昨日から降り始めた雨はやまない。
いつもならまず二階の窓をすべて開け放って、外気を室内に呼び込むのが日課になっている。
今朝はそれも出来ず。
閉め切った部屋で体操をしていると、なんとなくただよう匂いがある。
はたッ!と気づいた。
本の匂いである。本と言っても新刊本ではない。
ようやく届いて揃いはじめた古書の匂いである。
『新・雨月』『満州国演義』がどのような資料によって書かれたのか、またその資料をどのように活かすのか、そんな視点から読んでいた。作者にならって、何冊かの本を取り寄せる手配をしている。
野口三千三の生まれ育った群馬県や村の記録、そして戦前戦中の日本から戦後の日本に変わっていく大本を押させておきたくて選び出した本である。
昨日、届いた一冊を夜になってめくっていた。1620頁の分厚い『吉岡村誌』である。
なるほど作家が郷土史を丁寧にひも解き、作品に反映させていくその過程が見えてくるようだ。
ページをめくるごとに興味深い内容が目に飛び込んで来る。
なかでもドキッとする住所と名前を見つけた。
「八 兵事」の章である。
《明治以降の事変、戦没等・戦没者芳名》の記録である。
日清戦争以来、各種の事変、戦役に従軍し、不幸にして戦没された方々の芳名を記録し、そのご冥福を祈る。(三二二名)と前書きにあり、[亡くなった年月日 氏名 官位 本籍 死没年月日 年令 場所 遺族]が縦書きで記されている。
昭和18年12月13日 氏名は野口先生の旧姓、陸軍軍曹 本籍地はご実家と同じ 年令が32歳 場所はチンスキヤ上空 遺族は弟名
もし親族のかたであればだが、名前と年令からすぐ上の兄様のようだ。
確証ではないので、ご本人・弟さんのお名前は伏せます。
明治、大正、昭和に亡くなった方々が亡くなった場所の記載を全体を通してみると、中国(満州)からアジア全域にまたがっている。
今朝になって《日華事変、太平洋戦争従軍者》陸軍の項の名簿に満州に予備役として従軍した人のなかに、戦没者の遺族名にあった弟さんの名前をみつけた。
ほかにも満州開拓団の様子や氏名など、『満州国演義』で読んでいた内容を重ねてみる。
小説という形で読んでいたことの意味を、今、実感している。ただの記録としてではなく、ここに人が生まれ、育ち、成人し、生き、亡くなった、その生き様・死に様の有様が、僅かではあるけれど伝わって来る。
口頭伝承や郷土芸能の記録もあって、地芝居についても詳細に語られている。
野口先生の名付け親であるおじいさまが村歌舞伎のために多額の借金を残していった、という話も納得である。
また、秋祭りの出し物としての屋台と屋台ばやしの太鼓の音符等も掲載されている。
遠くからでも父親の打つ太鼓の音色とリズムは、他の人とは違って「すごく上手いんだ!」とご自慢であった音が聞こえてくるようだ。
*屋台太鼓の音符(大塚重信による)の一部をここにうつしておきたい。
ガラガラガラッ …… 太鼓の縁をたたく音
ドンドコドン …… 太鼓の中央を強くたたく音
トントントン …… 太鼓の中央を軽くたたく音
ドウドウドウ …… 太鼓の中央を左手おさえ右手で打つ
スットン …… 一拍休みをあらわす
ぶちだし(たたき初めの知らせ)
ドロドロドロ …… 七、八回
ガラガラガットン ドンドコドン
ガラガットン ドンドコドン
ドコドコドン ドコドコドン ドコドコドン
ドンドンドン ドウドウドウ ………… 一〇回ぐらい
まだ続きますが、ここまで。
因みに先生のごご実家に近い地名に羽鳥さんという家があって、その家からも従軍者や戦没者を何名も出していたようだ。家の親戚かしらね。
本日も最後の一冊がこれから届くはず。
