やり」検索すると、85万件以上もヒットするほど盛んに議論されています。関連投稿サイトなどへの書き込みも加えると、途方もない数の"意見"が展開されているのです。この議論は勝ち負けではなく合意形成のみがゴールとなり得るのですが、それがなかなか難しい。
何事(物)に対しても絶対に嫌(生理的に受け付けない)という人はいるので、100%合意というのは初めから無理だし、結局、妥協点を探っていくしかないのです。85万件のネット意見をすべて読むことはできないが、全体としては、エサやり反対のエキセントリックな意見が目立ち(いわゆる「動物愛誤」の輩)、冷静で客観的な意見でも、(無闇な)エサやりには反対しているものが多いようだ。ただし、同じ人の書き込みが繰り返されているので、実態を把握するのは難しい。
自分もソトチビやダイフクにエサを与えていますが、反対論には納得できることも多い。例えば「自己満足」という指摘。身の周りのノラにだけエサやってもどうにもならないのに、それでも彼らには幸せになってほしいと願っている。 一方ノラがいる限りどこかでフンとかするわけで、集まらずに分散していればいいのかな、と思ったりもします。
大方のアンケートでニャン好きが4割を超え、「気にならない」まで含めると6~8割にもなるのに、野良猫エサやりに関しては逆に6~8割が「やらない方がいい。」 この結果はネットなどの情報に影響されるところが大きいが、なぜ影響されるのかと言うと、他人に迷惑をかけてはいけないという常識があるからです。(※引用したアンケート調査は東京都、神奈川県、千葉県、石川県、環境省、niftyニュース)
しかし、ノラの存在自体が迷惑と言うのなら、この世から消し去らなくてはならない。一方動物愛護法によれば、弱っているノラにはエサをあげなければいけません。この法律は、対象動物(野良猫も含まれる)は救わなければならないが、それによって人間社会がより豊かになることを前提としているのです。
以前にも少し書きましたが(「頑張れ、ノラを守る法律たち」)、この動物愛護法のわかりにくさがこれだけの議論を起こしているのかもしれません。そこで今回は、司法はどう判断したのか、ということを追求してみました。
尚、本記事は、本シリーズ「その1」「その2」をはじめ「エサやりおばさん」「ノラたちの幸せを願って」「ノラたちを守る道づくり」「雑感:エサをやるなは殺せと同じ」など、エサやり問題に関する自分の過去記事の内容を検証する目的も兼ねています。
ソトチビ(左)とダイフク
(食べ物をくれる)いい人に出会うことが、ノラにとっては死活問題なのです
共通の目的、そして共通の敵
この3ヶ月間は毎夜毎夜、関連する本や意見を読みまくっていました。特に反対論に重点を置いて読みましたが、まあ相手を罵倒するだけが目的の救われない書き込みも実に多く、それこそこっちが救われない思いもしましたが、でも読めば読むほど、強く湧いてくるものがありました。 ニャンボラさんもエサやり反対派も客観論の第三者も含めて、ノラの数を減らしたいという思いはみな同じじゃないかということです。
アンケートでエサやりをいけないと答えるもうひとつの理由として、「エサを与えるとノラの数が増える(元気になって繁殖力が増す)」というのがあります。実際、猫の出産能力を基にして野良猫の繁殖力を論じたサイトはネット上にも多い。しかしノラの場合は1才生存率が10%そこそこしかなく、その後の生存率も高くない。しかも、エサやりと繁殖頻度との因果関係は諸説あれど、まだ何も明らかにされてないのが実情です。
むしろ目の前の問題は、本シリーズその2で推計したように捨て猫や迷い猫の数が想像以上に多いことだ。あのエサやり議論のエネルギーを、捨て猫迷い猫の防止や営利目的含む繁殖の抑制強化に向けることができたらと思う所以です。
テンちゃん:長い夜は狭い事務所でひとり、昼間はリード付きの生活です
でも安心安全と、長生きのキップを手に入れました
野良猫エサやり関連裁判の判例
裁判の判例に関する記事もネット上に溢れていて、先の85万件の中でも最も多い。確かに比較的客観的に紹介しているサイトもあるけど(特に弁護士さん)、殆どがその紹介の仕方に色がついていて、明らかに歪めているものも少なくありません。そこで、法律文章を読むのは大変なことではありますが、興味のある方は以下に掲載する原文を読むことをお勧めします。
ノラへのエサやりが関係した裁判で結審した例は意外と少ない。お店の弁護士さんに聞くと「そりゃ当然だ」とのこと。ただしそれは、このような係争が少ないことを意味するのではなく、裁判で決着するまで争うというケースが少ないと考えるべきとのこと。
