世界のベストレストランベスト50「The World's 50 Best Restaurants Awards 2016」で第1位を獲得した ミシュラン三ツ星レストラン「オステリア・フランチェスカーナ」のオーナーシェフ・マッシモ・ボットゥーラ氏によるサルーミ・クッキングショーを見に服部栄養専門学校に行ってきました(2017.3.21)@イタリア大使館貿易促進部
世界のベストレストランベスト50「The World's 50 Best Restaurants Awards 2016」で第1位を獲得した モデナにあるミシュラン三ツ星レストラン Osteria Francescanaのオーナーシェフ Massimo Bottura氏のサルーミ・クッキングショーに行ってきました
場所は 昔何回か行ったことのある 代々木の「服部栄養専門学校」で 午前の部午後の部ともアネックス3Fのクッキングショールームはプレス関係者で満席でした ここは階段席でとても見やすいですね
マッシモ・ボットゥーラ氏は 実にエネルギッシュでかつウィットに富み 人生で最も輝ける時期のオーラを放ち イタリアにとんぼ帰りの多忙なスケジュールの中にあっても 実に魅力的な語りと料理を披露してくださり それは彼の料理の哲学そのものでした
そしてクッキングショーの最後に 料理の世界を目指すもの あるいはその世界でトップを目指すものへの貴重なアドバイスをいただき 緊張しましたが今までたくさん見てきたクッキングショーの中でも最も感動しました (実は調理師学校は家族の進学先でもあり あちこちたくさん見てきたのです)
イタリア人のスピリットを見せていただきました
伝統的なレシピを現代的に展開し 1位の座を獲得した「オステリア・フランチェスカーナ」 モデナでも愛されるその店からは タカという日本人のスーシェフ そしてもう一人 ローマっ子のベルナルド氏が共に来日しました
会の最初に イタリアサルーミ普及促進協会より盾が手渡されました
会場となった服部栄養専門学校の校長 服部幸應氏がまずご挨拶で 2011年からのお知り合いで ミラノ万博の時にG9というグループを組みボットゥーラ氏とご一緒して以来 この服部栄養専門学校をクッキングショーの場に使っていただくことが夢だった と話されました
マッシモ・ボットゥーラ氏は子供の頃は nonna(祖母)が手作りパスタを打つテーブルの下にいつも駆けこんで 座り込んでいたという末っ子だったそうです 鼻先には小麦粉をつけ nonnaのトルテリーニをちょいとつまみ喰いするような子供でした
そして今 彼は「数百年にわたる歴史の上に」座っているのです そしてすべては 現代的な考え(il pensiero contemporaneo) によってフィルターにかけられているのです(filtorato) そこが 大使館の紹介にもあった「伝統的なレシピを現代的に展開する」の意味なのですね
「日常を失わないこと」こそが大切
毎日出す料理は 食材の質のみならず なんといっても我々の考え(idee)の質にもよるのだと 自然の美の中からインスピレーションを得て 形を変える(tranformazione) それが自分の料理のまずは基本であり 目に見えない物を可視化する 関連付けるのが自分の仕事だと思っていると話されました (あらゆるアートに共通するものですね) これは最後に見せていただいたヨーゼフ・ボイスの作品にもつながるものです
大切なのは 意識 ビジョン そして直観だと 自覚と責任だと
日々自分と闘い 改革し そこに到達できたからこそ 今の我々があるのだと (1位獲得のことですね)
直観は幸せなつまづきであり (L’intuizione è l’inciampo felice) クリエイティブな仕事では 突然分かれ道(svolta)に出会うものだが 「真っ暗闇の中のカーブ」を曲がったその先を探し 見えてきたものを作る それが自分の作る作品でありアートだと
次に「Vieni in Italia con me」という著書での 中国のアートについての説明で これは中国人現代アーティストのアイ・ウェイ・ウェイが二千年前の壺を割ることにより 自分の中の現代的な認識のフィルターを通して「未来を創るために 過去を一度壊す」という写真です
