前回の記事の最後に、こんなことを書きました。
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教室では、ひとりひとりの個性と才能に向き合い、それを発展させる手伝いをずっと続けてくるなかで、拡充学習を成功させるための知恵をいろいろと蓄えてきました。
次回は、それについて、書いていこうと思います。
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それでは、今日の工作と算数のレッスンのなかで、どのような点に注意して子どもの才能を育む手伝いをしているのか、具体的に書いていこうと思います。
今日集まった子は2年生のAちゃん、Bちゃん、Cちゃんと、事情があって今回だけこのグループに参加している年長のDくんの4人です。
子どもたちに何がやりたいかたずねると、「ポップアップが作りたい」という話でした。
そこで、簡単なポップアップの作り方を3つ教えました。
こんな風に活動のお手本を見せるとき、
★ 2,3手順でできる易しさ
★ 今している活動の本質的な部分に気づくことができる
★ 自分の想像力で自在に習ったことを応用させていくことができる
★ 子どもたちにとって、すぐにでもやってみたいと思うような魅力的なもので、自分でできそうだという見通しが立つものである
ということを大切にしています。
工作本や実験の本に載っている見本は、子どもがその本質的な部分の気づきにくく応用しずらいものが多いので、本にあるものを教える際も、いったんそうした形に変えて伝えています。
年長のDくんは、器用で完璧主義で、日ごろから幾何学的な形や数の世界の秩序に強い関心を持っている子です。
そうしたDくんの資質は、教室でさまざまな取り組みを続けるうちに、非常に複雑なピタゴラ装置の仕組みを最後まで考え続けるような洗練されたものになってきました。
基本のポップアップの作り方を見たDくんは、「開いたら、5階建ての家がでてくるようにしたい」と言いました。
Dくんは高いお家をていねいに根気よく作っていました。
作り方に余裕があるようだったので、「ポップアップの階段の作り方を習いたい?」とたずねると、大きくうなずきました。
たたむことができる階段は、細い線を同じ幅に切ってから、階段状に折って、ポップアップする家の壁に対して垂直になるように貼ると作れます。
Dくんはこうした新しい技術の習得に熱心で、学んだことを何度も繰り返し活用し、独創的で完成度の高い作品を作りあげます。
それはDくんのすばらしい才能のひとつです。
Dくんがそうした才能を活かすには、身の回りのものや本を見た際に、そこで目にした新しいアイデアを自分のものとして取り入れるにはどうすればいいのか学ぶ必要があります。
そこで、教室にある『工事げんば』というポップアップ絵本で使わているアイデアを取り入れて、ポップアップの家に何か付け加えてはどうかと提案しました。
「何度もおりたたんだ紙を広げていく」というポップアップの作り方が面白かったので、Dくんはエレベーターを作ることにしました。
広げるにつれて、エレベーターに乗った子が上へ上へと移動します。
工事現場の本では乗り物のクレーンに使われていたので、この活かし方はDくんならではのものです。
同じ見本を見せても、それぞれの子どもへの響き方は違います。
小2のAちゃんの場合、大きな大きな階段を作って、基本のお家のぐるりを囲ませていました。
たまたま見学していたお母さんが、「それじゃ、ポップアップにならないわ。開かないでしょ」と注意をしていました。
途中ですが、次回に続きます。