まず第一に、裁判途中や裁判に入る前に和解すれば記録に残らない。裁判となれば弁護士費用や手間ひまが馬鹿にならないから、よほど腹に据えかねたとかじゃない限り結審までは行かないのが普通だと。 要は人間関係が悪かったのも原因のひとつで、うーん、ノラたちはやっぱりここでも被害者なのかもしれないな。
判決文は裁判所がHPなどで公開しています。ここではネット上の議題はほぼこの3件に集約されている、と言っても過言でない3つの裁判事例について、その判決文(原文のまま)を紹介します。
いずれも、長年のエサやりによって集まった野良猫による近隣(原告)の被害(主に糞害)が認められ、慰謝料等含む損害賠償金の支払いを命じられた裁判例です。
神戸地裁野良猫餌やり裁判判決
(平成15年6月、40万円の餌やり被害を認定。他に営業妨害などで150万円)
東京地裁立川支部野良猫餌やり裁判判決
(平成22年5月、204万円の餌やり被害を認定、規約違反として餌やり差し止め命令)
福岡地裁野良猫餌やり裁判判決
(平成27年9月、55万円の餌やり被害を認定)
なるべく客観的に努めた要約;
1.根拠となる法律は民法
①裁判になる前に、原告からの再三の申し出を無視した。
②自分の行為で隣人が迷惑していることを知り得たのに対応しなかった。
③自分の行為(餌やり)と隣人の迷惑との因果関係が立証された。
④損害賠償および慰謝料請求の一部が認められた。
2.エサやり自体を否定していない
※差し止め命令のある判決は、その場所がペット不可の集合住宅だったから
3.動物愛護法の精神を尊重
①被告のノラを可愛そうだと思う気持ちは尊重されるべき(福岡地裁判決4-2-1)
②被保護猫への給餌をみだりに中止すると50万以下の罰金(東京地裁判決32頁)
③地域猫活動の確認と認定(東京地裁判決28~32頁)
自分の感想を言わせて頂くと、こんなことで急にエサやりを止められたノラたちはどうなっちゃったのか、そっちの方が気がかりなんですけどね。(50万以下の罰金)
エサやり関連判決の根拠となる法律(条令)
動物愛護法の他にも、エサやりに関して地域単位で議決、制定したところがあります。また、マンションオーナーが規約として制定し、これに同意して入居した場合はその規約が法的に有効とされ、居住者は従わなければなりません。(ペット飼育不可など)
ここでは、やはりネット上でよく議論される3つの条例について原文を紹介します。
京都市動物との共生に向けたマナー等関する条例
和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例(改正前)
和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例(改正要旨)
荒川区良好な生活環境の確保に関する条例
総じて動物愛護法と同様で、"みだりに"野良猫に餌を与えることを禁止しています。和歌山県では改正されて継続しないエサやりがOKになり、本年4月より施行されています。一方北海道北斗市のように、条例では「野良猫にはみだりに餌を与えてはならない」としながら、HPでは完全禁止を明記している自治体もあります。(これは法律違反)
いずれにしても、要は他人に迷惑をかけてはいけないという、エサやりに限ったことではない一般常識の話だ。しかし、不謹慎な言い方かもしれないけどセクハラ問題と似ていて、人によってあるいは人間関係によって許容限度が異なったりするのかもしれない。
先に述べたように、エサやりがいなくてもノラはいるのだから、庭にフンがあったりネズミや鳥の死骸があったりなんてこともあるだろうし、だからと言って隣人に文句を言う人はいない。結局、どこまでが許容限度なのかは迷惑と感じる側が決めることなのです。
ニャー(上)とみう
数奇な運命を辿ってきた2匹はオジンの家で合流し、共同生活を始めました
組織化すべきエサやり
お腹を空かしたノラにエサをやることは善行です。まさに人間愛に溢れた行為だし、お子さんの情操教育にも格好のテーマです。人目をはばかることなく堂々とやりましょう。だけど、街を汚してはいけません。そのために誰かが困っていると知ったら、真摯に対応して解決策を協議しよう。隠れてこっそりやるなんて、自分だけでなく他の善意のエサやりさんや、ノラたち自身の立場まで悪くするだけです。
とは言え、ここまでエサやり反対の雰囲気が広がってしまうと、個人で突き進むのはなかなか勇気が要るのも事実。だから、横の繋がりをもっと大事にしよう。三人寄れば文殊の知恵。エサやりさんたちが互いに連携することで諸問題の解決も見つけやすくなるし、暴走するエサやりさんを防ぐこともできるのです。