日々の作業の中で 伝統をコンテンポラリーのフィルターに通してリノベーションしてゆくことの大切さを示してくださいました
「Vieni in Italia con me!」より
* * *
1. デモンストレーション レシピ
Da Modena a Mirandola (Sbrisolona di Cotechino)
「モデナからミランドラへ」(コテキーノのズブリソローナ)
生まれたいきさつ:
2012年のエミリア・ロマーニャの地震でチャリティメニューとして考えたrisotto cacio e pepe
その一年後に イタリアサルーミ普及促進協会の復興イベントで考案したドルチェがこれです
父の生まれたミランドラ(Mirandola)の町のカテドラルの瓦礫(macerie)の下に立ち テレビ局の前でそれを披露し 「僕を写さずに瓦礫を写せ!まだ修復していないのだ」とカメラに向けて言ったエピソード... エミリア地方の人々は無口だが働き者だと
"a trip from Modena a Mirandola"
4年たって修復された それを”責任感(il senso di responsabilità)“という
地図を使って示す
エステ家の地でもあるフェッラーラでは 戦争をせずに文化や料理を豊かにしてきたそうです
このdolceは まだまだcenaが続くような(proseguimento della cena)余韻を持たせたかったという
dolce salataという ほんのり塩気のあるドルチェ
コテキーノ(cotechino)は レンズ豆(lenticchie)とともに伝統的クリスマス料理に使われ 脂も塩気も多いが ドルチェとして使うため バランス(bilanciamento)を考えて ランブルスコで蒸した (ここでかなり専門的な説明をいただきました)
ズブリソローナ(sbrisolona)の上にコテキーノを乗せ そこにランブルスコのザバイオーネ(nonnaのレシピをもとにした)を添えて バルサミコ酢(50年もの)をたらす というドルチェ
コテキーノとザバイオーネは 後期ルネサンスのエステ家のレシピにも登場していたそうです
文化とは: 1億個のひまわりの種を中国のgli artigiani(職人たち)に作ってもらった (現代アーティストのアイウェイウェイの試み) 文化の生物多様性(bio-diversità)を表すような 一つ一つ違う手作りのひまわりの種 自分たちが日々作っているものがどんなに重要か 最後に彼らに支払った時にようやく初めて 自分たちが何を創っていたか その価値が分かったというエピソード
2. デモンストレーション レシピ
Ricordo di un panino alla mortadella
モルタデッラ・パニーノの思い出
イタリアの子供達がいつもおやつに学校に持っていく モルタデッラのパニーノ… これにインスピレーションを得て作られたドルチェ 最後に試食させていただきましたが とにかくモルタデッラがスプーマとなっており生まれて初めて! イタリアのジャーナリストたちが驚いたという これは32年間あたためてきたレシピとのこと
モルタデッラは完璧なサルーミの食材のひとつで スライスするだけでよい あるいはそこから精神(anima)を抽出する(ブロードを取るなど)だけ
彼は 味の純粋さに到達するために(per arrivare alla purezza del sapore)生クリームや脂などは入れなかった イタリア人の味覚はrigore(厳格さ、厳密さ)を何百年も保っているから...
そして「イタリア・サルーミ普及促進協会」の協力も得て モルタデッラの香り(profumo della mortadella)を抽出した ←ロータリーエバポレーター(Rotavapor)で蒸留した(distillare)
何も加えずにモルタデッラ本来の脂(grasso)のみでモンテした(クリームを作った)やわらかなスプーマ
そしてのちにこれは スローフードのプレシディオを獲得したそうです!
