3歳のAちゃん、Bくん、4歳になったばかりのCちゃんのレッスンでの出来事。
1年ほど前からレッスンに参加している3人さん。
教室に通い始めた当初は、おやつを食べたりただうろうろしたりする時間が多かったこの子たちも
いつの間にか、工作やゲームや算数の活動にしっかり関わるようになってきました。
でも、時々、そんな好調子が大きく崩れる時があるんです。
だらだらとやる気がなかったり、いつまでもふざけていたり、お母さんやお父さんんを荒っぽく叩いたり。
そんな時、親御さんの頭には少し前までの「ちゃんと、しっかり」できていた姿が
残っていますから、(ちゃんとできるのに)という思いが先だって、
つい厳しい口調で注意することが増えがちです。
この日は、これまで午前のレッスンだったのが午後のおやつ時に変わったこともあって
3人とも、いつになく落ち着きがない様子でした。
Aちゃんはお友だちとふざけたりちょっかいを出しあったりして、
工作にもゲームにも乗り気でありませんでした。そんなAちゃんに
お母さんが注意すればするほど、Aちゃんのふざけもお友だちとのちょっかいの出しあいもひどくなって
いました。
そこで私はAちゃんのお母さんにこうお願いしました。
「しっかりがんばっている時のAちゃんを見ると、
それが当たり前の基準になってしまいがちですが、Aちゃんはもともと
やんちゃな性質ですし、集団での活動はできだしたばかりの幼い子です。
きちんとできている時は、それは『特別がんばっている時の姿』としてとらえて、
まず『普段のAちゃん……それほどがんばっていない時、リラックスしている時のAちゃん』を基準にして、
『がんばりすぎて、悪い方に針が触れてしまった時のAちゃん』と、
『しっかりしだしたAちゃん』との間に、行きつ戻りつしていい振れ幅を作ってください。」
Aちゃんのお母さんが了解して、ちょっとやりすぎに見えるAちゃんに対して
余裕を持って接しだすと、
Aちゃんはそれまで「やらない」というそぶりを見せていた
積み木を並べ始め、大きな枠を作りました。
それは私が見せた見本より何倍も大きな枠でした。
途中で投げ出さずにどんどん大きな枠を作っていきました。
「Aちゃんっていつもすることがダイナミックですごいなぁ」と感心していると、
今度はやぐらを組み始め、どんどん高く積んでいきました。
Aちゃんの背を超えても、どんどん積んでいき、しまいには
椅子に乗って、作業を続けました。
こうした子どもの本気のがんばりは、がんばることを期待するばかりでは
決して生まれません。
子どもは自分から「がんばりたい」という意欲のスイッチが入った時に力を出し切って、
また普段の自分に戻ったり、頑張りすぎたら、ちょっと後戻りしたりもします。
そうした上がったり下がったりを繰り返しながら、少しずつ、「普段の自分」の基準が
上がっていくんです。
成長していく中でそうした自分の成長のリズムを感じ取って
自分で自分を高めていく力を身に着けてほしいと感じています。
次回に続きます。