児童労働は中国語では、「童工」と云う様ですが、昨年暮にシンセン市の工場で発覚した童工問題は、中国でも大きな反響を呼んだようです。工場で違法に働いていた72名の子供達は1月2日、バスで故郷四川省涼山イ族自治州に連れ戻されたそうです。この工場で働いていた童工はイ族の子供が殆どだった様です。
1月14日付の人民網(電子版)では、イ族の子供達が戻った故郷の様子、子供達の故郷での生活、子供達が通っていた学校の様子等について報じています。この記事に拠れば、今回シンセン市から連れ戻されたある子供は14歳で、4人兄弟の二番目の事。一番上の姉は16歳で父親と共に、去年6月に広東省へ出稼ぎに出ているそうです。彼女が暮すイ族の村では、イ族の正月(旧暦の11月中旬に行われる。)が終わると多くの子供達は、学校を辞めて出稼ぎに出るそうで、彼女も11月末にシンセン市に出稼ぎに出たものの、運悪く12月下旬には違法労働が発覚して、1月2日には故郷に連れ戻されてしまったそうです。この子供は何故故郷へ連れ戻されたのか分らないと話しているとの事。
この子供の母親は「何故、子供を学校に通わせないのか?」との記者の質問に対しては、「学校に通うにはお金がかかる。女の子供はいくらか漢字を知っていて、少し漢語(普通語)を話せれば、それで良い」「小学校は、確かに無料だが雑費が毎学期100元ないし200元かかる。学校まで山道を毎日1時間半歩いて通う必要がある」「寄宿舎制の小学校に通うとなると寄宿舎費は無料だが、生活費が毎月100元位かかる」「到底4人の子供を学校に通わせる事は出来ない」等と話したとの事です。子供も「学校には行きたくない。授業の内容も分らない」「学校まで通うのにとても遠い」とも話している様です。
また、子供達が通っていた小学校も取材している様ですが、それに拠れば学校は平屋で二つ部屋があるだけの小学校で、一部屋では、1.2.3年生が、もう一間で4.5年生が授業を受けているとの事です。また、この小学校に勤務する先生の話として「子供達の多くは両親と共に出稼ぎに出かけるが、出稼ぎ先では学校に通っていない子供も多い」「学校を中途退学したものの、また学校に復学する子供も多い」「13歳、14歳でも三年生クラスで勉強する子供も多い」「中には20数歳で小学校6年に在籍している子供いる」「出稼ぎに出て、漢語を話せないのは、仕事を探す上で不利だと悟る生徒も居る」等と話しています。
この記事を読むとある程度は、子供達が学校を中途で辞める理由、背景もある程度理解できるのですが、私としては、もっと詳しく村の様子を報じて欲しかったと思います。
例えば、2011年から貧困地区では、昼の無料給食が実施されているはずだが、どうなっているのか、母親が一学期の雑費が100元ないし200元かかると話していますが、この費用は随分高いがどうして、こんなに高いのか?この小学校には先生が何人いるか? 貧困地区の小学校には代用教員(中国語では代課老師)も多いが、この小学校には何人の正規の先生と代課老師がいるか。そして先生方の待遇は?この小学校は所謂「完小」と呼ばれる小学校の様ですが、以前は村の近くに「教学点」があったのかどうか?「学前班」はあるかどうか?等等の疑問や知りたい事は尽きませんが、そのような点は不明で大変残念です。
近年貧困地区、少数民族が住む地域では小中学校を中途で辞める児童生徒が増えており、特に中国西南部では、その数字は10%になるとの報道もあります。(財新網電子版に拠る)
近年子供が学校を中途で辞めるその理由の一つとして農村部では小中学校の統廃合が押し進められ、子供が学校に通う距離、時間が長くなった事も理由に挙げられています。また、統廃合の結果として、地域により寄宿舎制の学校に通う事になり、寄宿生活となると生活費が余計にかかるので家計の負担が増えるので学校に通う事が出来ないと云うような状況も起きている様です。以前には「教学点」と呼ばれる云わば小規模な分校が、ほぼ村毎にあったのが統廃合により、近在には小学校がなくなり通学に大変不便になった様です。
以前このブログでも貴州省の少数民族地区の小学校の毎学期の雑費について触れた事がありますが、一学期100元ないし200元の雑費は大変高いので、何故ここの小学校はこんなに雑費が高いか知りたいところです。貴州省の学校の雑費は、保険料も入れて20元から30元程度でした。(注:中国は小中学校も前期、後期の二学期制です)
この小学校の先生も「子供達の漢語の話す力、聞く力はとても低い」「授業によってはイ族の言葉と漢語を使い授業をする」と話しているようですが、少数民族の子供達にとっては「漢語」は、小学校に入って初めて学ぶ、言ってみれば「外国語」であると云う認識が、学校関係者や教える側にも欠けているようで、大変気になります。