日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

イタリアの生協について知ろう!ACI コミュニティコープ GAS 社会的協同組合 イタリアの生協の特徴等-前半

2019年02月18日 | 東都生協関連・海外の生協

イタリアの生協について知ろう!ACI コミュニティコープ GAS 社会的協同組合 イタリアの生協の特徴等-前半



イタリアの生協ってどんなだろう? そんな興味を持ったきっかけは イタリア文化講座「サステイナブルなイタリア - 持続可能なイタリアの食と生産の現在 -」というセミナーで GAS(団結した購買者の連帯グループ)のことを初めて知ったことでした 
まるで日本の生協の成り立ちを見ているかのようなそんなGASの姿を知り 30年前の自分が生協に入った頃を思い出しました

そして 地域社会と密着したコミュニティコープ 福祉の面を持つ社会的協同組合 協同組合・生協の歴史 ヨーロッパ各国の生協 coop対スーパーマーケット... 興味はつきず 1年半くらいかけて 
本を読んだりセミナーに出たりして勉強し この「イタリアの生協について知ろう!」という記事をようやくまとめました

イタリアの生協ってどんなのがあるの? 2017年に合併してできたACI(イタリア協同組合同盟) 地域社会と密着したコミュニティコープ GAS(団結した購買者の連帯グループ)等
日本の生協がイタリアの生協の発展にも影響を与えてきたのです

イタリアの生協について 外国の生協について知ってみませんか?


        *        *        *

もくじ

1. 協同組合のデータ
2. イタリアの協同組合
3. 2017年に合併したACI(イタリア協同組合連盟)
4. 生協vs企業
5. 生協vsスーパーマーケット 各国では

 - 後半 -
6.コミュニティコープ(地域社会と密着した小さな生協)
7.GAS(団結した購買者の連帯グループ)
8.社会的協同組合 日本の取り組み
9. イタリアの生協の特徴 組合員アンケートより
10. その他 イタリアならではの特色
11. 参考記事・書籍


1. 協同組合のデータ


世界のデータ: 国際協同組合連盟(ICA/International Co-operative Alliance)は 91ヶ国で8億人を巻きこみ 242組織を結集しています (「イタリアの共同組合」はじめに/2014年4月発行)

産業革命から始まるヨーロッパでの協同組合誕生の歴史: オウェンと初期社会主義に続き「ロッチデイル公正先駆者」*(イギリス)では 
子どもが買いに行ってもごまかされない(当時としては珍しい)公正な協同組合店舗ができました
割戻金もここから生まれた制度です 
* 協同組合運動の先駆的存在となった生活協同組合 1844年に設立

フランスでは生産・労働共同組合が「社会作業所」を作り ドイツでは「庶民銀行(Volksbank)が誕生し 信用協同組合に発達してゆきました (「イタリアの協同組合」第3章 ヨーロッパにおける起源)

* 協同組合はユネスコの無形文化遺産にも登録されています
 詳しくは 『協同組合』がユネスコの無形文化遺産に登録されました(2016.11.30)&「協同組合ってなに?ユネスコ無形文化遺産登録から考える」に参加しました(2017.6.9)@東都生協

『協同組合とは、人々が自分たちの願いを実現するため生み出したしくみ・知恵。 
7つの協同組合原則が定められており、ユネスコの「無形文化遺産」にも登録されています。
協同組合がある国や地域は94ヶ国以上、組合員は世界全体で10億人を超えます。
日本には全国で約560の生協があり、2,820万人の組合員が加入し、事業高は約3.4兆円の規模があります。』
  (生協と社会論 第1回講義概要「現代社会と協同」@公益財団法人 生協総合研究所)


2. イタリアの協同組合

2011年にはイタリアには79,949件の協同組合が存在し 131万人が働き(2007年に比べて8%増加) 2008年の経済危機にも関わらず雇用が安定しています (「イタリアの共同組合」巻末資料)