最後に、エサやりさんにとって心強い情報をひとつ。
東京都、石川県や神奈川県のアンケート調査には「ノラを見たらエサを与えるか」という設問がありました。その結果は東京6%、石川4~9%(市による)、神奈川4%(世話まで含む)で、他は無関心か反対系の意見。この数字、圧倒されているようで実はなかなかのものなんです。
人口密度にもよるけど、普通の住宅地なら自分の地域には200~2000人くらいの人が暮らしているので、6%としても12~120人くらいのエサやりさんがいることになるのです。しかもニャン好き派の"予備軍"も結構多いことを考えれば、品行方正にしてイメージアップを図れば仲間がどんどん増えること請け合いです。
我々が戦うべきは、あくまでも前述した共通の敵。 道草を食ってる時間はありません。
<訂正>
その1で千葉県の野良猫数34万匹と報告し、その2で多すぎるかと疑問を投げかけましたが、その後見つかった同県の調査では野良猫数17万匹でした。(それでも東京都の8万匹と較べれば随分多い。)
「ノラたちとの共存を目指して」:予告編(期日未定)
その1 資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題)2017.2.27
その2 現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち)2017.5.31
その3 エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの)
その4 一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みうとテンちゃんの日常)
その5 闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」
その6 原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動)
その7 形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う)
その8 地域猫問題・続編「殺処分ゼロに向けて」(目的達成のために必要なこと)
これまで何度も繰り返されてきた野良猫へのエサやり議論。今でもGoogleやYahooで「野良猫x餌やり」検索すると、85万件以上もヒットするほど盛んに議論されています。関連投稿サイトなどへの書き込みも加えると、途方もない数の"意見"が展開されているのです。この議論は勝ち負けではなく合意形成のみがゴールとなり得るのですが、それがなかなか難しい。
何事(物)に対しても絶対に嫌(生理的に受け付けない)という人はいるので、100%合意というのは初めから無理だし、結局、妥協点を探っていくしかないのです。85万件のネット意見をすべて読むことはできないが、全体としては、エサやり反対のエキセントリックな意見が目立ち(いわゆる「動物愛誤」の輩)、冷静で客観的な意見でも、(無闇な)エサやりには反対しているものが多いようだ。ただし、同じ人の書き込みが繰り返されているので、実態を把握するのは難しい。
自分もソトチビやダイフクにエサを与えていますが、反対論には納得できることも多い。例えば「自己満足」という指摘。身の周りのノラにだけエサやってもどうにもならないのに、それでも彼らには幸せになってほしいと願っている。 一方ノラがいる限りどこかでフンとかするわけで、集まらずに分散していればいいのかな、と思ったりもします。
大方のアンケートでニャン好きが4割を超え、「気にならない」まで含めると6~8割にもなるのに、野良猫エサやりに関しては逆に6~8割が「やらない方がいい。」 この結果はネットなどの情報に影響されるところが大きいが、なぜ影響されるのかと言うと、他人に迷惑をかけてはいけないという常識があるからです。(※引用したアンケート調査は東京都、神奈川県、千葉県、石川県、環境省、niftyニュース)
しかし、ノラの存在自体が迷惑と言うのなら、この世から消し去らなくてはならない。一方動物愛護法によれば、弱っているノラにはエサをあげなければいけません。この法律は、対象動物(野良猫も含まれる)は救わなければならないが、それによって人間社会がより豊かになることを前提としているのです。
以前にも少し書きましたが(「頑張れ、ノラを守る法律たち」)、この動物愛護法のわかりにくさがこれだけの議論を起こしているのかもしれません。そこで今回は、司法はどう判断したのか、ということを追求してみました。