モルタデッラのスプーマが添えてある モルタデッラの純粋な味がしました♡
この「モルタデッラ・パニーノの思い出」の試食品は モルタデッラ・スプーマがの横に 切り分けたニョッコ・イングラッサート(Gnocco Ingrassato)が添えられて お皿にはピスタチオ・パウダーとニンニクのクレーマが まるでキャンバスに絵を描くように描かれていました♡ (上の写真)
contaminazione sagge 文化の融合
Contaminazione selvatica(野生の汚染/融合)は 本来のオリジナリティが失われるものだが それに対してcontaminazione sagge(賢い汚染/融合)は 他の人との対話を通して他文化への扉を開くものだ(aprire alle altre culture)
*contaminazioneは「汚染」だが 対話による文化の「融合」という良い意味で用いられた
たとえば 店で働く各国から来た者たち皆に彼は Chi sei? (君は誰?何者だ?)と 「自分が何者かを皿(piatto)で表せ」 と言うそうです
* * *
「エミリア・ハンバーグ」の試食
そうして次に見せていただいたのは なんと直径5センチのミニポーションのmini burger!!かっわいい♡
彼はストリートフードとしてのハンバーガーを創ることに挑戦し マンハッタンに なんと行列ができたそうです! アメリカのハンバーガーはサイズも大きいしecc...なので パンの大きさも肉もソースも すべてを作り変えたのです
パンは アマレーナから天然酵母を抽出したパンを使った エミリア地方に根ざしたパンだ
日本で神戸牛を食べた時に この肉汁のしたたるような(succulento)食感を 脂を加えずに表したいと考え コテキーノを蒸し器に入れてランブルスコワインで蒸して 脂(grasso)や液体(liquido)を除いて 蒸し器の中間の部分に残るゼラチン(gelatina)を使ったそうです そのために噛むととても柔らかく 神戸牛あるいはそれ以上にジューシーで...♡
またスペック(lo speck)を刻んで入れ fumo(バーベキューの煙の感じ)を出したとのこと
そしてアフミカートチーズ サルサヴェルデ バルサミコ酢を加えたマヨネーズという 甘酸っぱいサルサ...名付けて「エミリア・ハンバーグ」!!
Osteria Francescanaのロゴ入りの可愛いパッケージを開けると...
直径5センチのカワイイ~ ミニハンバーグ♡
* * *
デモンストレーションの最後に この場に居合わせた方々に 大変貴重なアドバイスをいただきました
組織作りは 世界一難しい 独りでは成し遂げることはできない
「判断の速さ(la velocità del pensiero)」は 仕事だけでなく 人生の中でも特に重要だ そしてまた「動きの速さ(la velocità del movimento)」があれば 自ずと仕事の精度も上がる
自己批判する精神 成長したい(andare avanti)という気持ち それらに加えて ひとつひとつの日々の積み重ねが大切だと
特に今日は料理学校にいますので 今話していることは ここでは特に重要なことだと思います と…
「テクニック」 これがないと偶然でしかものを創れない テクニックがあれば ものを創り出す「自由」を得て こうしてこの年齢になっても創り続けることが出来る 世界を旅しながら... また世界を旅することも自分を高めることになる
もし失敗(皿を割る等)してしまったら...「No! 言い訳(scuca)は不要だ! それは集中していなかったからだ! シェフに謝らず自分に謝れ!」 この迫力に通訳も追いつかず すごい臨場感でした
さらに それぞれのポジションの大切さ 毎日の小さな試合に勝ち続けること 自分への信頼感を失わないために...
そして 感情のコントロール 自己犠牲の精神もまた必要であること 毎日がワールドカップの決勝だと思い メンタルを強く持ち 自己批判をし 成長し続けること
「全員のチームワークで成し遂げられてこそ 完璧な勝利は嬉しいものであり すべての苦労を忘れさせ なおかつ心の中に永遠に残るものだ」と... つまり チーム全員で喜びを分かち合えなかったら それは本当の満足ではないのだと… それが一番言いたかった大切なメッセージなんだよと…
(お店では 料理はチームで作るもので チームワークなくしては成り立たない 調理師学校でも家族はずっとそう教わってきました なので 骨身に染みる言葉ですね...)
