クリーム色にブルーをひいた8000形の6両編成が緩やかに高架から降りてきた。
1983年から走り出したこの形式は、ボクらの世代にとってまさに The 小田急 なのである。
駅ビル acorde の駅名表示はピンクに縁取られて、その駅名と併せてフェミニンな雰囲気だ。
この日は新百合ヶ丘から小田急線を離れ、乗車時間15分、多摩線に寄り道する。
「名代 箱根そば」は小田急沿線に展開していて、新百合ヶ丘では北口構内の壁一面を占めている。
ここは朝食と兼ねて、温かいのを啜っていこう。
背くらべしているのは “春菊天” と “のどぐろ天”、それに青森産の “ほたて天” が参戦して豪華版。
さくさくの春菊天はなかなかの出来で、JR系より高めの料金設定だけど味は申し分ないと思う。
多摩線は3,4番ホームから、生真面目に10分ごと、唐木田に向けて出発していく。
新宿から来る10両編成が3番ホームから、当駅始発の6両編成が4番ホームから交互に出るのがお約束のようだ。
多摩丘陵の低い尾根をいくつも越えていくから、多摩線はけっこうアップダウンがあるしトンネルもある。
3つ目のトンネルを抜けると小田急永山、ここから京王相模原線と並走すると中心駅の多摩センターだ。
「ハローキティにあえる街 多摩センター」と多摩市のホームページではこうPRしている。
なるほど、駅の壁面や柱、パルテノン多摩、たしかに街はハローキティで溢れている。
女の子がいない呑み人には縁はないけれど、この街にはサンリオピューロランドがあるからだ。
結構な勾配を駆け上がって、後続の10両編成は新宿から直通してきた電車だ。
多摩線は京王多摩センターからわずかに1.5キロ、進路を南に転じて唐木田に終着する。
多摩線はいずれ延伸して、相模原で横浜線に上溝で相模線に連絡するらしいが、実現はいつのことだろうか。
そして当面の終着駅 唐木田は閑静な住宅街の中にある。
菖蒲をモチーフにしたステンドグラスのドームを屋根に載せて、1990年開業のこの駅はバブリーな造りだ。
ホームから路線の延伸先を覗くと電車区が展開している。
時には間合いのロマンスカーなども現れて、小田急の車両ってけっこう多彩な顔ぶれなのです。
この時分の日没は16時半頃だから、赤ちょうちんが点る時刻には辺りは真っ暗だ。
そして今宵の酒場は多摩センターに戻って「串焼たくま」の暖簾を潜った。
お品書きに “赤星” を見つけたら迷うことはない。ちょっと一杯な酒場によく似合う渋い奴だと思う。
アテに “タコのネギ塩まみれ” が美味い。このしょっぱさは酒を煽るに違いない。
こうしたニュータウンでチェーン店の向こうを張るのだから、メニューに創意があって楽しい。
続いて “塩辛じゃがバター”、熱々ホクホクのじゃがバターに塩辛のせて、これって焼き過ぎだよね。残念。
ビールのあとは “55ホッピー(赤ホッピー)” を択ぶ。地酒のラインナップもあったけど今回は封印。
ご自慢の串焼きは変わり種を、“柚子ポンレタス” と ベーコントマト” を焼いてもらった。
いい加減に焦げ目のついた肉やベーコンと、ジューシーな野菜の組み合わせがいいね。
今宵、ニュータウンのご同輩サラリーマンやこれから電車に乗る大学関係者に混ざってのカウンター。
聞き耳を立てる訳ではないけれど、ひと様の世迷言などを耳に流しながら、串焼き酒場の一杯が面白い。
小田急電鉄 多摩線 新百合ヶ丘〜唐木田 10.6km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
ピンクのモーツアルト / 松田聖子 1984