朱川 湊人(しゅかわ みなと)作
土曜日の朝8時5分からの
NHKラジオ文芸館
朗読 遠藤 亮
気がつくと、蒼い風景が、広がっていた。
自分ははだしで立っていた。
ふと見ると、船が一艘と、
船頭らしき男が居る。
お前は、自殺したのだ、
自殺した者は、魂ばなれに、
時間がかかるのだ。
そういって、船頭は
『未来ごみ』
を一つづつ捨てていく。
これは、お前が未来に出会う
恋人だ、
これは、お前が書いた本が
賞を取った時のもの、
これは、お前が結婚するはずの男、
これは、子ども・・・・
生きることに絶望した自分に、
こんな未来が
あったなんて
娘は、死ぬのは嫌だ。
もう一度生き返りたいと言った。
船頭は、まだ、間に合うかも知れないと、必死で岸まで船を漕いだ。
やっと、岸に着くと、靴を差し出した。
これは、お前の命を惜しんで集まった家族の思いが作った靴だ。
これを履いて、戻れと。
寿命まで頑張れよ!と。
中学生が、自殺などの記事を見ると、この話を聞かせてあげたくなる。
今が辛くても、ずっと今が続く訳じゃないよと、言いたい。
未来が、あるのだと。