都留文科大学・高田教授の報告【其の五】
3 断てなかった絆
津波に巻き込まれ、死亡もしくは行方不明になった人々の多くが、家屋の中で被災している。その中でも搬出できなかった高齢者とその介護にあたっていた人が共に、津波が来ることを解っていながら被災した事例が聞かれた。Aさんの妻(56才)も早い時点で一旦は義父を置いて高台に避難するが、やはり寝たきりの義父が心配になって再び自宅に戻る。家を出たり入ったりしていたところを隣人に「危ないから上にあがって。」と声をかけられている。津波は1階天井まで浸入。遺体になって玄関前の瓦礫の下から12日になって発見される。義父は辛うじて生きて発見されるが12日の夜半に死亡。意識はほとんどなく、話しかけた時に目が動く状態であったが、Aさんから嫁が亡くなったことを伝えられると涙を流した。このように高齢者と嫁の組み合わせで両者とも亡くなった事例が4所帯で聞かれた 。[i]
親子で亡くなった事例としては、70代の母親と40代の息子が国道沿いの家で亡くなっている。また家に居たが天井まで水位が上がり、母親(80代)を娘が裏山に救出したが、山中で低体温となり亡くなっている。この地区では高齢者だけが家に居て亡くなったという事例を聞くことはなかった。「てんでんこ」とは知りつつも断ちきれなかった現実がいくつもある。
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