いつもならまず二階の窓をすべて開け放って、外気を室内に呼び込むのが日課になっている。
今朝はそれも出来ず。
閉め切った部屋で体操をしていると、なんとなくただよう匂いがある。
はたッ!と気づいた。
本の匂いである。本と言っても新刊本ではない。
ようやく届いて揃いはじめた古書の匂いである。
『新・雨月』『満州国演義』がどのような資料によって書かれたのか、またその資料をどのように活かすのか、そんな視点から読んでいた。作者にならって、何冊かの本を取り寄せる手配をしている。
野口三千三の生まれ育った群馬県や村の記録、そして戦前戦中の日本から戦後の日本に変わっていく大本を押させておきたくて選び出した本である。
昨日、届いた一冊を夜になってめくっていた。1620頁の分厚い『吉岡村誌』である。
なるほど作家が郷土史を丁寧にひも解き、作品に反映させていくその過程が見えてくるようだ。
ページをめくるごとに興味深い内容が目に飛び込んで来る。
なかでもドキッとする住所と名前を見つけた。
「八 兵事」の章である。
《明治以降の事変、戦没等・戦没者芳名》の記録である。
日清戦争以来、各種の事変、戦役に従軍し、不幸にして戦没された方々の芳名を記録し、そのご冥福を祈る。(三二二名)と前書きにあり、[亡くなった年月日 氏名 官位 本籍 死没年月日 年令 場所 遺族]が縦書きで記されている。
昭和18年12月13日 氏名は野口先生の旧姓、陸軍軍曹 本籍地はご実家と同じ 年令が32歳 場所はチンスキヤ上空 遺族は弟名
もし親族のかたであればだが、名前と年令からすぐ上の兄様のようだ。
確証ではないので、ご本人・弟さんのお名前は伏せます。
明治、大正、昭和に亡くなった方々が亡くなった場所の記載を全体を通してみると、中国(満州)からアジア全域にまたがっている。
今朝になって《日華事変、太平洋戦争従軍者》陸軍の項の名簿に満州に予備役として従軍した人のなかに、戦没者の遺族名にあった弟さんの名前をみつけた。
ほかにも満州開拓団の様子や氏名など、『満州国演義』で読んでいた内容を重ねてみる。
小説という形で読んでいたことの意味を、今、実感している。ただの記録としてではなく、ここに人が生まれ、育ち、成人し、生き、亡くなった、その生き様・死に様の有様が、僅かではあるけれど伝わって来る。
口頭伝承や郷土芸能の記録もあって、地芝居についても詳細に語られている。
野口先生の名付け親であるおじいさまが村歌舞伎のために多額の借金を残していった、という話も納得である。
また、秋祭りの出し物としての屋台と屋台ばやしの太鼓の音符等も掲載されている。
遠くからでも父親の打つ太鼓の音色とリズムは、他の人とは違って「すごく上手いんだ!」とご自慢であった音が聞こえてくるようだ。
*屋台太鼓の音符(大塚重信による)の一部をここにうつしておきたい。
ガラガラガラッ …… 太鼓の縁をたたく音
ドンドコドン …… 太鼓の中央を強くたたく音
トントントン …… 太鼓の中央を軽くたたく音
ドウドウドウ …… 太鼓の中央を左手おさえ右手で打つ
スットン …… 一拍休みをあらわす
ぶちだし(たたき初めの知らせ)
ドロドロドロ …… 七、八回
ガラガラガットン ドンドコドン
ガラガットン ドンドコドン
ドコドコドン ドコドコドン ドコドコドン
ドンドンドン ドウドウドウ ………… 一〇回ぐらい
まだ続きますが、ここまで。
因みに先生のごご実家に近い地名に羽鳥さんという家があって、その家からも従軍者や戦没者を何名も出していたようだ。家の親戚かしらね。
本日も最後の一冊がこれから届くはず。