尚、本記事は、本シリーズ「その1」「その2」をはじめ「エサやりおばさん」「ノラたちの幸せを願って」「ノラたちを守る道づくり」「雑感:エサをやるなは殺せと同じ」など、エサやり問題に関する自分の過去記事の内容を検証する目的も兼ねています。
ソトチビ(左)とダイフク
(食べ物をくれる)いい人に出会うことが、ノラにとっては死活問題なのです
共通の目的、そして共通の敵
この3ヶ月間は毎夜毎夜、関連する本や意見を読みまくっていました。特に反対論に重点を置いて読みましたが、まあ相手を罵倒するだけが目的の救われない書き込みも実に多く、それこそこっちが救われない思いもしましたが、でも読めば読むほど、強く湧いてくるものがありました。 ニャンボラさんもエサやり反対派も客観論の第三者も含めて、ノラの数を減らしたいという思いはみな同じじゃないかということです。
アンケートでエサやりをいけないと答えるもうひとつの理由として、「エサを与えるとノラの数が増える(元気になって繁殖力が増す)」というのがあります。実際、猫の出産能力を基にして野良猫の繁殖力を論じたサイトはネット上にも多い。しかしノラの場合は1才生存率が10%そこそこしかなく、その後の生存率も高くない。しかも、エサやりと繁殖頻度との因果関係は諸説あれど、まだ何も明らかにされてないのが実情です。
むしろ目の前の問題は、本シリーズその2で推計したように捨て猫や迷い猫の数が想像以上に多いことだ。あのエサやり議論のエネルギーを、捨て猫迷い猫の防止や営利目的含む繁殖の抑制強化に向けることができたらと思う所以です。
テンちゃん:長い夜は狭い事務所でひとり、昼間はリード付きの生活です
でも安心安全と、長生きのキップを手に入れました
野良猫エサやり関連裁判の判例
裁判の判例に関する記事もネット上に溢れていて、先の85万件の中でも最も多い。確かに比較的客観的に紹介しているサイトもあるけど(特に弁護士さん)、殆どがその紹介の仕方に色がついていて、明らかに歪めているものも少なくありません。そこで、法律文章を読むのは大変なことではありますが、興味のある方は以下に掲載する原文を読むことをお勧めします。
ノラへのエサやりが関係した裁判で結審した例は意外と少ない。お店の弁護士さんに聞くと「そりゃ当然だ」とのこと。ただしそれは、このような係争が少ないことを意味するのではなく、裁判で決着するまで争うというケースが少ないと考えるべきとのこと。
まず第一に、裁判途中や裁判に入る前に和解すれば記録に残らない。裁判となれば弁護士費用や手間ひまが馬鹿にならないから、よほど腹に据えかねたとかじゃない限り結審までは行かないのが普通だと。 要は人間関係が悪かったのも原因のひとつで、うーん、ノラたちはやっぱりここでも被害者なのかもしれないな。
判決文は裁判所がHPなどで公開しています。ここではネット上の議題はほぼこの3件に集約されている、と言っても過言でない3つの裁判事例について、その判決文(原文のまま)を紹介します。
いずれも、長年のエサやりによって集まった野良猫による近隣(原告)の被害(主に糞害)が認められ、慰謝料等含む損害賠償金の支払いを命じられた裁判例です。
神戸地裁野良猫餌やり裁判判決
(平成15年6月、40万円の餌やり被害を認定。他に営業妨害などで150万円)
東京地裁立川支部野良猫餌やり裁判判決
(平成22年5月、204万円の餌やり被害を認定、規約違反として餌やり差し止め命令)
福岡地裁野良猫餌やり裁判判決
(平成27年9月、55万円の餌やり被害を認定)
なるべく客観的に努めた要約;
1.根拠となる法律は民法
①裁判になる前に、原告からの再三の申し出を無視した。
②自分の行為で隣人が迷惑していることを知り得たのに対応しなかった。
③自分の行為(餌やり)と隣人の迷惑との因果関係が立証された。
④損害賠償および慰謝料請求の一部が認められた。
2.エサやり自体を否定していない
※差し止め命令のある判決は、その場所がペット不可の集合住宅だったから
3.動物愛護法の精神を尊重
①被告のノラを可愛そうだと思う気持ちは尊重されるべき(福岡地裁判決4-2-1)
②被保護猫への給餌をみだりに中止すると50万以下の罰金(東京地裁判決32頁)
③地域猫活動の確認と認定(東京地裁判決28~32頁)
自分の感想を言わせて頂くと、こんなことで急にエサやりを止められたノラたちはどうなっちゃったのか、そっちの方が気がかりなんですけどね。(50万以下の罰金)
エサやり関連判決の根拠となる法律(条令)
動物愛護法の他にも、エサやりに関して地域単位で議決、制定したところがあります。また、マンションオーナーが規約として制定し、これに同意して入居した場合はその規約が法的に有効とされ、居住者は従わなければなりません。(ペット飼育不可など)