* * *
最後に 「おっと、レモンタルトが落ちちゃった!“Oops – mi è caduta la crostatina del limone” (dal menu “Sensazioni”)」という 有名なドルチェの写真を見せていただきました
日本人スタッフのタカ氏が作った テクノロジー 自然 詩的表現(gesto poetico) の融合のドルチェです
20世紀の重要な現代アーティストヨーゼフ・ボイスの 南イタリアのレモンをランプに見立てて ソケットにランプの代わりにレモンを入れると発光したという 最晩年の作品からインスピレーションを得て作られた メタファーとしてのドルチェのレシピ...
ヨーゼフ・ボイスの作品(1985) Capri Battery
フランス人のシェフにとって 落ちちゃったものは「errore(失敗作)」 でもイタリア人のシェフにとっては「poesia(詩的表現)」なのであり イタリアのテリトリーをすべて表現するためのメッセージなのだよと… それが私にとって人生の秘訣なのだよと...
だから 人生に「詩(poesia)」のスペースを残しておくのが大切なのだよと...
たとえば三つ星のレストランで 壊れたトルタを表すドルチェを出す なんていうこともまた 詩的表現のひとつなのだよと…
これを聞いて あぁ...これがイタリアなんだ... と感動しました...
そのあと質疑応答があり クッキングショーは無事終了しました
終了後も熱気あふれる会場
* * *
このような私が こんなスゴイ場所に行くのは実はためらわれたのですが ぎりぎり最後に決断し 行ってよかった!
早く着いてしまいまたまた最前列(笑) 関係者やゲストの方々のすぐ後ろで緊張しました~
キッチンスタジオを出たら午後の部の参加者の皆様が もう沢山いらしていて... 熱気あふれるクッキングショー トップに上り詰めたシェフの大変貴重なお話と 物語性あふれる料理を体験できた 実に貴重な一日でした... また 料理の世界で頑張る家族への大きなメッセージをいただき いたく感謝しております
いただいた資料 鉛筆が黒い木でできていてオシャレ♡
詳しくは こちら
追加:
Massimo Bottura氏の 2016年に「世界のベストレストラン ベスト50」で第1位を獲得された時のインタビュー"World's 50 Best Restaurants 2016, Bottura at the Top: Here is the Full List" は こちら
素晴らしいクッキングショーを開催してくださいました イタリア大使館貿易促進部・イタリアサルーミ普及促進協会様に 心よりお礼申し上げます
日本イタリア料理協会のリポートは こちら
「料理王国」2017年6月号に特集記事が掲載されました
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世界のベストレストランベスト50「The World's 50 Best Restaurants Awards 2016」で第1位を獲得した モデナにあるミシュラン三ツ星レストラン Osteria Francescanaのオーナーシェフ Massimo Bottura氏のサルーミ・クッキングショーに行ってきました
場所は 昔何回か行ったことのある 代々木の「服部栄養専門学校」で 午前の部午後の部ともアネックス3Fのクッキングショールームはプレス関係者で満席でした ここは階段席でとても見やすいですね
マッシモ・ボットゥーラ氏は 実にエネルギッシュでかつウィットに富み 人生で最も輝ける時期のオーラを放ち イタリアにとんぼ帰りの多忙なスケジュールの中にあっても 実に魅力的な語りと料理を披露してくださり それは彼の料理の哲学そのものでした
そしてクッキングショーの最後に 料理の世界を目指すもの あるいはその世界でトップを目指すものへの貴重なアドバイスをいただき 緊張しましたが今までたくさん見てきたクッキングショーの中でも最も感動しました (実は調理師学校は家族の進学先でもあり あちこちたくさん見てきたのです)
イタリア人のスピリットを見せていただきました
伝統的なレシピを現代的に展開し 1位の座を獲得した「オステリア・フランチェスカーナ」 モデナでも愛されるその店からは タカという日本人のスーシェフ そしてもう一人 ローマっ子のベルナルド氏が共に来日しました
会の最初に イタリアサルーミ普及促進協会より盾が手渡されました
会場となった服部栄養専門学校の校長 服部幸應氏がまずご挨拶で 2011年からのお知り合いで ミラノ万博の時にG9というグループを組みボットゥーラ氏とご一緒して以来 この服部栄養専門学校をクッキングショーの場に使っていただくことが夢だった と話されました
マッシモ・ボットゥーラ氏は子供の頃は nonna(祖母)が手作りパスタを打つテーブルの下にいつも駆けこんで 座り込んでいたという末っ子だったそうです 鼻先には小麦粉をつけ nonnaのトルテリーニをちょいとつまみ喰いするような子供でした
