日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「サルジニア語 ラテン語の面影残す地中海の島ことば La Sardegna linguistica」(菅田茂昭著/早稲田大学出版部)を読みました 

2022年03月21日 | サルデーニャ・シチリア

「サルジニア語 ラテン語の面影残す地中海の島ことば La Sardegna linguistica l'isola mediterranea dove sopravvive la latinità」(菅田茂昭著/早稲田大学出版部)を読みました 

 

この著者の方の講演を まだイタリア語を始めたばかりの頃にイタリア文化会館で聞いたことがあります 懐かしい... 

本について:

イタリア・サルジニア島の方言サルジニア語は、ロマンス語の一つである。他のロマンス語では ラテン語からロマンス語への変化の過程で消滅したものが、サルジニア語には残っていることが多く、サルジニア語はラテン語の原型をよくとどめているという特徴を持つ。

サルジニア島での現地調査の結果をもとに、サルジニア語の音声・文法・語彙・語形成を解説するほか、このことばがロマンス語圏にどう位置付けられるかを明らかにする。

   *   *   *

地元の図書館のイタリア語コーナーに よく目立つように置いてあったこの本 あらかたイタリア語の問題集や参考書は読んでしまった私には目当たりしく 吸い寄せられるようにすぐに手に取った

サルディーニャには行ったことはないが 色々なセミナーや本等を通じて身近に感じている

本より抜粋:

「サルジニア語は ロマンス語の中ではラテン語に近いという印象を与える

イタリア語やフランス語など 他のロマンス語では 進化の過程で失われたラテン語の要素が 孤立したサルデーニャの島には残っている サルジニア語はまさに ラテン語の面影を残すロマンス語なのである」

こうして著者が40年以上にわたってサルジニア島に通い  様々な本を書きました サルデーニャを代表するM.ピタウ(Pittau)教授とも親交があったとのこと

2001年のピタウ教授の著書では BC1500年頃からローマの征服まで続いたこの時代の原語を 「ヌラーゲ語」から「前サルジニア語」へと変更しました 

この言語を話していた人たちは 前13世紀半ば頃 小アジアのリディア(Lidia)より渡来し そのころすでにヌラーゲは建てられていたとされます 

前8世紀から前6世紀にかけて フェニキアに そして前6世紀からローマに征服(BC238年)されるまで カルタゴに支配されました 

フェニキア語の名残りとして カンピダーノ方言がいくつかありますが 地名にはTharros(タロス)  Macomer(マコメール)などがあります 

同時に イベリア・バスク語からの影響もあります 

 

歴史:

サルジニア語の歴史は BC238年のローマの征服とともに島にもたらされたラテン語から始まります 

534年から9900年頃までのビザンティン時代は 役所ではギリシア語が公用語でした 

アラゴン王国の支配下(1323~1479)では カタルーニャ語が スペインの支配下(1479~1708)ではスペイン語が公用語となりました

北西部のアルゲーロ(Althero)では 今もカタルーニャ語が話されています

サヴォイア王国に属していたことからピエモンテ方言の語彙も入ってきました 

1861年にイタリアが統一されてからは イタリア語が公用語となりました 今では家庭の中でサルジニア語の各地の方言が話されています*

* カンピダーノ方言 ログドーロ方言 ガッルーラ方言 サッサリ方言 ヌーオロ方言など

 

さらに サルジニア語の運用や文法へと本は進みます:

冠詞は 男性名詞単数は su 女性名詞単数は  sa 

たとえば su libru その本 など

 

動詞の時制もだいたいイタリア語に似ていますね

ちなみに サルジニア語の近過去は 遠過去(ラテン語の完了過去)に代わる働きを担っているとのこと

そして サルジニア語の接続法半過去は ラテン語の接続法未来完了過去の形式を ほぼ継承しているそうです

条件法は ラテン語を継承するものではなく ロマンス語における改新のひとつなのですね 接続法からの分岐ととらえることができるそうです

 

いろいろな文例:

Deo soe sardu.   私はサルジニア人です

Semus sardos.   私たちはサルジニア人です

Mariola mándigat su casu.  マリオーラはチーズを食べる

動詞の位置はかなり自由で 疑問詞のない疑問文では 何種類もの語順があります びっくり!

 

接続法:

Cherio chi Mariangela benzat cras.   私は明日 マリアンジェラが来てほしい

Mariangela benit cras.        明日 マリアンジェラが来ます

 

次は語彙です:

アルカイズムに富んでおり(特にヌオーロ地域) ラテン語の面影を残しています

たとえば イタリア語の「家」は casa サルジニア語では domo (domus) です

そして地域差に富んで 多様な地理同義語(geosinonimi)が見られます

地域による違いがみられる語彙のことです

 

そしていよいよ サルジニア料理の名称例に入ります:

Frégula de cocciula (Fregola con arselle) アサリのフレーゴラ (小粒パスタ)

Porcheddu a s'ispidu (Porcetto arrosto)  子豚の丸焼き

Pane carasau (Carta da musica) サルジニア風ドライパン 割る音から五線紙とも呼ばれます

 

本は こちら

 


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