会いに行けてないね。ごめん、ジロー
なんでよ!?
ちょっとね。ちょっとだけ…怖いんだ。
まだやっぱりダメなんだって。
気を抜くとひとりでに寂しくなっちゃうんだよ。
想うこと、かぁ
上野動物園 カバ ジロー
ジローにもいっぱいあるんだろうな。
春休みのイベントでカバ班の活動中にとらさんが紙芝居
カラフルなとらさんの衣装、ブルーシートで始まりを待つ子供たち、
100周年イベントで作成された資料も久しぶりにお目見えし、
穏やかな晴天で大盛況のカバ舎。
人のにぎわいに、
僕の出番
と、いつもより早く目覚めて歓声を受けるジロー
その光景は、まるで一年前のままでした。
春いっぱいの空気でさえ何一つ変わってない、カバ舎の風景。
ジローに続いて起き上がるさっちゃんがいないだけ。
なにも意識してなかったのです。こんな気持ちになるなんて。
みんなが楽しみにしてた「カバ101年物語」だって気にもしてなかったのです。
サツキの紙芝居じゃないし。
でも、
あの空間が私には耐えられませんでした。
誰もが楽しいあの場所が、私がまだ超えていないハードルでした。
ジローとふたりぽっちはクリアしたのにね。
一人だけ泣くわけにもいかないので
その場を後にしました。
とらさん、ごめんなさい。どうしても、ムリだったの。
あの日以来、自分の中にある小さなハードル。
ジローに会えば忘れてしまうくらいの小さなハードル。
でも、カバ舎に向かうとき、いつも考えてしまう。
今日はやめておこうかな。
困ったことに
命日が近づくほど、さっちゃんに会いたいのです。
ジローも、そうだろうか?