組合員数約840万人、イタリア国内に約1,200店舗を展開し、市場規模も事業高訳130憶ユーロ(約1,6兆円/2015年度)で、イタリア国内の小売業で第1位、約19%のマーケットシェアを誇ります (コープイタリアのHP)

日本の生協は宅配が主軸ですが 欧州の生協は店舗スタイルがメイン
欧州では組合員でなくとも利用できる イタリアは生活に密着する存在として 生協の認知度が高い
組合員が経営に積極的に関わり 生協が市民生活に浸透し 認知されているとのこと
(「海外の協同組合。組合員たちの働き方にヒントあり」アグリビジネス最前線

イタリアには5つの* 協同組合ナショナルセンターがあり うち「レーガコープ/Legacoop(共同組合・教唆組合全国連盟)」(赤い協同組合/左翼系)  
「コンフコーペラティーヴェ
/Confcooperative(イタリア協同組合総連合)」(白い協同組合/カトリック系)が 二極として存在していました

イタリアでは(中小企業がほとんど)協同組合の平均規模は イタリアの一般企業の平均規模よりも大きいです
 (「イタリアの協同組合」はじめに)
* 5つの協同組合の中央会: コンフコープ レガ・コープ AGCI UNCi Uni.coop

イタリアの協同組合は サルデーニャ王国の首都トリノで1854年に生まれた「労働者一般協会」が 
消費協同組合を誕生させたのが その始まりです(イタリア統一は1861年)
1886年には「協同組合全国連合」が成立し 社会党の影響が強く 一方ではカトリック運動も独自に協同組合組織を作ります

北イタリアに多く(ヴェネト、エミリア・ロマーニャ、シチリア、ロンバルディア、ピエモンテの順) 南イタリアには(シチリアを除いて)わずかです
文化的・市民的基盤が協同組合の定着のためには必要とのこと

第一次大戦・ファシズム時代は 暗黒の時代であり 協同組合はファシズムの影響も受けました
第二次大戦後に統一が試みられるも失敗し めまぐるしい分裂の動きがあり ナショナルセンターが設立されてゆきます
業種別ではサービス業(第三次産業)が突出しています (「イタリアの共同組合」第四章 イタリアにおける協同組合)

イタリア発の1854年にトリノに生まれた生協は 当時問題を抱える人々に お金を出し合って支えてゆく SOMS(緊急相互扶助協会/Società mutuo soccorso)運動から始まりました
今もこのSOMSの施設は 中北部に存在しているそうです

ファシズムの暗黒時代を経て 大戦後の1947年に 最初の協同組合法となった「バゼーヴィ法 “ legge Basevi”」が制定され 
さらに1991年には 「社会的協同組合法」が成立しました
(「生協総研レポートNo.76 イタリアの生協の現状について」 Ⅴ イタリアの共同組合史)

また イタリア共和国憲法第 45 条に 相互扶助の性格を有し私的投機を目的としない協同組合の重要性と役割が明記されました
 (「イタリア文化事典」の「協同組合」より)



3. 2017年に合併したACI (イタリア協同組合連盟)

イタリアの国旗と同じく「緑」(マッツィーニ*の考え方を反映した「共和主義的息吹」で 今は消え失せている) 
「赤」(左翼系の) 「白」(カトリック系の)の協同組合のそれぞれの立場や 統一の試みが紹介されています 
(「イタリアの協同組合」第七章 協同組合と政治)
*イタリア統一運動時代の政治家、革命家。カヴ―ル、ガリバルディと並ぶ「イタリア統一の三傑」の一人

2014年現在イタリアには8万以上の協同組合があり うち4.3万がレーガ・コープ(Legacoop) コンフ・コープ(Confcooperative)
AGCI(Associazione Generale Cooperative Italiane)に属しており その合計事業高はGDPの8%に達するといいます

