前回の記事の同じ見本を見てから、まったく別路線で、犬の散歩迷路を作っていたBちゃん。
ポップアップ絵本にするために、切り込みを入れて、迷路上を犬が移動できるようにしました。
Bちゃんは、いろいろな物事にアンテナを張っていて、あれこれサッとキャッチしたらすばやく意味を察する飲み込みのはやい子です。
一方で、そうした頭の回転の速さや、気持ちの移り変わりに身体がついていけていないところがあって、ひとつひとつ手順を踏んで学んでいったり、手指を使ってじっくり何かを作り込んでいったりするのは苦手です。
教室では、頭や心の動きと身体の動きがバランスよく協調していけるよう見守っていくことがBちゃんの才能を育む手立てだと考えています。
この日の算数レッスンで、「3人で分けるとあまらずに分けられる数」と「4人で分けるとあまらずに分けられる数」に赤と青のチップをおいていく作業をしました。
そうした後で、「3人で分けても4人で分けても1あまる数にどんなものがあるか?」という問題や、
50このお菓子は3人で分けると、いくつあまるのか、数の表を見てすぐに当てられるか」という問題を出しました。
すると、Bちゃんは即座にチップの位置とあまりの数の関係に気づいて、正しい答えを言っていました。
飴玉とかどんぐりのような身の回りにあるようなもので、「3人で分けたらどうなるかな?」とたずねるのなら、たいていの子が、自分の扱っている操作を理解して、あまりがいくつか答えることができます。
下の写真は赤い玉で「3人で分けても4人で分けても1あまる数にどんなものがあるか?」を試しているところで、それなら年長のDくんにもよくわかる作業のようでした。
でも、そうした赤い玉で行っていることが、数の表とどうつながりがあるのかすぐにピンとくる子は、2、3年生でもそれほど多くないのです。
子どものなかには、計算練習などは嫌がるけれど、3の倍数というのは、ある数を3で割ったときの答えと同じになるし、数の表で一定の間隔をあけて並んでいくことや、
その間にある数があまりのある数にあたること、そうして数の表の上で確認したことを数直線で表すとどうなるのか、ということが難なく同時に理解できる子らがいます。
そうした資質は、学校での勉強では気づかれず、基礎的な計算ルールを訓練させられる間に、大の算数嫌いになっているケースも度々見かけます。
Bちゃんは少し前に「九九を覚えられない。九九は嫌い」と言って、算数の学習を嫌がっていました。
コツコツ暗記して学ぶ学習が苦手なのです。
そんな時に、Bちゃんという子をよく理解していて、長所をうまく発揮して算数と関われるように気を配ってあげないと、せっかく数学的なセンスがある子なのに、
算数と聞いただけで心のシャッターを下ろしてしまう癖がつきかねないのです。
学習の面でも、テストで測れるものだけでなく、ひとりひとりの子の個性的な才能に気づいて、それに光を当てる機会を設けることの大事さを感じています。
次回に続きます。