羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

英文でよむ日本国憲法

2016年05月22日 11時51分59秒 | Weblog
 5月12日(木)以来、一つのテーマにはまって、時間がゆるせば資料と本を読んでいる。
 すべては同日の新聞記事から始まった。
 今年、2016年は戦後の新憲法公布70年に当たる。
 そこで朝日新聞は、さまざまな形で「憲法」について特集を組んでいる。
 私がはまるキッカケになったのは、12日付け「英文で読む日本国憲法」オピニオン&フォーラム17面の記事だった。
 アメリカ文学者で村上春樹氏と親しい間柄にある柴田元幸氏へのインタビュー記事である。
《主語は「私たち」絶対に戦争しない 気合いの入った表現》
 見出しにはそうある。
 昨年、『現代語訳でよむ日本の憲法』を彼が翻訳し、法律用語監修に木村草太氏で、アルク社から出版してあった。
 
 この本が届くまでのあいだ、Web上で検索できること、Amazonで手に入る本等々を調べてみた。
 国会図書館の『日本国憲法の誕生』サイトはすばらしく精緻な情報を、大量に提供してくれている。
 わざわざ出向かなくても、パソコンから自由に取り出し、印刷することができる。

 特筆すべきは一冊の本である。
『日本国憲法成立史』佐藤達夫著 佐藤功補訂 有斐閣 第四巻の内容である。
 1946(昭和21)年 第九〇回 帝国議会の審議ー衆議院 “憲法会議”とも言うべき会議の開幕から始まっている。
 ここから新しい日本の憲法が審議されて、11月3日には公布されるのである。

 審議の内容を速記録を起こしたままの文章で掲載されている。
 漢字ととカタカナの綴り方は、慣れないうちは手間取った。ところが漢字と平仮名の文章は、ついつい斜め読みをして分ったつもりになっているのに、それができない。そのことで次第に施政方針演説やそれに対する質疑など、丁寧に読んでしまうのである。
 だんだん面白さが増して、この問題の深みにはまっていく快感に酔っている自分に苦笑していた。

 さて、憲法議会が開催されている国会を出ると、そこには食料事情の極度の窮迫から餓死者が続出する敗戦後の現状があった。
 国会図書館のサイト「日本国憲法の誕生」でも、『現代語訳でよむ日本の憲法』でも、1945年7月26日に「ポツダム宣言」受諾から1946年11月3日日本国憲法公布、本の方はさらに1947年5月3日日本国憲法施行までの年表を読むことができる。
 しかし、私はその年表に、佐藤達夫版の注にあった食料問題に対する大衆運動活動を『近代日本総合年表』岩波書店 を参照して加えてみた。

 1945(昭和20)年11月1日 日比谷公園・飢餓対策国民大会 飢餓者続出 上野駅では1日最高6人
 1946(昭和21)年5月1日 復活メーデー
 1946(昭和21)年5月12日 世田谷(米ヨコセ)区民大会 宮城へデモ 初めて赤旗が坂下門をくぐる
 1946(昭和21)年5月19日 皇居前広場で「飯米獲得人民大会」の名による“食料メーデー”(約20万人参加)上奏文を決議。
 1946(昭和21)年5月20日 “大衆的デモンストレーションに関するマッカーサー元帥の声明”「組織された指導の下に、集団的暴行と、暴力による脅迫への傾向を増しつつある事実」について国民の注意を喚起した。
 1946(昭和21)年5月24日 天皇 食料事情に関して録音放送(家族国家のうるわしい伝統によって食料難克服を希望する由) *「日本ニュース」、それを聞いた市民の声は批判的であった。その後、アメリカ軍が小麦粉を配給 
 1946(昭和21)年6月13日吉田内閣は、“社会秩序保持に関する声明”と“食料危機突破に関する声明”を発表“
 
“憲法よりも食料を”と訴えた政党のはじめての議会における演説に注目された、とある。

 一日でも、一週間でもはやく憲法をもって国際的に日本の立場を鮮明に表明しなければならなかった事情と、国内の飢餓問題は、どちらも緊急の逼迫した問題であったことが、佐藤達夫の著書からは伝わって来る。

 読み進むと第九条に関する質疑には次のような記述を見つけた。
《戦争の放棄 「敗戦によって武装解除した国が、戦争をしないというのは、あたかも赤貧に陥って倹約するというのと同じことである。むしろ、進んで永世局外中立運動を起こすべきではないか。」北昤吉議員》
 ここで、一瞬、思わず、ページをめくる手を止めてしまった。

 さて、今日のところは今朝になって近藤早利さんからメールで知らされたNHK「日本国憲法誕生」を紹介しておわりとしておきたい。
 昨日の朝日カルチャー「野口体操講座」で話をしたこととも重なって、佐藤達夫もキーマンとして出てきます。
 ぜひ、見てください。
コメント
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