2011年にこの3者によりローマにイタリア協同組合連盟(ACI/Alleanza delle cooperative Italiane)が結成され
 組織の統合は2017年1月になされました
 (「生協総研レポート No.76 イタリアの生協の現状について Ⅱ イタリアの生協の現状について」(2014年11月発行) (財)生協総合研究所発行)

4. 生協 vs 企業

『2008年の金融危機のあと 「最大限に利潤をあげる企業こそが最も理想的な企業だ」という考えそのものを問題にしてゆく必要があり 
協同組合のように「利潤目的の所有構造とは異なる所有構造を備える企業」が 経済危機の影響に対抗する機能を果たしたこと 所得の公正な再配分 
および経済の復調に大きな役割を果たしたことは もっと認知される必要がある』
(「イタリアの協同組合」(緑風出版)序文より)


『イタリアの日刊紙「Corriere della Sera」経済担当記者D.ヴィーコ著『小さきもの 憤る人々(Piccoli, La Pancia del Paese) 」には 
「大銀行の経営者たちが貸し渋りを始めた景気後退時に 小規模信用協同組合銀行の経営者たちは 景気促進をはかる働きをした点で賞賛されるべき」とあります
経済危機の中で 協同組合は生き残った数少ない支柱のひとつだと 
(「イタリアの協同組合」はじめに)

信用 消費(生協のこと) 農業 労働 社会協同組合など 営利ではなく相互扶助目的によって作られたさまざまな協同組合は 自由かつ自発的な加入 組合員による民主的管理
 経済的参加 自治と自立 教育・訓練・情報 協同組合間協同その他を原則としています

営利企業との比較: 出資金を拠出する組合員が 営利会社の株主に替わります
いかなる協同組合にも 最大限の利潤追求を究極的目的としない(してはならない) 利潤は目的ではなく 自らの資本形成を強化するためのもの という違い
* 例: トレント県の過疎の山岳地帯での店舗の半数が 消費協同組合のものであり 営利企業が進出を手控える地域で 人々の生活を支えている
(「イタリアの協同組合」第一章 協同組合企業とは何か、その可能性)


5. 生協 vs スーパーマーケット


各国では

イタリアの最初のスーパーマーケットは 1957年に ミラノにできた「エッセ・ルンガ(Esselunga)」の前身の 
「イタリア・スーパーマーケット」こことの熾烈な競争で 後手に回るも遅れを取り戻し 大規模化により協同組合の本質からそれてしまった
イタリア最大のスーパーマーケット・チェーン「エッセルンガ」経営者 ベルナルド・カプロッティのベストセラー『鎌とカート』の挑発的な内容が興味深いです
(「イタリアの協同組合」第四章 イタリアにおける協同組合)

イタリアのスーパーマーケット・ハイパーマーケット業界のシェアは 2013年で Coopが第1位の18.5% 大手スーパーチェーンのエッセルンガは 第3位の11%
  (「生協総研レポートNo.76 イタリアの生協の現状について」(2014年11月発行)

ヨーロッパ各国では

欧州6か国生協の経営状況(イギリス フィンランド スゥエーデン デンマーク スイス スペイン)については 欧州での売り上げベスト10に生協は入っていませんが
 ベスト50にはミグロ(スイス) コープ・スイス コープ・イタリア コーペラティブ・グループ(CG/イギリス)の 5大生協(連合会)が名を連ねています

欧州の生協は概してシェアが高く 国外展開するのはフィンランドとスイスのみですが 国内市場で高いシェアを持ち 成長の余地がないため 周辺国に進出しているのです

イギリスのコーぺラティブ・グループ(CG)は 2008年にスーパーマーケットチェーンの買収に失敗し 倒産の危機から再建へと 生協内で7割近いシェアを持ちます

スペインのエロスキ(Eroski)生協も 2007年にチェーンの買収に失敗 2013年に倒産の危機
「Contigo(あなたとともに)」と名付けた生鮮強化の新コンセプトで再建