そして今 彼は「数百年にわたる歴史の上に」座っているのです そしてすべては 現代的な考え(il pensiero contemporaneo) によってフィルターにかけられているのです(filtorato) そこが 大使館の紹介にもあった「伝統的なレシピを現代的に展開する」の意味なのですね
「日常を失わないこと」こそが大切
毎日出す料理は 食材の質のみならず なんといっても我々の考え(idee)の質にもよるのだと 自然の美の中からインスピレーションを得て 形を変える(tranformazione) それが自分の料理のまずは基本であり 目に見えない物を可視化する 関連付けるのが自分の仕事だと思っていると話されました (あらゆるアートに共通するものですね) これは最後に見せていただいたヨーゼフ・ボイスの作品にもつながるものです
大切なのは 意識 ビジョン そして直観だと 自覚と責任だと
日々自分と闘い 改革し そこに到達できたからこそ 今の我々があるのだと (1位獲得のことですね)
直観は幸せなつまづきであり (L’intuizione è l’inciampo felice) クリエイティブな仕事では 突然分かれ道(svolta)に出会うものだが 「真っ暗闇の中のカーブ」を曲がったその先を探し 見えてきたものを作る それが自分の作る作品でありアートだと
次に「Vieni in Italia con me」という著書での 中国のアートについての説明で これは中国人現代アーティストのアイ・ウェイ・ウェイが二千年前の壺を割ることにより 自分の中の現代的な認識のフィルターを通して「未来を創るために 過去を一度壊す」という写真です
日々の作業の中で 伝統をコンテンポラリーのフィルターに通してリノベーションしてゆくことの大切さを示してくださいました
「Vieni in Italia con me!」より
* * *
1. デモンストレーション レシピ
Da Modena a Mirandola (Sbrisolona di Cotechino)
「モデナからミランドラへ」(コテキーノのズブリソローナ)
生まれたいきさつ:
2012年のエミリア・ロマーニャの地震でチャリティメニューとして考えたrisotto cacio e pepe
その一年後に イタリアサルーミ普及促進協会の復興イベントで考案したドルチェがこれです
父の生まれたミランドラ(Mirandola)の町のカテドラルの瓦礫(macerie)の下に立ち テレビ局の前でそれを披露し 「僕を写さずに瓦礫を写せ!まだ修復していないのだ」とカメラに向けて言ったエピソード... エミリア地方の人々は無口だが働き者だと
"a trip from Modena a Mirandola"
4年たって修復された それを”責任感(il senso di responsabilità)“という
地図を使って示す
エステ家の地でもあるフェッラーラでは 戦争をせずに文化や料理を豊かにしてきたそうです
このdolceは まだまだcenaが続くような(proseguimento della cena)余韻を持たせたかったという
dolce salataという ほんのり塩気のあるドルチェ
コテキーノ(cotechino)は レンズ豆(lenticchie)とともに伝統的クリスマス料理に使われ 脂も塩気も多いが ドルチェとして使うため バランス(bilanciamento)を考えて ランブルスコで蒸した (ここでかなり専門的な説明をいただきました)
ズブリソローナ(sbrisolona)の上にコテキーノを乗せ そこにランブルスコのザバイオーネ(nonnaのレシピをもとにした)を添えて バルサミコ酢(50年もの)をたらす というドルチェ
コテキーノとザバイオーネは 後期ルネサンスのエステ家のレシピにも登場していたそうです
文化とは: 1億個のひまわりの種を中国のgli artigiani(職人たち)に作ってもらった (現代アーティストのアイウェイウェイの試み) 文化の生物多様性(bio-diversità)を表すような 一つ一つ違う手作りのひまわりの種 自分たちが日々作っているものがどんなに重要か 最後に彼らに支払った時にようやく初めて 自分たちが何を創っていたか その価値が分かったというエピソード
2. デモンストレーション レシピ
Ricordo di un panino alla mortadella
モルタデッラ・パニーノの思い出
イタリアの子供達がいつもおやつに学校に持っていく モルタデッラのパニーノ… これにインスピレーションを得て作られたドルチェ 最後に試食させていただきましたが とにかくモルタデッラがスプーマとなっており生まれて初めて! イタリアのジャーナリストたちが驚いたという これは32年間あたためてきたレシピとのこと
モルタデッラは完璧なサルーミの食材のひとつで スライスするだけでよい あるいはそこから精神(anima)を抽出する(ブロードを取るなど)だけ
彼は 味の純粋さに到達するために(per arrivare alla purezza del sapore)生クリームや脂などは入れなかった イタリア人の味覚はrigore(厳格さ、厳密さ)を何百年も保っているから...
