アルフォンソ・リンギス『信頼』(青土社)はリトアニア出身のアメリカ人哲学者による旅をめぐる思索の書。
世界の秘境への旅を通じて、著者はその場での震えやエクスタシーを言葉で伝えようとする。それは神聖なモノに畏怖し共振する心を回復する試み。エロティシズム漂うチェ・ゲバラ論に真骨頂がみられる。
シリ・ハスヴェット『フェルメールの受胎告知』(白水社)は、ジョルジョーネの「嵐」をはじめとして、ヨーロッパの画家の作品を取りあげ、絵を見たときに何を感じたかについて、その内省的なドラマを綴ったもの。
著者はそこにいない生身の存在としての画家(亡霊)と対峙しようとしていて、そこが凡百の美術評論家の絵画論と異なる。
リチャード・パワーズ『囚人のジレンマ』(みすず書房)は、「戦争の世紀」と呼ばれる二十世紀を牽引した米国の過去を振り返りながら、仮想の歴史(偽史)を紛れ込ますことによって、現在と未来に対して提言をおこなう。
テロとの戦いといいながら、戦争をおこなっていては、<囚人のジレンマ>から抜けだせない。このゲームの最大の逆説は、自国の利益だけを追求することが逆に自国を破滅に追いやる可能性があるということだから。
「2007年の収穫から」(『読書人』2007年12月21日号より)
世界の秘境への旅を通じて、著者はその場での震えやエクスタシーを言葉で伝えようとする。それは神聖なモノに畏怖し共振する心を回復する試み。エロティシズム漂うチェ・ゲバラ論に真骨頂がみられる。
シリ・ハスヴェット『フェルメールの受胎告知』(白水社)は、ジョルジョーネの「嵐」をはじめとして、ヨーロッパの画家の作品を取りあげ、絵を見たときに何を感じたかについて、その内省的なドラマを綴ったもの。
著者はそこにいない生身の存在としての画家(亡霊)と対峙しようとしていて、そこが凡百の美術評論家の絵画論と異なる。
リチャード・パワーズ『囚人のジレンマ』(みすず書房)は、「戦争の世紀」と呼ばれる二十世紀を牽引した米国の過去を振り返りながら、仮想の歴史(偽史)を紛れ込ますことによって、現在と未来に対して提言をおこなう。
テロとの戦いといいながら、戦争をおこなっていては、<囚人のジレンマ>から抜けだせない。このゲームの最大の逆説は、自国の利益だけを追求することが逆に自国を破滅に追いやる可能性があるということだから。
「2007年の収穫から」(『読書人』2007年12月21日号より)