スゥエーデン生協連(KF)は組織再編 2013年に「コープ・スゥエーデン(Coop Sweden)」と再編し 2015年に黒字化...
事業売却など事業構造の変化が進んでいます コープのシェアは20.5%ですが ディスカウントストアが急成長

フィンランドは シェア42%の生協(Sグループ)と 30%のケスコ(Kesko)の二者寡占状態ですが リドル(LiDL)がシェアを上げているとのこと


デンマークは「コープ・デンマーク(coop.dk)」が31%とトップですが 2位の「ダンスク・スーパーマーケット」と激しく拮抗
 (「生協協同組合研究 (2016.8 Vol.487)の特集記事「海外の生協2016 世界的な環境変化のなかでの歩み」)

デンマークのコペンハーゲンのCoopのリポート記事をネットで読むと カタログもなく 野菜は選べず配給所まで取りに行き 月3時間の労働もあり 組合員参加型とのこと!


スイスの生協について


  ← スイスのCOOP

スイスでは8人に1人が生協に加入 Migros(ミグロ)と コープ・スイス(Coop Suisse)の二大生協があります

ミグロは大型・中型店で チェーン展開 コープ・スイスは小型店が多く 地域ごとの生協の名残が残っています
ブランド好感度は ミグロが1位 コープ・スイスが3位

子どもがスーパーごっこで遊べる「ミニミグロ」は 「食育」にも通じており 高齢者対応「おばあちゃんの革命」やお食事会(タボラータ)等もあります
コープ・スイスは最近「昆虫食品」を売り出しました (肉にとって代わるたんぱく源として開発中)

生協の国民生活への貢献の最高度の実例がまさにスイスであり 消費者の圧倒的支持が事業の支えとなっています
プラスの循環が機能していますが 負の循環の引き金にもなりうとのこと
つまり もしコープがフランスやイタリアの安い牛乳を扱うと スイスの酪農はつぶれてしまうので コープも消費者も政府も「少々高くともスイスのものを扱い」 ちゃんと循環しています
好調な経済と高い国防意識があり 支持されているのですね

スイスは人件費もヨーロッパ一高く 価格の高いものでも購入できますが 国境を越えてすぐのフランス等に買いに行く人も多いのです
スイスでは貧困層は少なく 首切りもなく 取引先への公正な契約が義務づけられており 買い叩きもないとのこと
「クオリティ・オブ・ライフ」というルールを敷き 自分も労働者であり同時にサービス利用者でもあるという意識が高く 営業時間の制限も厳しく守ります

70年代の移動販売車から 2000年頃に店舗に変わりました 
今はアルディ(ALDI)や リドル(Lidl)などの ドイツのディスカウントストアに押されています
(「スイスの二大生協の歴史と現況 ミグロとコープ・スイスを比較しつつ」(2017.9.12)@生協総合研究所)

公開研究会「スイスの二大生協の歴史と現況 ミグロとコープ・スイスを比較しつつ@生協総合研究所
」)のリポートは こちら

イギリスでは

イギリスでは ユニコーン(Unicorn Grocery Workers'Co-operative)という イギリスで最も成功している労働者社会協同組合の一つを紹介しており ベジタリアン向けのホールフードを開始し 原則オーガニック 非GMO  地域コミュニティと協同しています

さびれた地域にできましたが ユニコーンが成功してから環境がよくなったそうです 
面白いのは 職員(組合員は職員であり 同時にそれぞれ経営者)は 3~4種類の複数の仕事をかけもちし 日によって違う仕事をし(マルチ・スキリング) 時給もよいが その時給も組合員自身で決め
 賃金は全員同一とのこと
(「イタリアで設立が進むコミュニティコープ訪問報告&海外の生協 2016」(2016.8)生協総合研究所「生活協同組合研究」の特集記事「ユニークな経営で成功を収める イギリスの労働者協同組合」)


後半へ つづく





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