そして「イタリア・サルーミ普及促進協会」の協力も得て モルタデッラの香り(profumo della mortadella)を抽出した ←ロータリーエバポレーター(Rotavapor)で蒸留した(distillare)
何も加えずにモルタデッラ本来の脂(grasso)のみでモンテした(クリームを作った)やわらかなスプーマ
そしてのちにこれは スローフードのプレシディオを獲得したそうです!
モルタデッラのスプーマが添えてある モルタデッラの純粋な味がしました♡
この「モルタデッラ・パニーノの思い出」の試食品は モルタデッラ・スプーマがの横に 切り分けたニョッコ・イングラッサート(Gnocco Ingrassato)が添えられて お皿にはピスタチオ・パウダーとニンニクのクレーマが まるでキャンバスに絵を描くように描かれていました♡ (上の写真)
contaminazione sagge 文化の融合
Contaminazione selvatica(野生の汚染/融合)は 本来のオリジナリティが失われるものだが それに対してcontaminazione sagge(賢い汚染/融合)は 他の人との対話を通して他文化への扉を開くものだ(aprire alle altre culture)
*contaminazioneは「汚染」だが 対話による文化の「融合」という良い意味で用いられた
たとえば 店で働く各国から来た者たち皆に彼は Chi sei? (君は誰?何者だ?)と 「自分が何者かを皿(piatto)で表せ」 と言うそうです
* * *
「エミリア・ハンバーグ」の試食
そうして次に見せていただいたのは なんと直径5センチのミニポーションのmini burger!!かっわいい♡
彼はストリートフードとしてのハンバーガーを創ることに挑戦し マンハッタンに なんと行列ができたそうです! アメリカのハンバーガーはサイズも大きいしecc...なので パンの大きさも肉もソースも すべてを作り変えたのです
パンは アマレーナから天然酵母を抽出したパンを使った エミリア地方に根ざしたパンだ
日本で神戸牛を食べた時に この肉汁のしたたるような(succulento)食感を 脂を加えずに表したいと考え コテキーノを蒸し器に入れてランブルスコワインで蒸して 脂(grasso)や液体(liquido)を除いて 蒸し器の中間の部分に残るゼラチン(gelatina)を使ったそうです そのために噛むととても柔らかく 神戸牛あるいはそれ以上にジューシーで...♡
またスペック(lo speck)を刻んで入れ fumo(バーベキューの煙の感じ)を出したとのこと
そしてアフミカートチーズ サルサヴェルデ バルサミコ酢を加えたマヨネーズという 甘酸っぱいサルサ...名付けて「エミリア・ハンバーグ」!!
Osteria Francescanaのロゴ入りの可愛いパッケージを開けると...