ここでは、やはりネット上でよく議論される3つの条例について原文を紹介します。
京都市動物との共生に向けたマナー等関する条例
和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例(改正前)
和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例(改正要旨)
荒川区良好な生活環境の確保に関する条例
総じて動物愛護法と同様で、"みだりに"野良猫に餌を与えることを禁止しています。和歌山県では改正されて継続しないエサやりがOKになり、本年4月より施行されています。一方北海道北斗市のように、条例では「野良猫にはみだりに餌を与えてはならない」としながら、HPでは完全禁止を明記している自治体もあります。(これは法律違反)
いずれにしても、要は他人に迷惑をかけてはいけないという、エサやりに限ったことではない一般常識の話だ。しかし、不謹慎な言い方かもしれないけどセクハラ問題と似ていて、人によってあるいは人間関係によって許容限度が異なったりするのかもしれない。
先に述べたように、エサやりがいなくてもノラはいるのだから、庭にフンがあったりネズミや鳥の死骸があったりなんてこともあるだろうし、だからと言って隣人に文句を言う人はいない。結局、どこまでが許容限度なのかは迷惑と感じる側が決めることなのです。
ニャー(上)とみう
数奇な運命を辿ってきた2匹はオジンの家で合流し、共同生活を始めました
組織化すべきエサやり
お腹を空かしたノラにエサをやることは善行です。まさに人間愛に溢れた行為だし、お子さんの情操教育にも格好のテーマです。人目をはばかることなく堂々とやりましょう。だけど、街を汚してはいけません。そのために誰かが困っていると知ったら、真摯に対応して解決策を協議しよう。隠れてこっそりやるなんて、自分だけでなく他の善意のエサやりさんや、ノラたち自身の立場まで悪くするだけです。
とは言え、ここまでエサやり反対の雰囲気が広がってしまうと、個人で突き進むのはなかなか勇気が要るのも事実。だから、横の繋がりをもっと大事にしよう。三人寄れば文殊の知恵。エサやりさんたちが互いに連携することで諸問題の解決も見つけやすくなるし、暴走するエサやりさんを防ぐこともできるのです。
最後に、エサやりさんにとって心強い情報をひとつ。
東京都、石川県や神奈川県のアンケート調査には「ノラを見たらエサを与えるか」という設問がありました。その結果は東京6%、石川4~9%(市による)、神奈川4%(世話まで含む)で、他は無関心か反対系の意見。この数字、圧倒されているようで実はなかなかのものなんです。
人口密度にもよるけど、普通の住宅地なら自分の地域には200~2000人くらいの人が暮らしているので、6%としても12~120人くらいのエサやりさんがいることになるのです。しかもニャン好き派の"予備軍"も結構多いことを考えれば、品行方正にしてイメージアップを図れば仲間がどんどん増えること請け合いです。
我々が戦うべきは、あくまでも前述した共通の敵。 道草を食ってる時間はありません。
<訂正>
その1で千葉県の野良猫数34万匹と報告し、その2で多すぎるかと疑問を投げかけましたが、その後見つかった同県の調査では野良猫数17万匹でした。(それでも東京都の8万匹と較べれば随分多い。)
「ノラたちとの共存を目指して」:予告編(期日未定)
その1 資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題)2017.2.27
その2 現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち)2017.5.31
その3 エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの)
その4 一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みうとテンちゃんの日常)
その5 闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」
その6 原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動)
その7 形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う)
その8 地域猫問題・続編「殺処分ゼロに向けて」(目的達成のために必要なこと)