直径5センチのカワイイ~ ミニハンバーグ♡
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デモンストレーションの最後に この場に居合わせた方々に 大変貴重なアドバイスをいただきました
組織作りは 世界一難しい 独りでは成し遂げることはできない
「判断の速さ(la velocità del pensiero)」は 仕事だけでなく 人生の中でも特に重要だ そしてまた「動きの速さ(la velocità del movimento)」があれば 自ずと仕事の精度も上がる
自己批判する精神 成長したい(andare avanti)という気持ち それらに加えて ひとつひとつの日々の積み重ねが大切だと
特に今日は料理学校にいますので 今話していることは ここでは特に重要なことだと思います と…
「テクニック」 これがないと偶然でしかものを創れない テクニックがあれば ものを創り出す「自由」を得て こうしてこの年齢になっても創り続けることが出来る 世界を旅しながら... また世界を旅することも自分を高めることになる
もし失敗(皿を割る等)してしまったら...「No! 言い訳(scuca)は不要だ! それは集中していなかったからだ! シェフに謝らず自分に謝れ!」 この迫力に通訳も追いつかず すごい臨場感でした
さらに それぞれのポジションの大切さ 毎日の小さな試合に勝ち続けること 自分への信頼感を失わないために...
そして 感情のコントロール 自己犠牲の精神もまた必要であること 毎日がワールドカップの決勝だと思い メンタルを強く持ち 自己批判をし 成長し続けること
「全員のチームワークで成し遂げられてこそ 完璧な勝利は嬉しいものであり すべての苦労を忘れさせ なおかつ心の中に永遠に残るものだ」と... つまり チーム全員で喜びを分かち合えなかったら それは本当の満足ではないのだと… それが一番言いたかった大切なメッセージなんだよと…
(お店では 料理はチームで作るもので チームワークなくしては成り立たない 調理師学校でも家族はずっとそう教わってきました なので 骨身に染みる言葉ですね...)
* * *
最後に 「おっと、レモンタルトが落ちちゃった!“Oops – mi è caduta la crostatina del limone” (dal menu “Sensazioni”)」という 有名なドルチェの写真を見せていただきました
日本人スタッフのタカ氏が作った テクノロジー 自然 詩的表現(gesto poetico) の融合のドルチェです
20世紀の重要な現代アーティストヨーゼフ・ボイスの 南イタリアのレモンをランプに見立てて ソケットにランプの代わりにレモンを入れると発光したという 最晩年の作品からインスピレーションを得て作られた メタファーとしてのドルチェのレシピ...
ヨーゼフ・ボイスの作品(1985) Capri Battery
フランス人のシェフにとって 落ちちゃったものは「errore(失敗作)」 でもイタリア人のシェフにとっては「poesia(詩的表現)」なのであり イタリアのテリトリーをすべて表現するためのメッセージなのだよと… それが私にとって人生の秘訣なのだよと...
だから 人生に「詩(poesia)」のスペースを残しておくのが大切なのだよと...
たとえば三つ星のレストランで 壊れたトルタを表すドルチェを出す なんていうこともまた 詩的表現のひとつなのだよと…
これを聞いて あぁ...これがイタリアなんだ... と感動しました...
そのあと質疑応答があり クッキングショーは無事終了しました
終了後も熱気あふれる会場
* * *
このような私が こんなスゴイ場所に行くのは実はためらわれたのですが ぎりぎり最後に決断し 行ってよかった!
早く着いてしまいまたまた最前列(笑) 関係者やゲストの方々のすぐ後ろで緊張しました~
キッチンスタジオを出たら午後の部の参加者の皆様が もう沢山いらしていて... 熱気あふれるクッキングショー トップに上り詰めたシェフの大変貴重なお話と 物語性あふれる料理を体験できた 実に貴重な一日でした... また 料理の世界で頑張る家族への大きなメッセージをいただき いたく感謝しております
いただいた資料 鉛筆が黒い木でできていてオシャレ♡
詳しくは こちら
追加:
Massimo Bottura氏の 2016年に「世界のベストレストラン ベスト50」で第1位を獲得された時のインタビュー"World's 50 Best Restaurants 2016, Bottura at the Top: Here is the Full List" は こちら
素晴らしいクッキングショーを開催してくださいました イタリア大使館貿易促進部・イタリアサルーミ普及促進協会様に 心よりお礼申し上げます
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